「認知症とともに生きる」④ ~認知症とともに外に出る~

24/06/13まで

健康ライフ

放送日:2024/05/16

#医療・健康#カラダのハナシ

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24/06/13まで

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【出演者】
新里:新里(にいざと)和弘さん(東京都立松沢病院 精神科 医長)
聞き手:田中孝宜 キャスター

認知症を進めないために、外へ出よう

――東京都立松沢病院精神科医長で、認知症の診療がご専門の新里和弘さんにうかがいます。
認知症はなかなか人に言いづらかったり、人づきあいをやめて家にこもってしまいそうなんですけれども、外に出ることが重要なんですか。

新里:
まず、家にこもってテレビの前のソファーに一日中座っている、ということは一番認知症を進めてしまうということを、頭にとどめてください。2019年にWHO・世界保健機関から「認知症リスク低減のためのガイドライン」が出ましたが、身体活動をあげるということはとても大切とされています。そのためにも、外に出てもらいたいと思います。

――身体活動をあげる、具体的にはどのようなことですか。

新里:
まずは「散歩」でよいと思います。体の病気がなければ、少なくとも3,000歩、できれば6,000歩以上歩いてほしいと思います。
散歩の合間にスクワットをしたり、かかと上げをしたりと「軽い筋トレ」を挟むと、筋肉がバランスよく鍛えられます。
筋肉の材料である「たんぱく質を摂取して、ビタミン、ミネラルを意識した食生活」も大切です。

――気持ちの面でも、外に出ることは重要ですよね。

新里:
もちろんです。認知症と診断されたからといって早急に仕事も趣味もやめてしまうなど、社会との接点を断ってしまうことは逆効果です。周囲の人に認知症のことを打ち明けて、外に居場所を見つけることが重要と思います。

――周りの人に打ち明けることで、助けてもらえそうですよね。

新里:
そうですね。
認知症はゆっくり進みますので、いろんなことを考える時間は十分に残っています。
いくつか大切な決定がありますが、「私はどこで誰と住みたいか」「口から食べられなくなったときにどうするか」は特に重要な決定と考えています。どこで誰と住みたいか、口から食べられなくなったときにどうするか、この2つは時々思い出して、そのつどご自分の答えを人に伝えたり、紙に書いたりするのがよいと思います。
その上で、できるだけ患者さん本人の意思に沿った形での暮らしを、その後もできるだけ長く続けていくことが大切だと思います。

――具体的には、どんなことをすることを考えればいいですか。

新里:
一歩外に出て、自分の好きなこと、得意なことができる場所を探してみてはいかがでしょうか。カラオケ教室でも、俳句の会でも、山歩きのグループでもよいと思います。
好きなことでないと、なかなか続きません。

比較的若年のうちに認知症を発症したら

――もし、若い世代、仕事をしているような年代のうちに認知症を発症した場合、これはどう考えればいいですか。

新里:
認知症の多くは高齢になってから発症しますけれども、中には比較的若年で発症することがあります。
65歳未満で発症する認知症を「若年性認知症」といって、日本では約4万人弱と推計されています。
「若年性認知症には認知症の全てが含まれる」といわれます。子どもが小さかったり、経済的問題が生じやすかったり、介護する親がいたり、大変過酷な状況にあることが多いと思います。
「いろいろな相談機関や、制度を十分に利用してほしい」と思います。

――そうした場合、どんな相談機関があるんでしょうか。

新里:
まずは「若年性認知症コールセンター」「地域包括支援センター」「医療機関のソーシャルワーカー」などに相談するといいでしょう。
認知症の場合は、40歳から「介護保険」が利用できます。
「傷病手当金」や「障害年金」のように、お金を支給してくれる制度や、「自立支援医療」「精神障害者保健福祉手帳」では、医療費などの軽減も受けられます。

――経済的な不安も大きいでしょうから、使える制度をいろいろ知っておくことが大事ですよね。
あの、仕事はやはり続けられなくなるんでしょうか。

新里:
若年性の方は、仕事を続けることが一番のリハビリだと思います。
認知症があって、会社勤めを続けるためには、周囲にオープンにすることは避けて通れません。
私の女性の患者さんで、幼稚園の先生をしていた方ですが、50歳代前半で子どもの絵を壁にまっすぐ貼れなくなった、ということで、アルツハイマー型認知症に気付かれて病院で診察を受け、職場に認知症のことをオープンにしました。園長さんはじめ職場の方々の理解があり、まずは他の先生の補助役、それが難しくなってからは簡単な事務仕事に移してもらい、定年まで働いた方がおられます。
いずれにしても、職場の理解と配慮が不可欠です。
病院や自治体などで開かれている「認知症カフェ」に参加してみると、同じような悩みを抱えている人に出会えるかもしれません。

――認知症カフェ、っていうのは何でしょうか。

新里:
認知症カフェは、カフェのような雰囲気の中で、おしゃべりをしながら専門的な相談を受けることができる場です。地域の人にも開かれておりまして、認知症のある・なし、年代を問わず利用できますので、軽い気持ちでのぞいてみるのがよいのではないかと思います。

――例えば職場の人や友人が若年性認知症になったときに、私たちができることは何でしょう。

新里:
「患者さん、ご家族の気持ちを重んじて行動する」ということ。そうすれば、認知症の人も含めて生きやすい社会になるんではないでしょうか。
困っている人のことを知ろうとしたり、実際に声をかけたりするような、「ちょっとおせっかいなくらい」の社会のほうがよいのではないかと思います。

――では、最後にきょうのポイントをお願いします。

新里:
認知症でも家に引きこもらずに、外に出て、好きなことを見つけよう。


【放送】
2024/05/16 「マイあさ!」

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24/06/13まで

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