【出演者】
平山:平山和宏さん(東京大学大学院農学生命科学研究科 教授 附属食の安全研究センター センター長)
聞き手:星川幸 キャスター
食中毒はどうして起きる?
――今回のテーマは「急な腹痛・吐き気 それは食中毒かも?」ということなんですが、急な腹痛や吐き気が食中毒だというケースは多いんでしょうか。
平山:
はい。突然起こる腹痛や下痢、それからおう吐などは典型的な症状だといえます。ただ、発熱やせき、頭痛のような、かぜに似た症状から始まる食中毒もありますし、マヒやしびれなどの神経症状を起こす食中毒もあります。
本人が気がついてない場合ですとか、あるいはかぜや体調不良など、ほかの病気と勘違いしているという場合もありますので、食中毒の予防にはどんな注意が必要か、というのを知っていただきたいと思います。
――では改めて、食中毒はどうして起きるんでしょうか。
平山:
食中毒というのは、食中毒を起こすもとになる「菌」だとか「ウイルス」、場合によっては「食品そのもの」に有毒なものが含まれている、ということがありますが、そういうものを食べてしまったときに起きます。食中毒を起こす菌というのは、土の中や水にもいますし、人や動物の皮膚や腸の中にもいます。
家庭で起こる食中毒というのも結構多くて、食事を作る途中で菌をつけてしまったりとか、あるいは、調理のしかたや保存のしかたによってはかえって菌を増やしてしまうということもありますので、気をつけてください。
――確かに、温度や湿度の高い夏に多いイメージがありますね。
平山:
やはり、梅雨から夏にかけての高温多湿の季節というのは、特に細菌による食中毒が増えます。ただ、食中毒というのは1年中起きていて、例えば「ノロウイルス」が代表になりますけれども、ウイルスによる食中毒などは冬に多いです。
それから、フグやキノコのような毒のあるものだとか、山菜やスイセンのような毒のある植物を間違って食べてしまうという場合など、食べ物・動植物そのものに毒が含まれていることがありますので気をつけてください。こういう「自然毒」の食中毒というのは、数はそれほど多くはないんですが、毎年、どうしても命に関わるような重篤な食中毒が起こっていますので、気をつけていただきたいと思います。
――季節にかかわらず、本当に気をつけないといけないですね。
平山:
きちんと原因と対処のしかたを知って、防いでいただきたいと思います。
食中毒危険度チェック
平山:
「食中毒の危険度のチェック」というのを考えました。1つでも当てはまる方は、食中毒を起こす可能性が高いので気をつけていただきたいと思います。
――では、その食中毒危険度チェック、教えてください。
平山:
✓ 肉の焼き加減は“レア”が好き
✓ 肉を切ったあと、そのまま同じ包丁やまな板でほかの食材を切ることがある
✓ 鍋の中に残ったものを、そのまま放置することがある
✓ 冷蔵庫にいつも食品が詰まっている
✓ 自分で採った山菜やキノコを食べることがある
――全部で5つの食中毒危険度チェックでした。皆さん、いかがだったでしょうか。
私は、肉の焼き加減はレアが好き、それから、実家ですと父が採ってきた山菜やキノコなんかを食べることもあるんですが。
平山:
そうですね、このうちの1つでも当てはまったら危険だと思ってください。
――肉の焼き加減はレアが好き、というのは危険なんでしょうか。
平山:
塊の牛肉の場合には、肉の中まで菌がいるということはほとんどないんですが、例えばひき肉、レバーや豚肉、串に刺すとか、あるいはおいしくするために加工した肉、こういうものは注意が必要です。中まで菌やウイルスが入っている場合があります。ですので、表面をしっかり焼いても、中のほうがレアだと食中毒の危険があります。
生肉や生魚を切った包丁やまな板で生野菜や果物を切ると、肉や魚が持っている菌が次の食材に移ることになります。そうすると食中毒を起こすことがあります。
――みそ汁とかカレーなどは鍋に置いたままにしてしまいがち、という方も多いと思うんですが、これもだめなんですね。
平山:
たとえ気温が低くても、鍋の「常温放置」というのはいけません。加熱したあとに、特にカレーのようなドロドロしたものは中まで温度が下がる時間がかかりますので、その間に菌が増えてしまうということになります。
――キノコや山菜にも注意が必要なんですね。
平山:
はい。毒キノコや毒草を食べてしまうという事故は毎年起こっていますし、それから、スイセンをニラとかギョウジャニンニクと間違えて食べてしまうということも報道されています。自分で採った山菜だとかキノコ、野草というものは、100%の自信がない場合には食べないでいただきたいと思います。
――では最後に、きょうのポイントをお願いします。
平山:
食中毒にはさまざまな原因があります。きちんと知って、しっかり予防。
【放送】
2023/09/19 「マイあさ!」
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