安定的な皇位継承の在り方をどう考えるか?

24/05/20まで

けさの“聞きたい”

放送日:2024/05/13

#インタビュー

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安定的な皇位継承の在り方をめぐり、衆参両院の議長と各党の代表者らによる協議が始まります。「安定的な皇位継承の在り方」をどう考えるのか? 今後の議論のポイントは何か? 歴史学者で名古屋大学大学院准教授の河西秀哉さんに聞きました。(聞き手・野村正育キャスター)

【出演者】
河西:河西秀哉さん(名古屋大学大学院准教授)

国民の多くが女性天皇に賛成

――NHKが5年前に行った世論調査で「安定的な皇位継承のため皇室制度を改める必要があるか?」を尋ねたところ、「改める必要がある」という人は54%、「改める必要はない」という人は31%でした。

Q.女性が天皇になるのを認めることに賛成か?

5年前の令和元年(2019年)にNHKが行った「皇室に関する意識調査」

また、「女性が天皇になるのを認めることに賛成か?」については、74%が「賛成」、「反対」は12%でした。
河西さんはこうした世論をどのように見ていますか?

河西:
5年前のNHKの調査では、「改める必要がある」とか「女性天皇を認めることに賛成」がかなり高い数値を示していたんですよね。

また最近も、即位5年を前に共同通信が行った世論調査の結果が4月に伝えられたんですけど、それによると、皇位の継承の安定性について「危機感を感じる」と答えた人は「ある程度」を含めると72%で、5年前のNHKの調査よりかなり高いんですね。
女性天皇を認めることについても合計90%の人が「賛成」で、また女性皇族の子どもが天皇となる、いわゆる女系天皇についても合計84%の人が賛同していて、国民の多くが女性天皇や女系天皇を望むという結果が出ています。
こうした声は5年前のNHKの世論調査と比べてもずいぶん上がっていて、それだけ多くの人にとってこの問題が重要だということを示しています。

その一方、共同通信の調査で、旧宮家の男性の子孫を皇族にして、男系男子の天皇を維持することについては合計74%が反対しています。つまり、旧皇族の男系男子を養子に迎えるという案には「反対」が多くなっているんです。

ところが、これから始まる政治の議論では、女性天皇とか女系天皇の誕生につながることがないようにまとめられた最近の有識者会議の報告案をもとに協議が行われます。
つまり世論調査の結果からはかけ離れていて、国民の大多数が女性天皇とか女系天皇を認める考えなのに、国会がこれから本格化させる協議ではそうした世論を無視して進めていこうとしている。女性天皇の選択肢を外して議論していくことになるので、はたしてそれでいいのかなっていうのが正直なところです。実はこの点は国民にもあまり周知されていないので、何か今から女性天皇や女系天皇の議論が始まるかのように思っている人たちも多いんじゃないでしょうか。

先送りされてきた国会の議論

――安定的な皇位継承の在り方をめぐっては、政府が2022年1月に有識者会議の報告書を国会に提出しました。それから2年以上が経って、今週にも協議が始まる見通しですけれども、この動きについてはいかがですか?

河西:
まず「やっとか‥」というのが個人的な印象ですね。
これまで政府の有識者会議でも今後の皇室の在り方が検討されてきましたが、国会でなかなか議論が進みませんでした。それで2023年12月に額賀衆議院議長が各党に議論を促して、各党で議論し意見が出そろったことで、長く放置されてきた日本の重要な問題の協議がやっと始まることになったということなんです。

過去にも小泉内閣が19年前の2005年に女性天皇や女系天皇を容認する有識者会議の報告書をまとめたんですけれども、結局その時にも悠仁親王が生まれたということもあって20年近く議論の進展がないままこの問題が先送りされてきたので、今回どういう決断ができるのか? ということがポイントだと思います。

現在、皇室は天皇皇后を含めて17人で、このうち未婚の女性皇族は5人いるんですけど、皇室典範は女性皇族は婚姻によって皇室を離れると定めているんですね。
5人の未婚の女性皇族はもういつ結婚されてもおかしくない年齢になっているので、現行の規定だと結婚して皇族を離れることになります。そうすると皇族、皇室にはいろんな公務がありますが、短期的にはその公務を担う人が必要になってきますし、長期的にはご本人たちが皇室に残るのか残らないのか? 今後をどう生きるのか? という心構えや今後の人生設計にも関わってきます。それゆえにそもそも長い間皇族の減少が課題となる中で「安定的な皇位の継承をどうするのか?」ということは待ったなしの喫緊の課題で、重要な問題であると思うんですね。

――それだけ期限が迫ってきている大きな問題なのに、なぜこれまで議論が進まずに棚上げされてきたのでしょうか?

河西:
この件は、平成の天皇の退位が実現した7年前(2017年)に皇室典範特例法が成立した際の国会の付帯決議でも、安定的な皇位の継承とか女性宮家の創設については速やかな検討を求めていたんですね。ところが代替わりがあって行事の忙しさなどからなかなか議論が進まなかったんですね。

それでも代替わりが終わったあと、政府の有識者会議が一応議論を始めて、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持して皇室に残る案とか、旧皇族の男系男子を養子にする案などが併記されて報告されました。ところが、皇位継承については基本的には棚上げとなっています。それは多分、有識者会議のほうも女性天皇とか女系天皇というとさまざま国論を二分するし、どちらかというと少数派のほうが声が大きいということもあって、そちらの反発を避けて基本的に玉虫色の案というかあまり議論を進めないような形の案を出したということなんだと思います。

当時の衆参両院議長もいろいろ各党で議論を進めるように要請していたんですけど議論が進まなかった背景には、おそらく議論が先延ばしされて時間がたてば女性皇族がどんどん減っていくので、「そもそも女性天皇や女系天皇の選択肢がなくなって、もう男系しかいないよね」という状況になり、いわゆる保守派と呼ばれる人たちを支持する勢力の意向にそえるという思いがあったんだと思います。
それから「政治とカネ」の問題などが起きて、皇位継承や天皇というような大きな問題を議論することを政治家が避けたんじゃないか。それが棚上げされた理由なんじゃないかなと思います。

世論と乖離した議論への危惧

――衆参両院の議長と各党の代表者らによる協議が始まろうとしていますが、どういう選択肢が用意されているんでしょうか?

河西:
はい。おそらく政府が2022年1月に国会に提出した有識者会議の報告書が原案となって議論されるわけですけれども、皇族数を確保する方策として、1つが「いま残っている女性皇族が結婚後も皇室に残る案」と、もう1つが「戦後皇室から離れていった旧皇族の男系男子を養子に迎える案」。この2つが議論されると思います。

ここで大きなポイントは、女性皇族が結婚後も皇室に残る場合も、旧皇族の男系男子を養子に迎える場合も、女性皇族が天皇になるということはないということ。つまり今回国会で議論される2つの案のどちらを採用するにしても、たとえば愛子内親王が天皇になることはないということなんです。
だから最初に述べたように女性天皇や女系天皇について世論がかなり高い割合で賛成しているにもかかわらず、これから国会で議論される2案は世論と大きく乖離(かいり)しているので、この議論の方向性でよいのかということがポイントになると思うんですね。

――そうすると、今後の協議の注目点はどういう点になりますか?

河西:
安定的な皇位の継承の在り方というのは、これまでも小泉内閣や野田内閣の時に設置された有識者会議で話しあわれてきて、小泉内閣の時には女性天皇や女系天皇が、それから野田内閣の時には女性宮家の創設が提言されたのに、結局のところ国会では繰り返し議論が先送りされてきたという経緯があります。

これから本格化する協議で原案となる直近の有識者会議の報告書は、かつての有識者会議がまとめた報告書とはまるで異なる内容です。特に男系男子の皇族や旧皇族を養子にすることを含めて方向性が大きく異なる案が示されていて、国会ではこれを議論することになるわけですね。

その国会ではよく「静かな環境の中で検討が行われるように配慮する必要がある」というような言葉が一部から繰り返し主張されるんですけど、そういう静かな環境ということは静観したままっていうことになりますので、国民の意見を吸い上げないままでは世論が望む方向の結論にはなりえないのではないかと危惧していますし、そうならないようにすることが重要なんだと思います。

近年の国政選挙を見ていると、各党が公約の中に皇位継承問題を重要な政策課題として位置付けています。選挙になると生活に身近な問題がさまざまあってそこがクローズアップされるんですけれども、皇位継承の問題についても我々一人一人の有権者が各党の考えや姿勢をちゃんと見極める必要があると思うんですね。
実際よく見ていると、リベラルだと思うような党がそうじゃないことを主張していたりすることもあるので、選挙で1票を投じることができる私たちは、投票行動で国会議員に緊張感を伝えることが重要なんだろうなと思います。

――河西さん、どうもありがとうございました。

多様な意見をふまえた議論を

河西:(追記)
放送時間がなくなって最後に言えませんでしたが、「象徴」としての天皇の地位は「国民の総意に基づく」と憲法に書かれているのですから、国会はいろんな意見や世論を踏まえて議論を進めていくことこそが、あるべき代議制の在り方なのではないでしょうか。


【放送】
2024/05/13 「マイあさ!」

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