「知って防ごう! 食中毒」④ ~ノロウイルスに注意!~

23/12/22まで

健康ライフ

放送日:2023/09/22

#医療・健康#カラダのハナシ

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23/12/22まで

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【出演者】
平山:平山和宏さん(東京大学大学院農学生命科学研究科 教授 附属食の安全研究センター センター長)
聞き手:星川幸 キャスター

ノロウイルスによる食中毒は1年中起こる可能性がある

――「ノロウイルス」といいますと、私の周りでも数年に1度、かかった、という話を聞きます。吐き気とか下痢で本当につらいという話を聞きますね。

平山:
ノロウイルスの食中毒、つらいようですね。ただ、以前は「ウイルス」というのは食中毒の統計の中には入っていなかったんですね。当時多発していた原因不明の食中毒の原因がウイルスだということが分かって、「ノロウイルス」という名前がついたのも20年ぐらい前のことです。
皆さんは冬の食中毒というとノロウイルスの特徴だと思っていらっしゃるでしょうが、でも1年中起こる可能性がありますので、気をつけてください。

感染する原因と、どのような症状か

――ノロウイルスは年中かかる可能性があるんですね。原因は何なんでしょうか。

平山:
ノロウイルスに感染する原因は、主に2つです。
1つは、食べ物を介した感染。ノロウイルスに汚染された食品を、生だとか加熱が不十分なままに食べてしまったり、また、調理のあとにノロウイルスがついてしまうということも結構あって、そういうことで感染します。
ノロウイルスといえば“カキ”、というのが有名になってしまいましたが、今は、生食用のカキは十分対策がされていますので、カキによるノロウイルスの感染というのは減ってはいます。しかし、ノロウイルスというのはウイルスの量がすごく少なくても発症しますので、対策がすごく難しくて、水や他の食材からの感染も多いです。

――ノロウイルスの感染、もう1つの原因は何ですか。

平山:
もう1つの感染のルートは、人から人への感染です。感染者が吐いたものなどを触った手などを介して、口の中に入ってしまって、ノロウイルスに感染します。ノロウイルスに感染した人は突然吐いたりなどするので、近くにいる人がそのしぶきを吸い込んでしまって、感染したりということがあります。それと、吐いたものが乾燥すると、ウイルスが舞い上がるということもあります。吐いたものの処理には気をつけていただきたいと思います。
また、感染者が使ったトイレや洗面所、ドアノブ、食器などから感染することもあります。

――少しお話にありましたが、ノロウイルスに感染したときの症状は、改めてどのようなものなんでしょうか。

平山:
ノロウイルスに感染すると、増殖したウイルスを体の外に出そうという働きが起こって、強い吐き気だとか下痢などが起こります。多くの場合には1日から数日で症状が治まるんですね。自然に回復します。ただ、小さなお子さんや高齢者の方、抵抗力が弱い方は症状が長引くことがあります。

感染したと思われる場合は

――ノロウイルスの感染が疑われるという場合は、どうすればいいでしょうか。

平山:
ノロウイルスの感染症には特効薬がありません。ワクチンもありません。また、ウイルスですので、抗生物質とか抗菌薬が効きません。ただ、重症化することは少ないので、健康な大人の場合には2~3日で自然に治ります。
症状が自然に治まるまで、水分を十分にとって安静にしていることが大事だと思います。ウイルスそのものが命に関わるということはほとんどないんですが、小さなお子さんとか高齢者の方の場合には脱水症状に気をつけること、あと、吐いたものをのどに詰まらせるというような事故が起こらないよう、気をつけることが大事です。

――安静にするときの注意は、何かありますか。

平山:
これは食中毒一般に言えることなんですけれども、症状が軽い場合やそれほど重くない場合には家庭で対処することが多いと思いますが、そういう場合も下痢止めは使わないほうがいいです。下痢止めを使うと、悪いものを体の外に出すという働きを止めてしまうことになりますので、かえって治りが悪くなったりすることがあります。
ただ、脱水症状は非常に気をつけなくてはいけないポイントだと思います。経口補水液やスポーツドリンクなどで水分や電解質を少量ずつ、こまめにとるようにしていただきたいと思います。

予防方法は

――人から人への感染に注意が必要ということでしたが、周りの人からウイルスをもらわないためには、どうすればいいんでしょうか。

平山:
ノロウイルスに限らないんですが、感染を防ぐ基本というのはやはり、せっけんと流水によるこまめな手洗いです。特に調理をする前や食事をとる前、トイレに行ったあとやおむつの交換、汚物の処理などをしたあとには念入りに手洗いをしてください。
ノロウイルスというのは、アルコール消毒剤で不活性化することができません。とにかくせっけんで丹念に手洗いをして、流水でしっかり洗い流すというのが重要です。

家族が感染したときは

――家族が感染してしまったというときには、どうすればいいでしょうか。

平山:
とにかく感染を広げない、というのが大事です。家族がおう吐した場合にはまず、ほかの人は遠ざけて、部屋の換気をしてください。
掃除や消毒をするときには、直接触らないように手袋をしたり、飛散したノロウイルスを吸わないようにマスクをして、気をつけてください。使ったものはすぐに捨ててください。消毒はアルコールが効きませんので、塩素系漂白剤の希釈したものを使ってください。

――塩素系の漂白剤でウイルスを死滅させないといけない、ということですね。

平山:
はい。こうしたノロウイルスに対する対処法というのは、予防に生かされています。ここ数年、ノロウイルスによる感染者は減る方向にあります。ただ、ノロウイルスというのは1回流行すると、数百人から2,000人を超えるような大規模な感染が多いですので、気をつけてください。

――では最後に、きょうのポイントをお願いします。

平山:
ノロウイルスは人から人の感染が多い。感染対策を実行して、予防に努めよう。


【放送】
2023/09/22 「マイあさ!」

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23/12/22まで

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