子どもの自殺を防ぐため あなたにできる4つのプロセス

21/09/02まで

マイあさ!/三宅民夫のマイあさ!

放送日:2021/08/26

#インタビュー#子育て#家族

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夏休みが終わり、新学期が始まる時期に心配なのが子どもたちの自殺です。未然に防ぐためには専門家の力が必要と思いがちですが、私たち身近な大人だからできることがあるといいます。カウンセラーとして20年近く不登校の生徒などの声を聞く一方、「ゲートキーパー」を養成するNPOで講師を務める武隈智美さんに聞きました。(聞き手・小西政親アナウンサー)

【出演者】
武隈:武隈智美さん(NPO法人日本ゲートキーパー協会TOKYO 理事)

生きる人を支援する「ゲートキーパー」

――「子どもが悩みを抱えていたら助けてあげたい。でも、どう接していいかわからない」という体験があります。武隈さんは「誰もがゲートキーパーになれる」とおっしゃっていますが、ゲートキーパーとはどんな役割なのでしょうか。

武隈: ゲートキーパーとは、悩んでいる人のサインに気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなぎ、見守る人のことです。自殺対策では、悩んでいる人の孤立を防いで支援することが重要です。われわれの団体では「生きる人を支援する人」とお伝えしています。

――専門知識のない私たちにもできるのでしょうか。

武隈: できます! 身近な家族やご近所さんなど、ふだんの様子を知っている皆さんだからこそ、子どもたちのふだんとの違いにいち早く気がつくことができます。専門知識がなくても、日常生活の関わりの中でできることがあります。一方で「こういう接し方は控えてほしい」という注意点も、合わせてお伝えできればと思います。

入門編として皆さんにお伝えしているゲートキーパー活動の4つのプロセスがあります。それは「気づく」「声をかける」「話を聞く」、そして「見守る・つなぐ」です。

――4つのプロセスについて、私たちにできることを具体的にお聞きしていきます。

「気づく」=いつもと何かが違って見える

――まず「気づく」。新学期が始まるこの時期、子どもたちのどこに注目したらいいのでしょうか。

武隈: 皆さんは、ふだんお子さんと接している中で、何かはよくわからないけれど「気になる」と思った体験はないでしょうか。なぜ気になったのか。おそらく、何かがいつもと違って見えたからだと思います。「ことばではないサイン」です。

例えば、元気がなさそう・視線が合わない・顔色が悪く見える・服装がとても乱れている・汚れているなど。そこに気づいていただくことから始まります。最初のステップ「気づく」は、いつもと違うところに気づくということです。

「声をかける」=気づいているよというサイン

――心配な状況の子どもに、どんな声をかけたらいいのでしょうか。

武隈: なんと声をかけたらよいかわからず、「よけいな声かけではないか。間違えた声かけをしてしまったらどうしよう」などと、次に進むのをちゅうちょすることがあると思います。

よくある声かけとして、「大丈夫?」ということばがありますが、これはなかなか難しいです。中高生の子に「大丈夫?」とだけ聞くと、ほぼほぼ「大丈夫!」と即答で返ってきます。実はこの答えにはいろいろなメッセージが込められています。「今はまだ話せない」「心配かけたくない」「問題と思われたくない」などです。

そこでおすすめしたいのは、「大丈夫?」の後にメッセージを添えて声をかけるということです。「いつもより元気ないように私からは見えるけど、大丈夫? もしよかったら、話を聞くよ」「今でなくても、いつでも話を聞くよ」というふうにです。相手にこちらから橋を架けるイメージです。

――登下校を見守るご近所さんなど、話を聞くほどの間柄でない場合は?

武隈: 名前がわかれば、「〇〇くん、おはよう」「〇〇さん、いってらっしゃい」と、名前を添えてあいさつすることも大切な声かけです。もし気づきが間違えていたとしても、あいさつは相手へのメッセージとして十分届きます。子どもからのSOSを待つだけではなく、身近な大人から「あなたに気づいていますよ」という寄り添ったサインを出すことが重要なのです。

「話を聞く」=主人公はあくまで子ども

――「聞く」ことが特に重要ということですが、どんなことを意識すればいいですか。

武隈: 私たち大人には「子どもを助けたい」「何か手を差し伸べたい」という気持ちがあるかと思います。ただ、カウンセリングでは子どもたちからこういう声をよく聞きます。「大人は、言いたいことがあれば話をしなさいと言うけれど、僕たちの話を最後まで聞いてくれない」「指示や命令が多くて、自分の話ができない」などです。

そこでご提案するのは、まず耳を傾けてほしいということです。「傾聴」ということばがあります。話をしている主人公は、悩んでいる子どもです。インタビューのようにこちらが聞きたいことを聞き出すことが解決とは限りません。子どもから「この人は、私の味方かもしれない」と思ってもらえることが重要です。「話を聞く」、その時に意識していただきたいことは、相手、子どもが主人公だということです。

――声かけに反応がなかったり、何も話してくれなかったりすると心配です。

武隈: そういう時もありますよね。大人が「答えてほしい」と思った時というのは、まさに主人公が、子どもではなく大人の皆さんになっているのだと思います。「何も答えない」――これは、十分に答えていると思います。大事なのは、「こちらがいつでも聞くよ」というスタンスで相手に橋を架けていること。例えば、返事がなくてもあいさつはいつもすることも、その1つだと思います。

ただ、注意点もあります。これは過去に関わったご家族の事例ですが、子どもにいろいろと声かけをして反応がなかった保護者が、「見守ることが大事」と知り、何も声をかけず見守ることにしました。その結果、その子どもは私に「僕は見放されたと思う」と話したのです。

見守るということは、何も関わらないということではありません。相手を見ている、知っているなど、関心を持っていただく、ふだんの関わりを持ち続けることが大事です。

「見守る・つなぐ」=抱え込まずに相談を

――子どもと関わりを持ち続け、状況によっては専門家などにつなぐことが大事なのですね。

武隈: 状況が深刻に感じることがあったら、ご自身で抱えずに専門的なところに相談をしてほしいと思います。例えば、多くの市区町村が自殺対策の基本方針をホームページにあげています。ぜひ、ご自身の地域の情報に関心を持っていただけたらと思います。私たち「日本ゲートキーパー協会TOKYO」のホームページにも相談先などを公開しています。一人で抱えずに、つなぐための相談をしていただければと思います。

手の届く、目の届く、身近な人から

――4つのプロセスを実践する際に、大事なポイントがあれば教えてください。

武隈: 今、社会で「子どもたちにSOSを出してもらえるようにしよう」という取り組みが進められていますが、現実的には、自分からうまくSOSを出せる子どもというのはなかなかいません。専門家ではなく、ふだんから関わっている身近な大人である皆さんが、何気ない日常の関わりの中で、気づいて、あいさつなどを通して声をかけ、子どもの視点に立って話を聞き、見守る。そんな「ゲートキーパーマインド」を持った存在になっていただきたいと思います。

手の届く、目の届く、身近な人から接していきましょう。私たちも、身近な人を支える波紋を広げる活動を今後も続けてまいりたいと思います。

【放送】
2021/08/26 マイあさ!/三宅民夫のマイあさ! 「子どもの自殺を防ぐために 私たちにできること」武隈智美さん(NPO法人日本ゲートキーパー協会TOKYO 理事)

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