「子どものアレルギー」⑤ ~みんなと一緒に過ごせるように~

23/11/17まで

健康ライフ

放送日:2023/07/14

#医療・健康#カラダのハナシ

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【出演者】
大矢:大矢幸弘さん(国立成育医療研究センター アレルギーセンター センター長)
聞き手:星川幸 キャスター

ふだんの生活では、食事と運動に注意

――食物アレルギーのお子さんは、給食など、“みんなと一緒”というのが難しい場面もありますよね。集団生活の場で、アレルギーのあるお子さんに対して、どんな工夫がされているんでしょうか。

大矢:
過去に、給食で誤食して亡くなるケースなど、悲しい事故がありました。そうしたケースを受け、学校や保育園などの集団生活での対策も整備されてきています。
具体的には「生活管理指導表」というものを作って、主治医・家庭・学校や保育園などが手を携えて、お子さんの健やかな生活を守っていこうとしています。事故防止のガイドブックなども作られて、現場の職員の啓発にも力を入れています。

――具体的には、生活の上でどんなことに注意が必要でしょうか。

大矢:
一番気をつけたいのは、「食事」と「運動」です。

――給食のときに、食べられないものがあるという友達の姿を見たこともありますが、食事で気をつけることはどんなことですか。

大矢:
学校などでは、食材に、家庭で食べないような特別なものは使わないよう配慮されていますし、対応が必要なお子さんには「除去食」を提供したりしているようです。
アレルギーがあると分かっているものは「必ず伝える」ことです。自分が食事などを提供する立場の人は、「必ず聞く」ことです。

――必ず伝える、そして、必ず聞くこと。お互いにそれが大事、ということですね。食事のほかに、運動にも注意が必要なんですね。

大矢:
はい。運動で誘発されるアレルギー症状があります。
1つは「運動誘発ぜんそく」です。小児ぜんそくの9割は未就学児のうちに発症しますが、まれに、小学校高学年や中学校などで、運動に真剣に打ち込むようになってから起こることがあります。
もう1つは「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」です。運動することで、もともとある食物アレルギー症状が強めに出ることがあります。給食後の体育や部活動のときに、ゼエゼエしたり、全身にじんましんが出るなどの症状を起こすことがあります。最近はこの症状が注目されるようになり、令和2年度に改訂した「スポーツ事故防止ハンドブック」というパンフレットにも、新しくこの項目が取り入れられました。

ふだん以外の集団生活で気をつけることは

――キャンプやサマースクールなど、学校以外の集団生活の場もありますね。そうした、ふだん以外の集団生活の中で特に気をつけることは何でしょうか。

大矢:
キャンプや合宿などの宿泊では、寝具が原因でダニの症状が出てしまうことがあります。症状がひどくなりそうな場合は、高密度のシーツや布団カバーなど、寝具を持参することを検討するといいかもしれません。また、食物アレルギーなどで、急激なアレルギー反応である「アナフィラキシー」が心配される場合には「アドレナリン自己注射液」を持参することです。

――アドレナリン自己注射液、というのは何でしょうか。

大矢:
「エピペン」という名前で知られていますが、アナフィラキシーの症状を短時間で緩和させることができる、注射型の処方薬があります。太いペンのようなもので、携帯することができます。食物アレルギーでアナフィラキシーを起こす危険性のあるお子さんは、大体持っていると思います。
緊急を要する全身症状、じんましんですとか、せきが止まらない、あるいは呼吸困難、血圧が下がってぐったりするなど、そうした症状が起こったときに、速やかに太ももなどに注射をします。これは、衣服の上から注射してもいいのです。そして「医師以外が行ってもかまいません」。

――祖父母の方たちにとっては、自分が子どもを育てていたときとはずいぶん変わったな、ということもありそうですけれども、専門の指導者がいないような、ちょっとしたお泊まりとか食事会のときには、受け入れる側の大人はどんなことに気をつければいいでしょうか。

大矢:
保護者どうしの連絡は、「アレルギー情報の共有」をしてください。「必ず聞く」、「必ず伝える」ということです。
食べたことがないという食材は、基本的には与えないことが大切です。もし、試しに食べてみるなら、ごくごく少量から、ということでしょうか。
もしもの場合には、アドレナリン自己注射液は誰が打ってもよいので、「お子さんが携帯しているかどうかの情報も、必ず保護者どうしで共有」をしてください。
あとは、「思い込みで、古い知識で対応しない」ということも大切かもしれません。

――子どものアレルギーについて伺ってきました。大矢さん、改めて、大切なことをお願いします。

大矢:
アレルギーを起こす抗原となるものはさまざまありまして、症状の出方などもそれぞれみんな違いますが、必ず対策の立てようはあります。正確な診断と正しい治療をすれば、治療のできない病気ではありません。
子どもと関わる人は、信用できるリソースから新しい情報を得てほしいと思います。厚生労働省の「アレルギーポータル」というホームページを参考にしてください。

――では最後に、きょうのポイントをお願いします。

大矢:
知識を常にアップデートして、正しい対策を立ててください。


【放送】
2023/07/14 「マイあさ!」

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