【出演者】
大矢:大矢幸弘さん(国立成育医療研究センター アレルギーセンター センター長)
聞き手:星川幸 キャスター
スギやダニのアレルギー、治療や対策
――今週のテーマは「子どものアレルギー」ですが、今回は、大人にとっても参考になる情報をお伝えします。
前回は「少しずつ慣らして症状を出ないようにする」食物アレルギーの治療について伺いました。スギやダニのアレルギーにも、慣らしていく治療というのはあるんですか。
大矢:
はい。スギとダニのアレルギーに対しては「減感作(げんかんさ)療法(アレルゲン免疫療法)」という治療があります。「皮下注射でアレルゲンを投与する治療」と、口の中、舌の下でアレルゲンを含む錠剤を溶かして飲み込む「舌下免疫療法」があります。
――注射を打つ方法と、錠剤を飲み込む方法があると。それぞれ、どんな治療なんでしょうか。
大矢:
注射では、量を調整しながら徐々に増やしていき、慣らしていきます。長い期間、定期的に通院し続ける必要があるのと、注射が痛いのもあり、根気と覚悟が必要になります。
舌下免疫療法は2段階の容量の薬があり、最初の1週間は少なめのもの、あとは定量のものを3年から5年ほど、毎日服用し続けます。口の中のかゆみなどの副反応が出たり、人によっては効果がないケースもありますので、ちょっと注意が必要です。
――子どもの生活の負担ということを考えますと、なかなかハードルの高い治療かもしれませんね。もっと手軽に、症状を改善する方法はありますか。
大矢:
対症療法ですが、薬で症状を抑えるのが一般的な治療かと思います。抗ヒスタミン薬の内服をしたり、ステロイドの点鼻薬を使ったりします。
そのほかに、スギやダニという抗原を取り込まないためにできることもたくさんありますので、まずはそうした生活上の工夫をしてほしいと思います。
――その生活上の工夫、具体的にはどんなことをすればいいのか伺います。まずは、スギの花粉症ではどうでしょうか。
大矢:
花粉の飛ぶ季節には、マスク・メガネ・ゴーグルといった基本的な対策があります。外出から帰ったときに、家の中に花粉を持ち込まない工夫をしましょう。あとは「鼻うがい」がとても有効です。
――鼻うがいですか。子どもでもできますか。
大矢:
生理食塩水と、急須のようなものがあればできます。鼻うがい用の容器も市販されています。
洗面所などで顔を横に傾けて、片側の鼻の穴から生理食塩水を注ぐと、反対側の鼻の穴から出てきます。呼吸をしながらできるので、この方法は手軽です。
うまく出るように調整することは、必要かとは思います。
――ダニのアレルギーは、どう対策すればいいでしょうか。
大矢:
「ダニが一番多いのは布団の中」です。これを対策することが大切です。
新品の布団にはダニがいませんので、これに、ダニを通さない高密度のカバーをかけるだけで、かなり軽減することができます。以前はこうしたカバーは高価でしたが、今では量販店でも手に入れることができるようになりました。
ダニの餌は人間のフケです。皮膚が剥がれて落ちたものですね。ですから、それを寝具から洗い落とすことも大切です。1週間に1回はカバー類を洗濯しましょう。
ほかには、布製のソファーを避けること。カーペットやラグも、こまめに洗濯をすることです。
布団の掃除機がけや、部屋の徹底した掃除などは、もちろんやるのはいいと思いますが、ちょっと継続が難しいかもしれないですね。
――食物アレルギーも、ダニなどの対策も、以前聞いたものとはどんどん変わっている、ということなんですね。
アレルギーの研究は日進月歩
――ほかにも、アレルギーの研究や対策で進んでいることはありますか。
大矢:
アレルギーの研究は日進月歩で進んでおり、子育ての常識も10年、20年前とは変わってきています。
例えば、リンゴ・ナシ・サクランボなどの果物を食べたときに、唇や口の中が腫れたりかゆくなったりする症状は、シラカバやハンノキなどの花粉症と関わりがあることが分かっています。
一見関係ないように見える2つが、似た物質を持っていて、体の免疫反応が反応してしまう現象があります。これを「交差反応」と呼びます。
――“交差点”の“交差”と書いて、交差反応ですね。ほかの物質と交わる、ということですか。
大矢:
そうですね。スギのアレルギーがある人が、トマトに反応してしまう、というような現象ですね。
ダニのアレルギーは、エビとの関連があります。
クラゲに刺された方が、納豆のアレルギーになることもあります。
猫アレルギーのある方は、肉のアレルギーになることもあります。
果物や野菜との交差反応は、火を通していれば大丈夫なものもあります。知っていれば避けられる症状もあるので、「新しい、正しい情報を知っていただきたい」と思います。
また、お子さんが日常生活を送りやすいように、学校や保育園などでの対応も変わってきています。
――アレルギーのお子さんの生活については、次回、詳しくお聞きします。では最後に、きょうのポイントをお願いします。
大矢:
環境を整えて、アレルゲンを取り込まない工夫を。
【放送】
2023/07/13 「マイあさ!」
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