「皮膚トラブルに注意!」⑤ ~増えている 帯状ほう疹~

23/09/29まで

健康ライフ

放送日:2023/06/02

#医療・健康#カラダのハナシ

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【出演者】
猪又:猪又直子さん(昭和大学 医学部 皮膚科学講座 主任教授)
聞き手:福島佑理 キャスター

帯状ほう疹、どんな病気か

――今回のテーマは「増えている帯状ほう疹」ですが、どのくらい増えているんでしょうか。

猪又:
ある統計によりますと、年間2%ずつ増加傾向にあるといわれています。この「帯状ほう疹」は50歳代から発症率が高くなり、80歳までに3人に1人が発症するといわれています。

――そもそも、帯状ほう疹とはどういった病気なんですか。

猪又:
帯状ほう疹は、水ぼうそうと同じウイルスで起こる皮膚の病気です。体の左右どちらかの神経に沿って、チクチクした痛みを伴う赤い斑点や水ぶくれが列をなして現れます。帯のように現れるので、帯状ほう疹といわれています。

――水ぼうそうと同じウイルスなんですね。水ぼうそうは子どものころにかかった方も多いと思うんですが、なぜ大人になってかかってしまうんでしょうか。

猪又:
水ぼうそうは、5歳までに85%の人がかかります。多くの場合は1週間程度で治りますが、実はその後もウイルスはなくなるわけではなく、体の中に数十年間潜んでいるんです。そのため、きっかけがあればまた活動を開始して、帯状ほう疹が発症するんです。

――発症するきっかけは何でしょう。

猪又:
例えば、加齢や疲労、ストレス、また、免疫を低下させるような病気がきっかけになります。免疫が低下するような病気としては、糖尿病やがんなどがあります。

――特に注意する症状など、ありますか。

猪又:
頭部から顔面に症状が現れた場合は要注意です。目の症状として、角膜炎や結膜炎、ぶどう膜炎などの合併症を引き起こすことがあります。重症化すると、視力の低下や失明につながることもあるんです。そのほか顔面神経まひや、耳の神経の影響から耳鳴り、難聴、めまいなども生じることがあります。
また、帯のような発疹のほかに、体中に水ぼうそうのような水ほうが現れた場合は、重症化のサインですので注意しましょう。帯状ほう疹はできるだけ早く治療することが大切です。

――これは帯状ほう疹かも、とすぐ気付けるものなんでしょうか。

猪又:
通常、帯状ほう疹の場合は痛みから始まるんですが、皮膚症状が出るまでなかなか気が付かない方がいます。水ぶくれが出て、やっと気付く、ということも多いんです。しかし帯状ほう疹は、発疹が出てから3日以内に治療することが重要です。早く治療を始めれば発疹の痕も残りにくくなりますし、合併症も起こりにくくなります。また、その後の後遺症、痛みの後遺症も起こりにくくなります。
最近は検査キットを使うことで、以前なら帯状ほう疹と気付きにくかった症状でも、簡単に診断できるようになりました。チクチクした痛みや発疹が現れたら、すぐ皮膚科にご相談ください。

帯状ほう疹、治療法・予防法は

――どんな治療法がありますか。

猪又:
帯状ほう疹の治療の中心は、ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」です。それに加えて、痛みを抑える「鎮痛薬」と、炎症を和らげる「外用薬」などを塗ることが、主な治療になります。

――予防法はあるんでしょうか。

猪又:
帯状ほう疹は、50歳以上であれば「ワクチン接種」によって予防することができます。
ワクチンには2種類あります。1つは「生ワクチン」。これは、毒性を弱めたウイルスを体内に注入して、免疫の働きを高めるものです。発症を50%ほど抑えられ、たとえ発症しても軽症で済む、といわれています。しかし、免疫抑制薬、抗リウマチ薬、抗がん薬などの薬を投与されている方には、このワクチンを接種することはできません。

――もう1つは何でしょう。

猪又:
もう1種類は「不活化ワクチン」です。これは、ウイルスをバラバラにして無力化し、感染する能力を失わせたものです。これであれば、免疫抑制薬、抗リウマチ薬、抗がん薬などの薬剤を投与されている方でも、接種を受けることができます。70歳以上の方でも90%以上の予防効果があります。
皮膚科のある病院やクリニックで受けることができますが、事前に、受けられるかどうかご確認ください。

――ワクチンの費用はどのくらいなんでしょうか。

猪又:
医療機関によってまちまちですが、おおむね数千円から4万円程度です。自治体によっては助成制度もありますので、皆さんのお住まいの地域で調べてみてください。

――日常生活で、日頃から気を付けることなどありますか。

猪又:
帯状ほう疹は、加齢や疲労などによる免疫力の低下に伴い、誰でも発症する可能性のある病気です。帯状ほう疹になりにくい体作りのためにも、食事のバランスに気を付けて、睡眠をしっかりとり、日頃から体調管理に気を付けていただくことが大切です。

――最後に、きょうのポイントをお願いします。

猪又:
帯状ほう疹は、早期発見、早期治療が大切です。


【放送】
2023/06/02 「マイあさ!」

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23/09/29まで

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