感染症の日本史 ⑤/進化するワクチン 〜近代の感染症〜

21/11/19まで

健康ライフ

放送日:2021/07/23

#医療・健康#カラダのハナシ#感染症

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【出演者】
早川:早川智さん(日本大学医学部 教授)

――きょうのテーマは「進化するワクチン」、大正デモクラシーとスペインかぜ、結核です。大正は1912年から1926年までの15年間ということで、短い時代でしたよね。

早川: 江戸が250年間、明治が44年間で、大正が15年間ということで、時代としては短いんですけれど、明治時代の富国強兵からある程度余裕が出てきて自由があった時代らしいですね。
ただ、その短い時代の中に、感染症に関わる出来事が2つありました。

――それは何ですか。

早川: 1つはスペインかぜの大流行、もう1つが結核の対策です。

――では、1つずつ教えていただきたいと思います。まず、スペインかぜの大流行について教えてください。

早川: スペインかぜというのは、インフルエンザのことです。
インフルエンザ自体が日本では江戸時代にも流行し、江戸では夏の1か月で8万人もの死者が出て大混乱になったことがあり、何度か繰り返されていますが、第1次大戦のときに世界中で大流行しました。

第1次大戦は1914年に始まりますが、戦争の初期1915年にインフルエンザの世界的な流行が始まりました。そして大戦末期の17~18年ごろには、ヨーロッパ中に広がりました。そして戦争どころではなくなりまして、戦争が終わったわけです。
第1次大戦において日本は戦場にはなりませんでしたけれど、遠く離れた日本や中国までインフルエンザが広がっております。

――インフルエンザの別名が「スペインかぜ」ということですが、スペインで始まったから「スペインかぜ」というわけではないのですね。

早川: これは誤解をされているんですけれど、インフルエンザの流行が始まったのはスペインではなくて、アメリカの軍隊だったといわれております。しかも第1次大戦に参戦したアメリカの軍隊から広がったことは、機密事項とされていました。
それが中立国であるスペインまで広がったときに世界で流行する悪性の感冒であることが分かりまして、「スペインかぜ」という名前がつきました。「インフルエンザ」となったのは戦後になってからです。

――インフルエンザが流行して、どのような事態が起こったのでしょうか。

早川: そのとき世界では、患者さんが6億人、死者は2000万人以上に達したとされています。日本でも大変大きな被害が出ました。大正7年、8年、9年の死亡原因の第1位がインフルエンザによる肺炎でした。

――当時、治療や予防はどういう状況だったのですか。

早川: そのころはまだインフルエンザウイルスが特定されておらず、薬もありませんので、隔離や水分補給、可能な場合は酸素吸入などです。

――インフルエンザのワクチンはいつできたのでしょうか。

早川: インフルエンザワクチンができたのは第2次大戦後になってからなんですが、有効な薬ができたのは21世紀近くになってからです。それまでは、先ほど申し上げましたマスクや隔離など、ある程度社会的な防衛でコントロールをしておりました。

――では、大正時代のもう1つの出来事、結核の対策について教えてください。

早川: 結核は、日本で社会問題になったのは明治以降です。昔は遺伝が原因で感染するといわれていました。
当時、農村から都市の工場に出稼ぎに来る若い女性などが集団感染を起こすとか、学校で感染が広がっていく、こういったことが多く起きてまいりました。
結核についてはなかなか有効な治療がなかったんですけど、大正時代になってようやく対策が取れるようになりました。

――どんな対策がなされたのですか。

早川: 大正時代にBCGのようなワクチンが導入されたことで結核が予防できるようになりました。これによってコントロールが可能になってまいりました。それから、結核は栄養状態が悪いとかかりやすくなりますので、栄養状態がよくなったことが患者さんの減少に大きく関わっていると思います。

――いろいろお聞きしてきましたけれど、現在の新型コロナウイルスの対策としても参考にできることが多い気がしますよね。

早川: 感染症すべてにおきまして、やはり清潔な社会、個人と社会の衛生、それから十分な栄養と休養で体の抵抗力を高めることが大変大事だと思います。もしかかってしまった場合は、適切な抗菌薬、抗ウイルス薬などの治療を受けることも大事です。
ただそれだけでは十分ではありませんので、予防的にワクチンを積極的に打っていただくことが大事だと思っております。インフルエンザのワクチンにつきましては毎年流行株を特定して行うようになっておりますし、ほかにも肺炎球菌やヒトパピローマウイルス、そして現在の新型コロナウイルスのワクチンなどワクチンの進化は目覚ましいものがあります。
現在はさまざまな情報が氾濫しておりますけれど、公的機関や病院で提供している正しい情報をもとに行動していただきたいと考えております。

■マイあさ! 健康ライフ「日本人が乗り越えてきた感染症から学ぶ」シリーズ おわり


【放送】
2021/07/23 マイあさ! 健康ライフ「日本人が乗り越えてきた感染症から学ぶ ⑤」 早川智さん(日本大学医学部 教授)

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