「だいじょうぶ? あなたの股関節」① ~股関節の病気 どんなものが?~

24/06/17まで

健康ライフ

放送日:2024/05/20

#医療・健康#カラダのハナシ

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24/06/17まで

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【出演者】
杉山:杉山肇さん(神奈川リハビリテーション病院 病院長)
聞き手:星川幸 キャスター

股関節とは? 変形性股関節症とは?

――そもそも「股関節」とは私たちの体にとって、どんな働きをするところなんでしょうか。

杉山:
「股関節」というのはですね、両足の付け根の部分にあって、骨盤と大腿骨(だいたいこつ)をつないでいる、体で最も大きな関節なんです。股関節は重い上半身を支える役割を持っていますし、足を動かす要となる大切な関節です。すなわち、体を屈曲させる、足を前後に動かす・左右に広げる動作や、膝や足首を曲げる、など腰から足への動作をスムーズにする役割を持っていて、歩いたり、座ったり、腰をかがめたり、体をひねったりする上で非常に重要で、生活のあらゆる動作に関係しているわけです。

――日常生活を送る上でとても大切な関節、ということですね。では、その股関節に関わる病気、どういったものがありますか。

杉山:
足の付け根にある股関節の痛みに悩む人は、中高年の女性を中心にたくさんいらっしゃいます。原因はさまざまですが、その大半は「変形性股関節症」と考えられ、国内で400~500万人の患者さんがいると推計されています。

――変形性股関節症、多くの方が悩まれているんですね。

杉山:
そうですね。変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減り、最後には骨そのものが変形してしまう、進行性の病気です。
症状として最も多いのは、足の付け根の痛みや違和感ですが、股関節の変形が強くなると左右の足の長さに差が生じたり、立つ・座る・歩くといった基本動作が困難になり、日常生活に支障が出てきます。

――変形性股関節症が進行すると、どうなってしまうんでしょうか。

杉山:
最初は、単なる違和感だけとか、歩き始めにほんの少し痛む、といった感じの症状ですが、次第に痛みを感じる頻度が多くなり、痛みも強く、痛む時間も長くなってきます。
さらに、治療をしないまま悪化させると、安静時でも痛みが軽減されないような場合があります。
末期になると「関節軟骨」がほとんどなくなり、骨と骨が直接ぶつかるようになり、歩行が困難になるほど激しい痛みを感じるようになります。

大腿骨頭壊死症とは?

――そのほかの股関節の病気は、どんなものがありますか。

杉山:
そうですね、「大腿骨頭壊死(だいたいこっとうえし)症」というのがあります。

――それは大腿骨にも関係する病気なんでしょうか。

杉山:
そうです。大腿骨とは体で一番長い骨で、股関節と膝関節の間にある太い骨です。その先端にある「大腿骨頭」の血流が途絶えて壊死して、痛みが現れた状態を大腿骨頭壊死症といいます。

――どんな症状が起こるんでしょうか。

杉山:
長い時間かかって進行する変形性股関節症と違って、比較的急に生ずる股関節部の痛みのほか、腰痛や膝関節痛、太もも、お尻などに痛みが現れてきます。初期の痛みは、安静によって2~3週間で軽減することもありますが、進行するに従って痛みが再び現れ、痛みが強くなっていきます。
大腿骨や股関節の変形が進むと、歩行にも支障を来すようになり、最終的には変形性股関節症の状態になってしまいます。

――どんな原因があるんでしょうか。

杉山:
骨折や脱臼などの外傷や、ダイビングなどで潜水したときに水圧の急激な変化で気泡が血管内に詰まって、壊死につながることがあります。
しかし、多くは原因がはっきりしておらず、「特発性(とくはつせい)大腿骨頭壊死症」と呼ばれ、アルコールの飲み過ぎやステロイドの使用に関連して起こることが多い、とされています。この特発性大腿骨頭壊死症は、国の難病指定を受けています。

FAIとは?

――そのほかに、股関節の病気はどんなものがありますか。

杉山:
「FAI(エフエーアイ)」といってですね、股関節の形状に軽微な異常があり、股関節の動きに伴って骨盤側の骨と大腿骨の骨の一部がぶつかり、そのために痛みが起きる病気があります。

――FAIですか。あまり聞き慣れない病気ですね。

杉山:
最近注目されているもので、「スポーツ障害」として扱われることが多く、病状が進んだ場合には手術などの治療が必要となります。
進行すると、大腿骨頭壊死症と同様に、変形性股関節症を発症します。

気をつけたほうがよい股関節の病気、ほかには?

――ほかに、気をつけておいたほうがいい股関節の病気はありますか。

杉山:
そうですね、激しい転倒などにより股関節の一部にひびが入って、痛みが起こったりすることもありますが、骨粗しょう症がひどい場合には大腿骨のけい部、大腿骨頭で骨折が起こることがあります。高齢者にはこのタイプの骨折が多いので、要注意です。
また、関節リウマチで股関節が変形する場合や、血液を介して股関節に細菌が入り、関節炎を発症することもあります。

――股関節は、わたしたちが生活する上で大切な関節、ということが分かりました。次回からは、股関節痛の原因として最も多い変形性股関節症について、詳しくうかがっていきます。
最後に、今回のポイントをお願いします。

杉山:
生活のあらゆる動作に関わる股関節。痛みに悩む方は、早期に整形外科を受診しましょう。


【放送】
2024/05/20 「マイあさ!」

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24/06/17まで

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