「知って防ごう! 食中毒」⑤ ~急増! アニサキス~

23/12/22まで

健康ライフ

放送日:2023/09/22

#医療・健康#カラダのハナシ

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【出演者】
平山:平山和宏さん(東京大学大学院農学生命科学研究科 教授 附属食の安全研究センター センター長)
聞き手:星川幸 キャスター

アニサキスとはどんなものなのか

――最近、スーパーで〝アニサキスに注意〟などと書かれているのを見かけるようになりましたが、これ、増えているんでしょうか。

平山:
はい、急増しています。「アニサキス」が食中毒として集計されるようになったのは2013年からなんですが、そのころは年間90件弱でした。それが最近は急増していて、昨年(2022年)は500件を超えています。

――10年ほどで5倍以上になっている、ということですね。増えている原因は何ですか。

平山:
原因の1つとしては、アニサキスというものが食中毒を起こす、ということが知られるようになってきたこともあるんじゃないかと思います。アニサキスというのは、特に治療しなくても1日ぐらいで治ってしまうという方が多いので、前はお医者さんに行かなかった、ということじゃないかと思います。
それから、食生活だとか流通の変化というのも関係していると思っています。少し前までは、傷むのがはやいからということで旅行など現地に行かないと食べられなかったような魚の刺身を、最近ではスーパーで見かけるようになりました。
また、アニサキスそのものが増えているんじゃないか、ということを言う人もいます。

――アニサキスとは改めてどんなものなのか、教えてください。

平山:
アニサキスは、本来イルカとかクジラのような、海にいる哺乳類の消化管に住んでいる寄生虫です。長さは2~3㎝ぐらいで、白い糸のような形をしています。

――イルカやクジラの消化管にいるアニサキスが、私たちの体の中に入るのはどうしてですか。

平山:
クジラやイルカのおなかの中にいるアニサキスは、卵を産むと、その卵がフンと一緒に海の中に出ます。海の中でふ化して幼虫になって、それがオキアミなどの甲殻類に食べられて、さらにそれがアジやサバ、イカなどの魚介類に食べられて、それらの体の中で育ちます。
その魚介類をたまたま我々が食べてしまうと、我々がアニサキスの食中毒にかかってしまう、ということになります。
アニサキスが口から体内に入って、胃や腸の壁に突き刺さることで、激しい痛みが起きます。

――アニサキスが私たちの体の中に入って、胃や腸にも寄生したりするんでしょうか。

平山:
アニサキスにとって人間の体は適した環境ではないので、我々の胃や腸の中では長く生きていくことはできません。アニサキスが胃の中で生きられるのはせいぜい1日程度、と考えられています。

――だから、1日ほどで症状が消える、という人が多いということなんですね。

アニサキスに対するアレルギー反応が関係することもある

――症状が続く、という人はいないんでしょうか。

平山:
軽い症状では済まない、という場合もあります。

――アニサキスは長くは生きられない、ということだったんですよね。それなのに症状が続くと。どうしてですか。

平山:
痛みが強いケースの場合には、胃の壁にアニサキスが突き刺さったという直接の痛みではなくて、アニサキスに対するアレルギー反応が関係しているということが分かってきました。その場合は、アニサキスが死んでしまっても、消化管の中にいる間は症状が続くということになります。

――アレルギー反応が起きていると。これはどうすればいいんでしょうか。

平山:
そういう場合には、アニサキスを体の中から取り除くしかありません。胃の場合だったら、内視鏡を使って引き抜くということ。あるいは腸の場合、重症でしたら開腹手術をすることが必要になる場合もあると聞いています。

――内視鏡や開腹手術まで必要とは知りませんでした。大変な方も中にはいらっしゃるんですね。

平山:
そうですね。アレルギー症状を起こす人の場合には「じんましん」が出てしまったりとか、場合によっては「アナフィラキシーショック」を起こして命に関わる、という方もいるそうです。症状が重い場合には迷わず病院へ行っていただきたいと思います。
また、これまでサバなどの青魚のアレルギーだと思っていた人が、実は「アニサキスアレルギー」だったということもありそうです。

アニサキスによる食中毒を予防するには

――アニサキスによる食中毒、予防するにはどうすればいいでしょうか。

平山:
予防するには、アニサキスを生きたまま体に入れないようにするしかありません。
刺身などで食べる場合には、目でしっかり確認して、もしアニサキスが見えた場合にはピンセットなどで取り除いてください。
アニサキスは主に魚介類の内臓にいて、魚などが死んだあとに肉のほうに移ってくる、つまりはお刺身のほうに移ってくる、といわれていますので、内臓がついた魚の場合は、新鮮なうちに速やかに内臓を取り除く、というのが予防には大事です。
お刺身の場合、1枚1枚チェックするというのは大変だと思いますが、アニサキスは冷凍すると死にます。マイナス20℃で24時間冷凍すれば死にますので、1回冷凍されたお魚の場合にはお刺身として食べても大丈夫です。
ただ、一般的な料理で使うようなしょうゆをつけたり、わさびをつけたりということではアニサキスは死にませんので、ご家庭で調理する場合には十分に気をつけてください。

――アニサキスはもともと魚介類の内臓にいるということでしたが、焼いたサンマの内臓なんかは好きで召し上がる、という方もいらっしゃると思うんですけれども、食べないほうがいいんでしょうか。

平山:
加熱をすることでもアニサキスは死にます。70℃で1分も加熱すれば十分ですので、しっかりと中まで火が通った状態にすればアニサキスの心配はなく、安全に食べていただくことができます。

――では最後に、きょうのポイントをお願いします。

平山:
刺身を食べるときはアニサキスに注意。目で確認するか、冷凍のものを選ぼう。


【放送】
2023/09/22 「マイあさ!」

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23/12/22まで

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