【出演者】
山田:山田昌和さん(杏林大学 医学部 教授)
聞き手:福島佑理 キャスター
大人も若い世代も注意 スマホ老眼とスマホ近視
――スマートフォンの使い過ぎが招く目の異常としては、どのようなものがあるんでしょうか。
山田:
「スマホ老眼」「スマホ近視」「スマホ内斜視」というものがあります。
――スマホ老眼、スマホ近視、スマホ内斜視。まずは、スマホ老眼とはどんな病気なんでしょうか。
山田:
目は、オートフォーカスのカメラのように、焦点を自動で合わせる機能を持っています。スマホ老眼は、スマートフォンの画面を近い距離で見続けることによって、目のピント合わせの機能が低下した状態を指します。
スマホ老眼という言葉は10年も前からありますが、ここ数年、10代、20代の若者の間でも増えている印象があります。
――一般の老眼とスマホ老眼はどのように違うんでしょうか。
山田:
スマホ老眼は目の使い過ぎによって起こる症状ですが、老眼は年をとると誰にでも起こってくるものです。老眼は、加齢とともに目の調節機能が低下して、近くに焦点が合いにくくなる状態で、老眼というと高齢者がなるイメージがありますけれども、実は40代から症状が起き始めます。
――スマホ老眼は、目のどの部分に負担をかけているんでしょうか。
山田:
目の中には「水晶体」というレンズがあって、「毛様体筋(もうようたいきん)」という筋肉が収縮して水晶体の厚みを変化させることで、ピントを合わせています。毛様体筋は、心臓の筋肉と同じぐらい体の中で1日中働き続けている筋肉なのですが、スマートフォンを見続けると、さすがの毛様体筋も疲労して動きが悪くなってしまい、ピントの調節がうまくできなくなります。
――毛様体筋って心臓の筋肉と同じくらい動いてるんですね。次に、スマホ近視について教えていただけますか。
山田:
スマホ近視は、ピントを調節する筋肉が凝り固まってしまって、近くにピントが合った状態で固まった状態です。多くは一時的なものですが、この状態が続くと、近視の度数自体が進んでしまうことがあります。最近は、学校でもタブレット端末やデジタル教材が普及していますので、子どもの近視の進行にもデジタル機器が関係しているようです。
――スマホ老眼、スマホ近視、どうしたらいいんでしょうか。
山田:
大人でも子どもでも、デジタル機器の使い過ぎに注意して、目に負担をかけない生活をすることです。時間を制限したり、適度に目の休憩を挟むのがよいでしょう。
また、お子さんの場合は外で遊んだり、運動したりする時間を増やすことも大切です。
若い世代を中心に増加 スマホ内斜視
――そして、スマホ内斜視とはどういうものでしょうか。
山田:
スマートフォンの使い過ぎで、いわゆる「寄り目」になってしまうものです。スマートフォンは画面と目の距離が近いために、目が内側に寄ってしまい、寄り目の状態になります。遠くのものを見るときにも寄り目の状態が続き、「内斜視」の状態で固まってしまいます。10代から20代の、若い世代を中心に増えている病気です。
――スマホ内斜視になると、どうなってしまうんでしょうか。
山田:
スマホ内斜視は、寄り目の位置で固まった状態なので、スマートフォンやタブレット画面は普通に見えます。しかし、顔を上げてテレビを見たり、外に出かけたりすると、寄り目が戻らない状態でものを見ることになり、両目にずれが生じて2つの像が合わせられなくなり、ものが2つに見える「複視(ふくし)」の状態になります。ものがだぶって見えるほかに、遠くがぼやけて見える、クラクラする、という訴えのこともあります。
――スマホ内斜視の予防法はありますか。
山田:
予防としては、スマートフォンなどの使用を控えて、多くても1日1~2時間にして、目を休めること。
そして、見る距離を30cm以上離すことです。
ベッドやソファーでの寝ながらのスマートフォンは、画面に目が非常に近づきますので要注意です。お子さんが小さい場合には、使い方のルールを決めて、きちんと守らせることが大切になります。
――最後に、きょうのポイントをお願いします。
山田:
スマートフォンに伴う目のトラブルが増えています。スマートフォンと上手につきあっていきましょう。
【放送】
2023/06/21 「マイあさ!」
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