能登に駆けつけた緊急消防援助隊 その役割と今後の課題

けさの“聞きたい”

放送日:2024/04/12

#インタビュー#能登半島地震#防災・減災

1月1日の夕方に発生し、最大震度7を記録した能登半島地震は、迅速な災害対応が非常に難しいケースとなりました。
寒さが厳しい被災地で急がれた今回の救助活動では、自衛隊・警察・消防などの関係者が石川県の外から能登半島に駆けつけて大きな力を発揮しました。このうちのひとつ、総務省消防庁が出動させた消防組織の部隊「緊急消防援助隊」の役割と課題について、消防庁の広域応援室長の土屋直毅さんに聞きました。(聞き手・田中逸人キャスター)

【出演者】
土屋:土屋直毅さん(総務省消防庁 国民保護・防災部 広域応援室長)

「緊急消防援助隊」とは

――土屋さんは、昨日(4月11日)まで、石川県の能登半島の被災地に行っていたそうですね?

土屋直毅さん

土屋:
輪島市と珠洲市に行っておりました。発災から3か月が過ぎましたが、やはり地震の爪痕(つめあと)は色濃く残っていました。
その一方、給食の再開など地域活動を再開する動きもあり、その前向きな取り組みを拝見して、大変心強く感じました。
消防関係者とも話をしましたが、地震発生当初は救助の要請がひっきりなしにあり、必死に対応したということでした。そうした中、「人員が足りない状況で各地から応援に来てもらった緊急消防援助隊が大変心強かった」という声をいただき、こういった大きな災害が起こった時の消防への期待や、その重要性を改めて認識したところです。

――その「緊急消防援助隊」は能登半島地震でも活躍しましたが、初めて聞くという方もいらっしゃると思います。改めてどんな部隊なのか教えてください。

土屋:
はい。災害発生から72時間を超えると生存率が急激に下がると一般的に言われています。こういった災害発生時には早く救助活動をすることが重要なわけですけれども、大きな災害では地元の消防だけではなかなか力が十分でないという場合があります。そんな時に全国の消防本部から応援に駆けつけてくれる消防士の方々がいらっしゃいます。

倒壊した家屋で捜索・救助活動を行う緊急消防援助隊(輪島市)

その応援部隊が緊急消防援助隊で、全国で25,000人以上の規模で登録していただいています。緊急消防援助隊の隊員の皆さんは日頃はそれぞれ地元で消防士として働いていますけれども、いざという時には消防庁の求めに応じてすぐに駆けつける準備をしてくれています。
今回の能登半島地震の例では、発災が元日夕方でしたが、その日の深夜から2日の朝にかけて、北陸・東海・関西の10を超える府県から約2,000人の隊員が石川県まで駆けつけてくれました。

史上初の「要請前出動」

――地震が起きたのが元日の夕方で、各自治体から速やかに出動するのは大変だったと思います。また今回は道路があちこちで寸断されていて、現場に到着するのにも苦労したと聞きます。実際どうだったのでしょうか?

土屋:
まず、速やかな出動についてですけれども、今回は消防庁としてすばやく出動要請をかけました。
能登半島地震は最大震度7、それに加えて東日本大震災以来の「大津波警報」が発令されました。たいへん大きな被害が予想されましたので、地震の発生から20分後の午後4時半には消防庁として緊急消防援助隊の出動を決め、各自治体に要請しました。通常は被災地から応援要請をいただき、それに応える形で緊急消防援助隊を出すのが通例ですが、今回は石川県からの要請を待たずに出動させました。この「要請前出動」は史上初めてのことでした。要員が手薄な元日、それも寒さが厳しい時期に起きた災害であり、対応が後手に回ってしまうことを心配して急いだ判断でした。

埼玉県からC-2輸送機に載せて被災地に派遣される消防車(航空自衛隊入間基地)

海上保安庁の船に乗り海路で向かう緊急消防援助隊(金沢港)

そして、現場への到着についてですが、2,000人規模の応援部隊が2日朝には石川県に集結していただきました。
ただ、輪島市や珠洲市に向かう道路は各地で寸断されていたために、一部の道しか通れませんでした。そこで、陸路のほかにも、自衛隊や海上保安庁の皆さんの協力をいただいて、輸送機や船なども使って空と海から災害現場に向かいました。また、陸路では大型車両は通行できなくても普通車ならたどりつけるという地域には、救急車などの普通車で隊員や資材・機材を載せて被災地に向かいました。

各地の消防本部から駆けつけた消防車両(金沢市)

このように出来るかぎりの手段で被災地に向かい、72時間を迎える1月4日までに約1,800人の隊員が輪島市や珠洲市など能登地方の各被災地に入って災害対応に当たってくれました。

東日本大震災に次ぐ応援規模

――今回の能登半島地震で、この緊急消防援助隊は具体的にどんな活動を行ったんでしょう?

土屋:
被災地で求められるさまざまな活動に従事しましたが、主なものをご紹介しますと、まずはやはり倒壊した家屋からの救助や捜索活動です。

雪が残る中で、捜索・救助活動を行う緊急消防援助隊(輪島市)

余震が続いて危険と隣り合わせでしたけれども、救助を待つ方を1人でも多く助けたいという思いで懸命に活動していただきました。

緊急消防援助隊の救急隊が、相次ぐ救急搬送をサポートした(珠洲市総合病院)

また、けがや体調を崩した方の救急搬送も行いました。寒い時期だったため、避難所で体調不良を訴える方などもおられ、救急要請はふだんに比べて相当多くなっていたそうです。こうした状況で相次いだ救急要請にも緊急消防援助隊がサポートして対応しました。

孤立集落が多数発生し、消防防災ヘリコプターも住民救助や物資搬送を担った

また孤立集落も発生していたので、消防防災ヘリコプターを最大限活用して孤立集落から住民を救助したほか、孤立集落への物資搬送も行いました。
さらに今回の災害で特有の活動だったのが、病院や高齢者施設から患者や医療関係者を搬送したことです。被災地で停電や断水が広範囲で起きていたので、ライフラインが安定していた金沢市などの病院や施設へ患者さんらを移送する必要が生じました。この搬送を緊急消防援助隊が多く担わせていただきました。

このような被災地で求められるさまざまな活動に地元の消防本部や消防団の方々と協力しながら2月21日まで52日間にわたって取り組みました。この間、石川県内の自治体から駆けつけた応援隊とともに約300人を救助し、約1,600人を救急搬送しました。この52日間で、延べ59,000人の方々に活動していただきましたが、これは期間・人数ともに東日本大震災に次いで2番目に大きな応援規模となりました。各地から駆けつけた隊員の皆さまには本当に感謝をしているところです。

52日間の活動の教訓と課題

――52日間にわたる活動を終えて、今回の緊急消防援助隊について消防庁ではどう総括していますか?

土屋:
発災後の初動段階で緊急消防援助隊をすばやく出動させることについては、十分な規模を出せたことと合わせて、かなりできたのではないかというふうに思っております。
ただその一方、今回のように道路事情が悪い場合に、どうやってすばやく被災地に到着するか。ここは教訓だと思っています。

道路が寸断されて、目的地までたどり着くのに苦労したケースも少なくなかった

隊員の方からも「救助を待つ人がいるのに目的地になかなかたどり着けないのは非常にもどかしかった」という声も聞かれました。そうした声を受け、例えば車両を小型化することで被災地に到着するための機動性をより高めていくとか、空や海から向かうことも考えられますので、現地に入るのが困難な場合に備えた運用方法を考えていきたいと思っています。

隊員たちは、寒さが厳しい夜間、テントで寝泊まりした

それからもう1つ、隊員の環境改善の面についても考える必要があろうかと思います。隊員の皆さん、夜は外にテントを張って寝泊まりしていただきました。寒さに加えて断水も起きている厳しい状況でしたので、救助活動に集中できるように災害現場で活動する隊員の皆さんの環境改善にも取り組めないかと考えています。

――このところ日本各地にさまざまな災害が頻発しています。そして予想されている首都直下地震や南海トラフ巨大地震などの大災害に備えるためにも、国や私たち自身はどう取り組んでいく必要があるのでしょうか?

土屋:
はい。大きな災害はいつどこで起こるかもわかりません。大規模災害が起きればすぐに広域での応援体制が組めるように、消防庁としては緊急消防援助隊の充実強化に引き続き努めていきたいと思っています。車両、資材・機材といった「ハード面」、そして訓練を通じて機動性を高める「ソフト面」、この両面から取り組んでいければなと考えています。

また合わせて、お一人お一人が防災意識を持っていただくこと。これがやはり重要です。
例えば家具の地震対策は大丈夫か? 備蓄はあるのか? 災害が起きた時にいつどこにどのように避難するのか? こういった日頃からの備えをぜひこの機会にご確認いただければと思います。

――そうした備えに関して、消防庁で役に立つウェブサイトを整備されているそうですね?

防災・危機管理eカレッジ

土屋:
はい。総務省消防庁でも「防災・危機管理eカレッジ」というホームページを作って、「子ども向け」「一般の方向け」「市町村長の方向け」それぞれのページで分かりやすくご紹介していますので、ぜひ参考にご覧ください。

詳しくはこちら(※NHKサイトを離れます)

番組リスナーの声

――番組をお聴きの方からいただいたメッセージをご紹介します。

福島県 菜の花咲いたさん
「緊急消防援助隊」を初めて聞きました。被災した地元の消防隊では対応できない状況下、被災していない地域からの援助は重要で必要だと思います。これからもこの緊急消防援助隊の体制を維持して減災につなげてほしいです。東日本大震災の時につくづく感じました。

――土屋さん、どうお聞きになりましたか?

土屋:
はい。東日本大震災の時にも全国各地から出動していただきました。やはりこういった大災害の時に1人でも多くの人を助けるために、皆さん力を惜しまずに活動してくれています。そうした緊急消防支援隊の役割を後押しできればというふうに思っています。

――総務省消防庁の広域応援室長、土屋直毅さんに聞きました。どうもありがとうございました。


【放送】
2024/04/12 「マイあさ!」

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