「認知症とともに生きる」⑤ ~家族の認知症を受け止める~

24/06/14まで

健康ライフ

放送日:2024/05/17

#医療・健康#カラダのハナシ

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24/06/14まで

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【出演者】
新里:新里(にいざと)和弘さん(東京都立松沢病院 精神科 医長)
聞き手:田中孝宜 キャスター

家族が認知症かも、と気付いたら

――東京都立松沢病院精神科医長で、認知症の診療がご専門の新里和弘さんにうかがいます。
高齢の親や家族が認知症かも、と気付いたときにはどうすればいいですか。

新里:
まずは認知症であるかどうか、一度、やんわり専門医の受診を勧めてみてはいかがでしょうか。この場合、無理やり、というのは禁物です。
かかりつけの先生が「認知症サポート医」であることもあります。認知症サポート医とは、認知症について研修を受けた先生です。都道府県のホームページに名前が載っていると思います。

――どうしても受診してもらえないときは、どうすればいいですか。

新里:
そうですね、受診が難しい場合には、お近くの「地域包括支援センター」に相談するのがよいのではないでしょうか。
地域包括支援センターとは、健康、医療、介護、福祉といった面から高齢者の暮らしを支えてくれる、市区町村が設置する相談窓口です。認知症の方に必要な情報を提供してくれたり、介護認定のためのスケジュールを立ててくれます。
また、本人が受診や認知症の検査を拒否する場合には、「往診で診察をしてくれる先生を探す」、などの選択肢もあります。

――本人抜きで、家族だけで病院に相談に行くことは可能でしょうか。

新里:
ご本人が初診の場合はご本人のカルテが作れませんから、介護保険の意見書が書けず、申請もできなくなってしまいます。便宜的に、ご家族のカルテを作ってご本人の状態を聞く、といった対応をする場合には、健康保険は適用されず、自費扱いとなってしまいます。
もしも、受診を考えている病院に認知症に関する公開講座や家族教室、認知症カフェなどがあるようでしたら、それにまずご本人と一緒に参加して、受診に備えるという方法があると思います。

家族が診断されたあとに大切なことは

――そして、家族が認知症と診断されたあとに大切なことは何でしょうか。

新里:
高齢で起こる認知症は、病気というよりも老化、自然な現象で、自分もいつか通るかもしれない道ですので、「自分がされて嫌なことはしない」ということになると思います。ついつい不安や焦りをご本人にぶつけてしまうこともあるかもしれませんが、叱責や非難は逆効果です。言われた本人は、内容は理解が難しくて、そのときの怖さや嫌な感じだけが残ってしまいます。
特に大事なことは「自分だけで抱え込まない」ということです。
“借りる手は多いほうが楽”という言葉があるんですけれども、借りる手の代表選手が「介護保険」です。介護認定を受けて、介護サービスをスタートすることが最も重要と思います。

――介護サービス、利用していない人にとっては分からないことも多いと思います。具体的にどんなことができるんですか。

新里:
「要支援」や「要介護」と認定されれば、所得によって1割から3割の自己負担で介護サービスを受けることができます。
手すりをつけるなど「住まいのハード面での改修」、ヘルパーさんによる「家事援助」、自宅から施設に通って介護を受ける「デイサービス」や、施設に短期間宿泊して介護を受ける「ショートステイ」などが利用できるようになります。
支援や介護を受ける場合には「ケアマネージャー」さんとの話し合いの中で、具体的なサービスを組み立てていきます。
家族の介護負担を軽減するためにも、上手に活用してほしいですね。

――介護サービスを利用したいのに、本人がデイサービスを拒否したりするケースがある、というふうにも聞きますよね。

新里:
そうなんですよね。要支援・要介護の認定がされたのに、デイサービスを拒否したり、家に人を入れるのに抵抗があってヘルパーさんを拒否したりする方、実は少なくありません。
嫌がるのに、強引にサービスを開始したとしてもいいことはありませんので、本人が気に入るデイサービスがないかどうか「ケアマネージャーさんと相談」したり、あとは「タイミングを待つ」ということも重要です。

ひとりで抱え込まずに相談を

――ただ、「介護疲れ」という言葉もよく聞きますよね。

新里:
ご家族が主体となって介護しておられるときに、最も大切なことは「ご家族自身の体調管理」です。介護する人の休息、これは「レスパイトケア」と呼ばれますけれども、とても大切です。
私がやらないと、と頑張り過ぎないこと。まずはショートステイをうまく使うことだと思います。
介護している人の心と体に余裕があることがいい対応につながり、ひいてはご本人の認知症の進行を遅らせる、ということにもつながります。
認知症の始まりの頃と、ある程度進んでからでは少し対応が異なってくるところもあります。その時々のベストを一緒に考える、ということは、医療者や介護サービス従事者の役割として重要だと思います。ぜひ、ひとりで抱え込まずに相談をしてください。

――では、最後にきょうのポイントをお願いします。

新里:
認知症の介護は長丁場、息抜きも必要です。介護サービスを上手に利用。

――今回は5回にわたって、認知症とともに生きることについて教えていただきました。
新里さん、全体を通して、改めて一番大事なことは何でしょうか。

新里:
そうですね、私は有吉佐和子さんの『恍惚の人』という本の中の、「病み抜ける」という言葉が好きなんですね。
認知症は、ご本人やご家族にとってもちろん大変なことですけれども、嵐のような日々が過ぎ去って、お互いにホッとできるような、そんな時期やときが必ず来ると思うんですね。ですから、「病み抜ける」、病をうまく抜けて、そのような日を目指してほしいな、と思っています。

――今はつらくても、突き抜けて、平穏な日々が待っているよ、と。それを信じて、日々を送ってください、ということですかねえ。

新里:
はい。


【放送】
2024/05/17 「マイあさ!」

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24/06/14まで

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