「知って防ごう! 食中毒」② ~最も多い! 肉からの感染~

23/12/19まで

健康ライフ

放送日:2023/09/20

#医療・健康#カラダのハナシ

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【出演者】
平山:平山和宏さん(東京大学大学院農学生命科学研究科 教授 附属食の安全研究センター センター長)
聞き手:星川幸 キャスター

カンピロバクターに注意

――今回は、「最も多い! 肉からの感染」です。平山さん、これはどういうことでしょうか。

平山:
ウシやブタ、ニワトリなどの動物は、健康であっても、食中毒を引き起こす細菌やウイルスを体の中に持っていることがあります。そういった細菌やウイルスなどは、処理するときに肉についてしまったりすることがあります。肉が新鮮かどうかとは関係なく、「生」や「加熱不足」で食べてしまうと食中毒が起きてしまいます。

――新鮮なお肉でも注意が必要なんですね。

平山:
はい。特に「カンピロバクター」という細菌による食中毒は毎年全国で多発していまして、昨年(2022年)の統計でも、細菌性食中毒の発生件数の中で第1位でした。

――カンピロバクターというのは、ニュースで確かに聞いたことがありますね。

平山:
カンピロバクターは、主にニワトリやウシ、ブタの腸内に生息している菌です。食肉加工の段階で、肉の表面についてしまうことがあります。加熱が不十分だったり、肉についている菌がまな板や包丁などを通して、ほかの食材を汚染して食中毒を起こします。カンピロバクターは特に菌数が少なくても食中毒を起こしますので、注意が必要です。

――そうしますと、カンピロバクターの食中毒で注意することというと、何ですか。

平山:
やはり、しっかり加熱することは大事です。
それから、鶏肉の表面にはカンピロバクターがついていることが非常に多いので、この菌を他の食材につけない、ということが大事です。鶏肉を水道で洗って、肉の表面についていた菌をまき散らしてしまう、などどいうことがあり、それが皿や調理器具を汚染してしまい、感染の原因になるケースも報告されています。基本的には、鶏肉は洗わないほうがいいと思います。洗いたいという場合には、水のしぶきが食材や調理器具に飛び散らないように気をつけてください。

――しっかり加熱することと、菌を広げない、ということが大事なんですね。

腸管出血性大腸菌に注意

――そのほかに、お肉で注意することは何でしょうか。

平山:
「O-157」で有名になりましたが、「腸管(ちょうかん)出血性大腸菌」という菌には注意が必要です。

――O-157は聞いたことがありますね。改めて、どんな菌ですか。

平山:
腸管出血性大腸菌はウシなどの動物の腸の中にいる菌で、「大腸菌」の1つのタイプなんですけれども、その菌がいたからといって動物は病気を起こさないので、見分けが難しいです。
ウシなどの動物のフンに汚染された食肉、あるいはその他のものから二次汚染されることによって、あらゆる食品が原因となる可能性があります。過去には、牛肉やその加工品はもちろんですが、サラダや白菜漬け、井戸水などによる食中毒の感染例があります。
腸管出血性大腸菌については、腎臓や脳の障害を起こしたりすることもあります。命に関わることもありますので、注意が特に必要だと思います。

――予防するにはどうすればいいでしょうか。

平山:
腸管出血性大腸菌も大腸菌ではありますので、しっかり加熱すれば死滅します。生肉を使った肉料理は避けるとか、それから、食べるときに十分に加熱するというのが重要です。今は法律にのっとった規制がありますので、飲食店などで食べるときはお店の注意をきちんと守って、安全に食べていただきたいと思います。

――やはり、加熱というのがポイントなんですね。

ユッケ、低温調理、ジビエに注意

――〝ユッケ〟などは注意が必要でしょうか。

平山:
今は「食品衛生法」で決まっていて、塊の肉の表面をきちんと1㎝以上焼いて、その加熱して火が通った部分を切り取った上で提供する、という決まりがありますので、お店で食べる分には安全です。ただ、家庭で作る場合には注意が必要で、例えば、肉を結着剤(けっちゃくざい)で固めた「成型肉」などというものの場合には中に菌がいる可能性がありますので、肉のたたきを作ったりして食中毒になる、というケースも報告されています。

――今、ゆっくりと加熱して肉をやわらかくする〝低温調理〟、これがはやっていますけれども、これはどうでしょうか。

平山:
食中毒を防ぐという意味では、個人的におすすめしないです。低温調理というのは、味や食感がいいということで幅広く人気があるようですけれども、例えばインターネット上に紹介されているようなレシピの場合には、これでは食中毒の菌を十分に殺せないんじゃないかな、というものもあったりしますので心配です。
いわゆる低温殺菌というのは、63℃で30分以上保持する、というのが条件なんですけれども、これは調理するお湯の温度ではなくて、肉の真ん中の部分の温度がこの63℃になる必要があります。ある実験では鶏のむね肉を300g使ってやったところ、肉の中心部がお湯と同じ温度になるのに、鶏肉をお湯に入れてから70分以上かかったという報告もあります。つまり、63℃で調理しようと思ったら、合計で100分以上、64℃~65℃のお湯につけておかなくちゃいけないということになりますので、なかなか難しいと思います。

――低温調理は、きちんと正確に温度と時間を測って調理する、ということが必要なんですね。最近、〝ジビエ〟もはやっていますけれども、こうしたお肉についての注意はどうでしょうか。

平山:
イノシシやシカの食害を防止しよう、そのためには食肉として活用しよう、ということでジビエが広がっています。きちんと処理されていれば安全なんですけども、やはり野生動物は、家畜に比べれば病原体のコントロールが難しいので、きちんとした処理方法ですとか調理方法というのを知って、正しくジビエを楽しんでいただきたいと思います。

――では最後に、きょうのポイントをお願いします。

平山:
肉には、怖い食中毒菌がいます。加熱と殺菌に注意を。


【放送】
2023/09/20 「マイあさ!」

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