ネットの“わな”「ダークパターン」がヤバい!

21/05/12まで

深よみ。

放送日:2021/05/05

#インタビュー#学び

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21/05/12まで

田中キャスター: この大型連休、外出を控え自宅でオンラインショッピングという方も多かったのではないでしょうか。コロナ禍でネット上での取り引きが急拡大するなか、世界中で「ダークパターン」と呼ばれる問題へ注意が呼びかけられています。「ダークパターン」とは何か。私たちはどう対処すればいいんでしょうか。
ネットメディアに詳しい、BuzzFeed Japan News副編集長、神庭 亮介(かんば・りょうすけ)さんに伺います。

【出演者】
神庭さん:神庭亮介さん(BuzzFeed Japan News副編集長)
田中キャスター:田中孝宜キャスター

オンラインサービスの“わな”「ダークパターン」

田中キャスター: さっそくなんですが、この「ダークパターン」、いったいどういうものなんですか?
神庭さん: ネットとかでお買い物をするときに、たとえば、「もうすぐ売り切れ! 残りわずか!」と表示されてついついクリックしてしまったであるとか、あるいは、品物を購入したあとに必要のないメールマガジンがジャンジャン送られてくるであるとか、サービスをやめたいのになかなかやめられないとか、こういった経験をされた方も多いと思うんですけれど、実はこれらすべて「ダークパターン」の可能性があるんです。
ダークパターンというのは、ユーザーを欺くオンラインサービスの“わな”。あの手この手でユーザーを無意識に誘導して、本来必要なかったものを買わせてしまう、お金を使わせてしまうしくみのことなんです。
田中キャスター: あの手この手、具体的にはどのような手口があるんでしょうか?
神庭さん: 代表的なものを3つ挙げますと、「誘導」「障害」「あおり」といった手口があります。

たとえば「誘導」に関して言いますと、単発の、これだけの商品購入だと思ったんだけれど、いつの間にか“定期購入”にさせれていて翌月もまた商品が届いた、であるとか、あるいは、小さな文字で「メールマガジンを希望する」と書かれていて、チェックボックスにチェックが入っているのに気づかないまま手続きをしてしまって大量のメールマガジンが届く。こういうものが「誘導」と呼ばれます。
次に「障害」なんですけれども、なかなかやめたいサービスの退会とか解約にたどり着けない、「本当にやめますか? 本当ですか!?」みたいな感じで未練がましく何度も何度も聞いてくる。中には電話を入れないとやめられないといったケースもあります。
もうひとつが「あおり」。これは、せかしたりじらしたりするものなんですけれども、宿泊予約サイトなどで「いま○人が閲覧中です」というふうな形で表示させて、「え、売り切れちゃうかも!」と焦らせて買わせる。他にも、通販で「いまなら○円だよ!」とお買い得価格を表示して、急にカウントダウンが作動して焦らせるとかいった手法。これも「あおり」ですね。
この「誘導」「障害」「あおり」以外でも、たとえば最後の最後に配送料とか手数料が加わって、「思っていたよりも高くなってしまったな…」とか、「(画面が)汚れてるのかな…」とホコリを払う感じで触ったら、それはミスクリックを誘うバナー広告で、気になってクリックしたら広告に飛ばされちゃいましたとか。そういったいろんなあの手この手があるんですね。

ダークパターンを注視する海外 “野放し状態”の日本

田中キャスター: これ、ラジオを聴いている方のなかにも、「あ、経験あるな!」と思っている人いると思うんですよね。ネット通販や旅行などの予約サイトでは経験するような気がします。実際、消費者には影響が出ていますか?
神庭さん: 国民生活センターによると、20年4月から21年1月末のネット通販に関する相談は約22万件で、前年同期より3割増えているそうなんです。これがすべてダークパターンではもちろんないんですけれど、ダークパターンがらみのものも含まれているとみられています。
田中キャスター: ただこれ日常よくあることで、正直、私自身もそうなんですが、あまり深刻に受け止められていないような気がするんですが、このあたりはいかがですか?
神庭さん: そうですね。あまりにもありふれ過ぎていて、我々も慣らされている部分があって、実は日本では野放し状態になっているんですが、欧米では規制とか消費者団体の反発が広がっているんですね。
たとえば、アメリカのカリフォルニア州では法律でダークパターンを禁止しています。ダークパターンで得られた承諾は「同意」とみなされないんですね。ワシントン州でも類似の法案が提出されているほか、ノルウェーではアマゾンプライムを「脱退しづらくしている」ということで、消費者団体が非難の声をあげたりしています。
一方、「日本はどうなんだい?」ということなんですが、日本ではほとんど規制されていなくて、日本経済新聞によると、国内の消費者向け主要サイトの「6割」でダークパターンが確認されたということなんです。 アメリカのプリンストン大学とシカゴ大学の調査(2019年)によると、アメリカ国内の約1万1千のショッピングサイトを調べて、ダークパターンの利用率が「11%」ということですから、この6割とうのはかなり高いんじゃないかなと思いますね。

ダークパターンを受け入れてしまう心理状態とは?

田中キャスター: 6割というのは確かに高いという気がしますよね。なぜ、日本では野放しのような状態になっているんでしょうか?
神庭さん: 2つあって、ひとつは「線引きの曖昧さ」、もうひとつは「企業モラルの甘さ」に(理由が)あるんじゃないかと思っていて、「線引きの曖昧さ」について解説させていただくと、ダークパターンっていうのは、行動経済学の「ナッジ」という手法を悪用していると思うんです。「ナッジ」ってそもそも何かというと、「そっと後押しする」という意味で、命令とか強制ではなくて、あくまで「そっと」人の行動を誘導するという行為なんです。
このOKとかNGの判断って結構むずかしくて、たとえば田中さんがどう判断するかお伺いしたいんですが、
「飲食店のイスをかたくして、居心地を悪くすることによって回転率を上げる」
こういった手法についてはどう思われますか?
田中キャスター: これは、イスで居心地を悪くすることで、「はやく出なさいよ!」とそっと言うわけですよね。あり得そうだと思う。これはとくに問題ではないような気がしますが…。
神庭さん: そうですね。お客さんからしたら、「ちょっと、なんだよ、やわらかくしてくれよ!」と思うかもしれないけれど、お店からしたら回転しないと売り上げは上がらないし、社会的に許されている範囲だと思うんですよね。
で、ちょっとネットに話を戻すと、たとえばメールマガジンを送る場合に、差出人って企業名より個人名のほうが開封率が上がると言われていて、さらに女性の名前のほうがより開封率が上がると言われているんですね。この開封率を上げるために、
「企業が“○○花子さん”みたいな架空のキャラクターをつくって、その名前でメールマガジンを送る」
これはどうか? これ、許されるか許されないか結構微妙なラインなんですけれど。
田中キャスター: ウソの名前、いや、架空のキャラクターか…。これも本当に曖昧ですけれど、でも、もらったほうはイヤですよね。
神庭さん: 「なんだ…」ってなっちゃう人もいるかもしれないし。結構曖昧なんですよね、どこからどこまでは許されるかは。これ両方とも実際にある事例なので。だから、この「ナッジ」とうのは、よく使えば人の行動をいい方向に導くことができるんですけれども、悪いふうに使うと、商売とかもうけのために悪用するということもできてしまって、オンラインサービスのダークパターンっていうのは、このナッジを悪用しているというふうに言えるのかもしれません。

まずは「ダークパターンかも?!」と意識 そして…

田中キャスター: コロナ禍で今後もネット上での取り引き、ますます増える傾向にありますよね。いま何が問われていますか?
神庭さん: 明確な境界線があるわけではないので、「どこまでがセーフで、どこからがアウトなのか」議論が必要だと思うんです。ただ、みんながモヤモヤしてて、「これ、あるよなぁ…」って思っていたことに「ダークパターン」っていう名前が付いてみんなが知るようになったことに意味があると思っていて、それによって、「ダークパターン、なくしていこうよ!」っていう方向に意識が向くようになってきたと思うんですね。
とはいえ、それだけではダークパターンはなくなっていかないので、実際には海外のように消費者保護のために法規制を強化していくことが重要なのかなと思います。
そして、企業の側も、「法律には違反してないんだし、いいじゃん」みたいな感じで邪悪な「ダーク」な手法を繰り返していると、消費者も慣らされているとはいえ、「さすがにやり過ぎではないですか?」「なんでメールマガジン、こんなに送りつけてくるんですか?」とそっぽを向かれてしまいますから、中長期的な企業の信頼ということを考えると、ダークパターンを徐々に減らしていくほうが企業にとってもプラスなんじゃないかというふうに思いますね。
田中キャスター: 私たち消費者はどう向き合えばいいですか?
神庭さん: まずは「知ること」。「ダークパターンというものがあるんだ!」と分かったことによって、今度から通販サイトにいったとき、「あ、これこれ!ダークパターンじゃん!」ということで気づくことができますよね。なので、まず「知る」ことが大事なんですけれども、気持ちとしては、性悪説じゃないんですけれど、テストの問題を解くときに、「これ、ひっかけ問題だな!」とか思いながら解くじゃないですか。通販サイトで買い物をするときも、「これ、ひっかけ問題じゃない? ダークパターンじゃないかな!?」みたいな、ちょっと疑いながらやる。そうやって頭を冷やしながら、「これ、本当に必要かな?」ということを考えつつ買い物をするのがいいんじゃないかなと思います。
田中キャスター: そうか、「これ、誘導の手口だ!」「あおりの手口だ!」っていうことを分かっておくことがまず大事だということですね。
神庭さん: 「ダークパターンの“クイズ”だ」と思って通販すると、楽しみながら注意深くできるかもしれませんね。


担当ディレクターより

これまで私自身、オンライン通販では、「欲しいものを教えてもらえて便利!」「わざわざお買い得な金額で買わせてくれる、なんと良心的!」と、むしろ感謝しながら注文の確定ボタンをポチポチしてきました。今回の放送を通して「ダークパターン」という“手口”がある、海外では国も消費者も大変きびしい目で向き合っていると知り、改めて過去5年分の購入履歴を全チェックしてみました(過去を振り返るなど一切ありませんでした)。結果、半分ちかくは、「これ、本当に必要だったの?」と不思議にすら思うもの、そして、現在どこにあるのか分からない、少なくとも今まで所在を意識してこなかったものが大半でした。
「ダークパターンという“手口”がある」、まずはここから。その上で過去の自分と冷静に向き合い、「これらは本当になくてはならないものだったの?」とひとつひとつ問いかけてみると、曖昧な線引きに自分なりのOK、NGラインが明確になってくる、そう感じました(5年分も振り返ると、似た過ちがいくつもありますので…)。
この機会に、自分なりの頭の冷やし方、楽しみながら考えてみてはいかがでしょうか(過去の履歴を振り返るのは意外と楽しいものです。費やした額さえ考えなければ…)。


【放送】
2021/05/05 三宅民夫のマイあさ! 深よみ。 「ネットの“わな”「ダークパターン」がヤバい!」 神庭亮介さん(BuzzFeed Japan News副編集長)

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21/05/12まで

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