「子どものアレルギー」② ~予防の決め手は皮膚バリア~

23/11/14まで

健康ライフ

放送日:2023/07/11

#医療・健康#カラダのハナシ

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【出演者】
大矢:大矢幸弘さん(国立成育医療研究センター アレルギーセンター センター長)
聞き手:星川幸 キャスター

食物アレルギーのきっかけは皮膚で作られる?

――アレルギーは、予防に「皮膚」が関係あるんですか。

大矢:
はい。実は、食物アレルギーのきっかけが皮膚で作られている、というようなことが分かってきました。
ミルクしか飲んでいない月齢の赤ちゃんに卵アレルギーが出るなど、口からアレルゲンの食物を摂取する前に、食物アレルギーを発症することがあります。これは、「アレルゲンを口から摂取する前に、皮膚から取り込まれる」ことで起こります。
例えば、卵をよく食べる家庭であれば、料理の際の、食べ物の目に見えないかけらが、部屋中にホコリと一緒に舞い散っています。衣服や布団の中にもあります。
湿疹や傷があったり、乾燥している状態の皮膚は本来のバリア機能が失われて、こうしたアレルゲンが体内に入り込みやすくなっており、アレルギー反応を引き起こす「IgE(アイジーイー)抗体」が作られる原因となります。この一連の現象を「感作(かんさ)」といいます。
感作が起きたあとに、アレルゲンとなる食べ物を食べると、抗体に反応して、かゆみや発疹などの症状につながることがあるのです。

――その皮膚のバリア機能が正常で、アレルギー抗体が作られていなければ、食べてもアレルギーは起きない、ということになるんでしょうか。

大矢:
炎症があるところからアレルゲンが体に入ると、感作が起こります。
最初にその食品に触れるのが「口から」の場合、口や腸に炎症がなければ、アレルギーを起こさない仕組みが作られます。それが先なら感作が起きません。
そのため、離乳食の開始を遅らせたり、妊娠中や授乳中に、アレルギーになりそうだというだけで母親が特定の食べ物を除去することは、好ましくないといえます。
まずは、皮膚などの炎症箇所からアレルゲンが入らないようにすることが大切です。

正しいスキンケアが大切

――皮膚からアレルゲンが入らないようにするには、どうすればいいんでしょうか。

大矢:
一番大事なのは、皮膚のバリアを正常に保つことです。湿疹などの皮膚トラブルは速やかに治すこと。そのためには、正しいスキンケアが大切です。

――では、その正しいスキンケアのやり方、教えてください。

大矢:
まずは「きちんと洗う」ことです。洗浄剤をよく泡立てて、手で洗いましょう。
次に、その洗浄剤を「しっかり洗い流す」ことです。
そのあとに「保湿」することが大事です。保湿剤はすり込まないように、薄皮1枚で覆うように均一に塗ります。

――洗浄剤できちんと洗う、そして、しっかり洗い流す、さらに、保湿をすることが大事、ということですね。湿疹や傷がある場合はどうすればいいでしょうか。

大矢:
湿疹がある場合は、湿疹の程度に応じた強さの、「ステロイド外用薬」などの「抗炎症薬」の塗り薬を処方してもらいます。そして、しっかり治すことが大切です。

――ステロイドが入っている薬を、小さな子どもに使い続けても大丈夫なんでしょうか。

大矢:
副作用を避けるコツがあります。適切な強さのステロイドを適量塗ると、すぐきれいになります。そして、だんだんやめていくことができます。

――汗をたくさんかいて「あせも」ができるということもありますが、そのときには皮膚のケアで気をつけることはありますか。

大矢:
汗はかいたほうがいいんですね。しかし、そのまま放置すると皮膚が荒れるので、早めに洗い流すか、拭き取るようにします。

――食物アレルギー以外のアレルギーにも、スキンケアは関係あるんでしょうか。

大矢:
ありそうだ、という報告もありますが、まだ厳密には分かっていません。

小さいうちに、ごく少量からいろいろ食べてみる

――口から最初に摂取することで、アレルギーを起こさない仕組みが作られる、とのことでした。離乳食などの小さいうちに、いろいろなものを食べさせておくほうがよい、ということなんですかね。

大矢:
いろいろなものを食べておくことは大切です。皮膚からアレルゲンが入ってしまう前に食べておくことで、アレルギーを起こしにくくすることができます。
ご家族が食べているものは、少量ずつから食べさせるようにしましょう。ただし、お子さんに初めて食べさせる場合は、耳かき1杯程度のごく少量から始めることが大切です。
全く食べられないことは“まれ”なので、もし、最初に症状が出てしまったら、まずは「どれだけなら食べられるのか」検査することが必要です。

――検査と、アレルギーの治療については、次回詳しくお伝えします。最後に、きょうのポイントをお願いします。

大矢:
食物アレルギーは皮膚から。日頃のケアが大事です。


【放送】
2023/07/11 「マイあさ!」

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