――睡眠姿勢を妨げない寝具というのは、どういったものでしょうか。
山田さん: | 枕以外の寝具についても、寝返りのしやすい睡眠姿勢を優先的に考えましょう。 大事なのが敷布団と掛け布団、そしてパジャマの選び方です。それぞれ素材によっては寝返りを妨げる原因となるので注意が必要です。 |
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――まずは敷布団について伺います。ベッドマットや畳の上で寝ることが多いと思うのですが、ポイントは何でしょうか。
山田さん: | 敷布団で一番大切なことは、重たい腰が沈まないことです。 人間の体の重さの割合は、頭、肩、腰の順に、およそ1:3:4の割合で、一番腰が重くなります。そのためベッドや敷布団がやわらかすぎると、腰が「く」の字に沈み込んでしまいます。頭の沈みと腰の沈みに差が大きく出やすくなるので、首にも腰にも負担がかかりやすくなります。 |
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――敷布団はやわらかすぎてはいけないのですね。
山田さん: | やわらかすぎる素材は、何かを上に足したとしても腰が沈み込むことに変わりはないので、できればやめてください。 逆に少し硬すぎる場合なら、敷布団の下に毛布を足すなどして、腰が反るような硬い感じ、圧迫される感じがないかどうか確認しながら調節も可能です。 畳の上に綿布団1枚くらいの硬さがよいと私は考えています。 さらに、寝返りの打ちやすさもチェックしてください。前回紹介したように、両腕を胸の前でクロスして、両ひざを立てて左右に回転してみてください。腰や肩に力が入らないか。肩と腰が同時に寝返りを打てているか。 寝返りの打ちやすさは枕の高さによっても変わるので、敷布団の調整と枕の調整を一緒に行ってください。 |
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――掛け布団はどうでしょうか。
山田さん: | 掛け布団は重さ、素材、カバーに注目します。 まず、寝返りが打ちやすいように軽いものを選んでください。軽くて暖かい羽毛布団がベストです。 次に素材です。 寒い時期には、毛布を使いたい人も多いと思いますが、毛布は起毛素材なのでパジャマにまとわりついて摩擦抵抗が高まるので、時として寝返りが打ちづらくなります。 そこでおすすめしたいのが、「羽毛の掛け布団の上に毛布を掛ける」方法です。寝返りが打ちやすくなりますし、毛布を体に直接掛けなくても、寝床に入ってしまえば体温で布団の中の空気が暖められるので、十分暖かく感じながら寝ることができます。 |
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――カバーに注目するのは、どういった点ですか。
山田さん: | 正しい睡眠姿勢を指導するときに、私は患者様に「毎日のようにカバーはつけないで」とすすめています。カバーをかけると体にカバーがまとわりついて、寝返りをするときに体が重く感じるからです。 カバーをつけない状態で掛け布団だけだと、体と掛け布団の間に摩擦が起こりにくく、寝返りもスムーズです。 これから布団を買い換えることを考えている人は、ぜひ最近出ている「洗える羽毛布団・掛け布団」を選んでください。カバーをかけなくても、衛生的にいつもきれいな布団をかけてやすむことができます。 |
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――最後はパジャマですね。
山田さん: | パジャマも同じく、滑りのよい素材を選ぶことがポイントです。首まわりにフードが付いているもの、汗を吸うと重たくなる素材、モコモコしたフリースなどは寝返りの妨げにもなります。 また、パジャマはすそをズボンの中に入れて、動きやすい状態にととのえるのがベストです。 |
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――すそをズボンの中に入れるのは、おなかを冷やさないためだけではなくて、寝返りのためにもなるのですね。
山田さん: | パジャマの上着のすそが腰まわりに絡みついてしまうと、非常に寝返りがしにくくなってしまうんです。 また冷えについては、「冬は二重三重に重ね着をして靴下をはいて布団に入る」という話を時々聞きますが、摩擦抵抗という点では好ましくありません。寝返りが打ちづらくなれば、血流が悪くなり体温が下がってしまうためです。 正しい睡眠姿勢をととのえれば、スムーズに寝返りができて自然と体温は保てます。 |
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