災害による家屋の修理など、生活上で突然発生する故障や不具合が起きたときには、どうしても慌ててしまいがちです。一方でその緊急性につけ込んだ悪質業者とのトラブルが多く報告されています。緊急時こそ気をつけたい「暮らしのレスキュートラブル」をテーマに、ITジャーナリストの三上洋さんに伺います。(聞き手:田中孝宜 キャスター)
【出演者】
三上:三上洋さん(ITジャーナリスト)
災害による家屋の修理など、生活上で突然発生する故障や不具合が起きたときには、どうしても慌ててしまいがちです。一方でその緊急性につけ込んだ悪質業者とのトラブルが多く報告されています。緊急時こそ気をつけたい「暮らしのレスキュートラブル」をテーマに、ITジャーナリストの三上洋さんに伺います。(聞き手:田中孝宜 キャスター)
【出演者】
三上:三上洋さん(ITジャーナリスト)
――台風をはじめ災害が起きたときにも悪徳商法などの被害が起きてしまう。災害への備えはもちろんですけども、災害後にも注意が必要なんですね。
三上:
そうなんです。近頃報告されているのが、“ブルーシート商法”ということです。
――“ブルーシート商法”ですか?
三上:
はい。台風などで屋根が飛んだり、浸水したりした家に悪質な業者がやってきて、「直しますよ」と高額な契約を結んで、例えば、屋根が飛んじゃった部分にブルーシートを応急処置のように張って、そのまま音沙汰がなくなってしまうということです。「市役所から頼まれてきました」と公的機関を装ったり、ボランティアと称して、「何か困っていることはありませんか?」と訪問したりして、頼んだあとに法外な料金を請求することもあるようです。
――災害時で余裕がなくなっているときですから、声をかけられたらつい頼んでしまうこともありそうですよね?
三上:
そうですね。緊急時なので焦ってしまいがちですが、まずは急いで対処しようとしない。きちんと見積もりを出してもらってから決めること。また家族とか、契約しているマンションの管理会社、不動産会社に相談するなど一人で決めないようにしてください。
――まずは即決しないということですね。
――向こうから、勝手にやってくる業者が危ないということであれば、自分で調べて、それから業者に依頼するほうが安全でしょうか?
三上:
ええ、それがですね、自分で調べて依頼する場合も注意が必要です。特に増えているのが、インターネットで業者を調べて自分で依頼するパターン。水漏れなどの水道トラブル、鍵をなくしてしまったときの鍵開け、それから最近増えているのが、車のバッテリー交換、レッカー移動の依頼といった、緊急時のロードサービスをめぐって高額な請求をされてしまうトラブルが出ています。
――インターネットで調べているのに、特にロードサービスのトラブルが増えているというのは、どんなトラブルなんですか?
三上:
はい。例えば、車のエンジンがかからなくなってしまったという依頼者が、ネットで検索して“基本料金3,480円”と書いてあるロードサービス業者に頼んだところ、基本料金はその料金だけれども「バッテリーテスター作業が8,000円です」と言われた。そして、実際作業してもらうと、「バッテリーが上がっている、性能が落ちているので、充電したほうがいい」とか、作業後に「お盆なので、特別料金がかかる」とか、「緊急対応費、祝日対応費が加算される」などと言われて、合計で7万円も請求されてしまったという事例が報告されています。
――ええー。
三上:
こういったトラブルの多くがですね、ネットで検索したロードサービス業者に依頼していて、まずは何があるかというと、若年層はネットで調べようというのがあるんですけれども、その若年層での被害が増えています。
――いや、まずネットで調べることって多いと思うんですけども、ネットで調べて3,500円ほどだと思っていた料金が7万円になるというのは、ちょっとびっくりしますよね。
――ネットで検索することがそもそもよくないということなんですか?
三上:
はい。これまず、インターネットの検索の仕組みを理解しておく必要があります。
――はい。
三上:
ネットで検索するときに出てくる業者、それから検索のときに上に広告が出てくるんですが、その広告は検索するキーワードによって、出てきます。例えば、<車のバッテリー 、出張>とか<タイヤのパンク、出張>といったキーワードです。広告を出す業者がキーワードを設定して、お金を運営会社に払うと利用者の検索と連動して、検索結果の上位に出てくるんですね。なので、検索して出てくる順番とその業者の人気や質、料金とは全く関係ないんです。また広告を出しているからと信用するのも危険です。
――ネット広告にも気をつけたほうがいいということですか?
三上:
はい、そうなんです。インターネット上の広告は、審査をされているものの、その内容や業者の悪質性までは、審査されていません。明らかに違法性があるとか、ヘイト表現がある、詐欺とわかるといったような明らかなものは別ですが、そうではない場合は、ほぼほぼ審査が通ってしまうというのが現状なんですね。
――何となく、広告が出ていると安心してしまったり、上の方に出てきたりすると「大丈夫かな」と思ってしまいますけども、それとは関係ないということなんですね。
三上:
そうですね。
――例えば、口コミを参考にするのはどうなんですか?
三上:
はい、これも問題が実はいくつも起きています。「比較サイト」というところに気をつけてほしいです。最近消費者庁から注意喚起しているのが、“ナンバーワン商法”というもので、例えば、ロードサービスや鍵開け業者を比較しているサイトで、「〇〇の調査で1位!」「〇〇のアンケートで、顧客満足度ナンバーワン」とうたっているところがあります。
――ありますよね。
三上:
そういった比較サイトの多くは、大体その会社が1位になるように仕組まれたアンケートだったり、無理やり1位になるようにと作られたものだったりします。その1位になっているリンクを押すと、業者を紹介している側、その比較サイト側にお金が入る仕組みになっているものもあります。たとえ、口コミや評価、比較が書いてあったとしてもあまり信用できるものはないです。
――「ネット検索、そしてネット広告や口コミにも慎重に対処しましょう」ということですね。
三上:
そうですね
――こういった広告やサイトって、規制はできないんですか?
三上:
消費者に誤解を与えるようなインターネット広告、これに対しては、国も規制を強化し始めています。実際に“悪質な誇大広告を出していた業者の名前を公表する”という動きも出てきました。ただ、そういった悪質な広告、悪質なサイトはあまりにも多くて、規制に引っかからないような巧みな表現で、サービスを宣伝していることも多いんです。以前のように、テレビや新聞、雑誌の時代であれば、このメディアに出ている広告だからと、一定の信頼感がありました。しかし、現状ではネット上のすべての広告やサイトを細かくチェックすることは難しくて、私たち、消費者自身がきちんと判断することが大事になってきています。
――だまされないように賢く業者を判断するにはどうすればいいですか?
三上:
なかなか難しいところです。目安を申し上げますと、緊急時に何か物を頼む、そのときに人(スタッフ)がその場に駆けつけて直してくれるもの、ロードサービスや鍵開けとか水道トラブル。このように人が来るものについては、おおまかな目安として金額が1万円を割るはずがないんです。というのは、人件費とか移動費、作業費用を考えれば、最低でも1万円、もしくは2万円、3万円しても、もともとおかしくないんです。
――はい。
三上:
1万円を割った金額で安さをアピールしている時点で、かなり疑ったほうがいいということです。もし、そういう緊急時に問題が起きたときは、すぐに対処しようとせずに、例えばその日はホテルに泊まるなどして、次の日にちゃんとした業者に依頼する方が、結果的に費用も安くなります。
また、こういった「暮らしのレスキュートラブル」っていうものは、必ず公の信頼できるサービスがあるんです。例えば、車であれば保険会社、もしくはJAFなどのサービス。水道トラブルや鍵開けならば、自分のマンションであれば、管理会社、戸建てであれば住宅メーカーなど、もしくは不動産会社ですね。こういった正当なルートを頼むことでトラブルを回避できる可能性がとても高くなります。
――緊急時ほど、まずネットで調べて慌てるというのは避けたほうがいいということですよね。
三上:
おっしゃる通りです。
――災害の備えとして、日頃から信頼できる業者はある程度ピックアップしておくほうがよさそうですね。
【放送】
2023/09/05 「マイあさ!」
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