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――味覚と嗅覚の異常は、新型コロナウイルス感染症の症状として報告されています。

三輪さん: 新型コロナウイルス感染症の初期の段階で、ある日突然味覚や嗅覚に異常が現れる人が多く見られたという報告が増加しています。
かぜの場合は、鼻水や鼻詰まりがあったあとに味覚・嗅覚の異常が起こるのですが、新型コロナウイルスの場合は、鼻の症状がなくても突然起こるといわれています。ただし、症状が現れる時期には非常に個人差がありまして、早く出る人もいれば、あとに出て後遺症として残る人もいるといわれております。

――三輪さんは新型コロナウイルスに感染した患者さんをみられたそうですが、どんな症状がありましたか。

三輪さん: 私が診察した患者さんは若い女性だったのですが、「においがこれまでと違って感じる」という症状に悩んで受診されました。
嗅覚障害が起こって3か月後に受診され、嗅覚は戻りつつあったのですが、「どんなにおいもマニキュアのようなにおいに感じてしまう」ということでした。この方はカレーが大好きなんですが、「カレーを食べても嫌なにおいがする」と、食欲が落ちて体重も減ったと嘆いておられました。

――食欲までなくなってしまうのですね。味覚や嗅覚の異常は、どれぐらいの割合で起こるのですか。

三輪さん: ヨーロッパの研究グループが発表した論文では、新型コロナに感染した患者さんのおよそ80%以上に味覚障害・嗅覚障害が現れたと報告されています。また、多くの論文では、50~90%というかなり高い確率で味覚障害・嗅覚障害が起こっています。
味覚障害・嗅覚障害は、ほかの原因でも起こるんです。ある日突然まったく思い当たる原因が何もないのに、急に味やにおいが分からなくなった場合は、新型コロナウイルスに感染している可能性もあります。こういった場合は、念のため周りの人への感染を拡大させないように、発熱などの症状がなくても感染を前提に行動すべきであると思います。

――急に味やにおいが分からなくなったら、今はまずコロナの感染を疑ったほうがいいのですね。
症状がある場合は、具体的にどう行動すればいいですか。

三輪さん: これまでの症例の報告を見ておりますと、味覚や嗅覚に異常があるからといっても、すぐに重症化することはありません
したがいまして、今までなかったような味覚や嗅覚の異常が急に起こった場合は、ただちに医療機関を受診するのではなく、まずは電話でお近くの相談窓口・相談センター、またはかかりつけのお医者さんに相談していただきたいです。

――コロナウイルス感染症そのものの治療が必要ですが、味覚や嗅覚の治療はどう行うのですか。

三輪さん: 残念なことに、コロナによる味覚や嗅覚の障害には、今のところまだ決まった治療はありません。自然に治るのを待つわけです。およそ7~8割の患者さんは、1か月ぐらいで自然に治っていくことが多いようです。すべての方が早期に回復するか否かは、これからの研究が必要となっております。
嗅覚障害が自然に治らない場合、意識してにおいを嗅ぐ「嗅覚トレーニング」が効果的であるという報告もあります。

――嗅覚トレーニングとは、どんな方法ですか。

三輪さん: ヨーロッパで最近注目されている方法ですが、もとは嗅覚障害の患者さんの嗅覚を治すための治療法でした。
ヨーロッパで行われている方法は、朝と晩の1日2回、4種類の、レモン・ユーカリ・バラ・クローブ(チョウジ)のにおいのエキスを十数秒嗅ぐこと。それでにおいを感じる細胞の再生を促すと考えております。

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