どうなる!? 高校で行う『金融教育』

22/04/14まで

マイあさ!

放送日:2022/04/07

#インタビュー#学び#経済

ざっくりいうと

  • 学習指導要領の改訂で、4月から高校の家庭科で金融教育が本格化
    「投資信託など金融商品の特徴」も学ぶことに
  • 証券会社や銀行など金融のプロによる出前授業も加えて金融リテラシーを学ぶ
  • 公民科とのコラボ授業で学習を深める

放送を聴く
22/04/14 7:40まで

放送を聴く
22/04/14 7:40まで

4月に入り、変わったことの一つが高校の学びの内容です。その中で注目を集めているのが、家庭科で行う「金融教育」。「投資」や「金融商品」についての学習もするということです。いったいどんなふうに学んでいくのか、現場の声を聞いていきます。

【出演者】
岩澤さん:岩澤未奈さん(東京都立国際高校家庭科教諭、杉野服飾大学特別講師)
頼藤さん:頼藤太希さん(ファイナンシャルプランナー、中央大学客員講師)
阿部:阿部渉キャスター
三好:三好正人アナウンサー(取材・構成)

家庭科で「金融」!?

阿部: 「けさの“聞きたい”」は、この春から高校で本格化する、ある授業についてです。皆さんは、こんな言葉が飛び交う授業、参加したことがありますでしょうか。ちょっと、お聞きください。

金融教育の授業(学生による寸劇)

男子学生: これはね、短時間で楽にお金を稼げる方法がね、載っているんだよ。
女子学生: えっ!? それ、だまされてるんじゃないの? えっ!? もう契約しちゃったの?
男子学生: うん。


阿部: いきなり聞くとびっくりしてしまいますが、これは、子どもたちが、高額な収入をうたう詐欺について寸劇で披露して、みんなで学んでいる様子です。都内にある公立の中高一貫校の授業ですが、今、こうした金融教育が各地の学校で行われています。

この4月からは、成人年齢が18歳に引き下げられましたので、特に高校生には必要な授業ですよね。今後は、詐欺被害だけではなくて、「投資」や「金融商品」の勉強も学校で深めていくことになるんだそうです。

この授業を担うのが、なんと「家庭科」なんです。どのように子どもたちが金融について学ぶのか、取材している三好正人アナウンサーとお伝えします。おはようございます。
三好: はい。おはようございます。
阿部: まず、家庭科で金融って、どういうことですか? 料理をして栄養を学んだり、裁縫の実習をしたりしたもんですけどね。

三好正人アナウンサー

三好: 阿部さん、確かに、かつてはそうでした。40代半ば以降、私もそうですが、男子学生は高校で家庭科がなかったので、より、そう感じると思います。でも今は、女性に限らず高校に家庭科はありますし、調理や実習だけでなく、家計を管理するという点で、保険や株についての基本的な考え方や、住宅ローンや年金といったことも含めて学んでいるんです。
阿部: 知らぬ間に、時代が変わって、高校で学ぶことも変わってきたんですね。
三好: はい。教員の指導方針を定めた「学習指導要領」というものがあるんですが、これが改訂されて、この4月から、高校の家庭科に「投資信託などの基本的な金融商品の特徴」ということも明記されました。投資をすることのメリット・デメリットも学ぶことになったんです。
阿部: いや、でも、投資って、簡単じゃないですよね。家庭科の先生が対応できるんですか?
三好: はい。私もそこが一番気になりました。日々変わる金融というものを、現場の先生たちは、どのように教えるのか、直接聞いてみることにしました。

伺ったのは、東京都立国際高校の家庭科の教諭、岩澤未奈さんです。高校で教えながら、大学の特別講師として、家庭科教員の育成にも携わってきた先生です。高校で教える金融について、こう話します。

岩澤未奈さん

岩澤さん: 基本的な、株と債権と投資信託と、まずリスクの考え方とかいうようなことは、今までも教科書にも載っていましたし、指導書など私たちが参考にするような文献にもありました。それから、証券業協会とか銀行の協会とか生命保険の協会とか、さまざまなところが、学校向けに教材を今まで開発して紹介してくださっていたので、そういうのを活用している先生もたくさんいらっしゃいます。ですので、新しい視点はどんどん勉強をしながら、皆さん知識を増やしていらっしゃるところかなというふうに考えています。
三好: さらに、岩澤さんによりますと、学校を超えて、家庭科の先生が集まって勉強会を開いたり、個人的に資産形成のセミナーに行って知識を深めたりもしているそうです。
阿部: なるほど。先生たちもがんばっているわけですね。でも、投資って、どうしてもよく分からないというか、恐いという感じがするんですけど、本当に学校現場で担えることなんでしょうか。
三好: 確かに、どこまで教えられるのか、どう教えるのか、不安に感じてしまう面もありますよね。そのあたりを金融のプロはどう見ているのか、ファイナンシャルプランナーで中央大学客員講師、頼藤太希さんの分析です。

頼藤太希さん

頼藤さん: 消費行動に関することとか一般的な家計管理であれば、知識はあると思うんですね。そこに関しては問題ないと思っています。だから家計管理の授業とか、収支改善の授業とか、そういうのは普通に教えられると思うんですけれども、投資に関しては、やっぱり弱いかなと思っています。投資は、やっぱり経験している人が少ないと思うんですよね。株とか債券に投資するというのは、たぶん、ほとんどやってないんじゃないかなと。そうなってくると、本質的な話はできずに、上っ面になる可能性が高いのかなと。

じゃあ、ここの対策をどうすればいいかという話になるんですけれども、ファイナンシャルプランナーとか税理士とかでもいいんですけども、そういった人たちに、出張授業とか動画配信をしてもらうというのでもいいのかなと思います。
阿部: お金の専門家にも、実際に教壇に立ってもらうということですね。
三好: はい。この点については、証券会社や銀行などのプロフェッショナルがボランティアで派遣されて、直接、生徒たちに教える出前授業がすでに行われています。そうした外部の力も借りながら、時代に即した金融教育を進めることになります。

教育現場で行う工夫の事例

阿部: ただ、いつもいつも外部に来てもらうわけにはいきませんし、ふだんの授業をどれだけ意味のあるものにしていけるか、問われますね。
三好: そうですね。その点がとても重要になってきます。しかも、現場の先生からは、「とにかく教える時間が十分に取りにくい」という声が聞かれます。というのも、これまで教えてきた衣食住についての学習や実習のほかに、金融教育として、例えば、金融商品を扱うメリット・デメリット、生涯を通してどのような見通しを持って資産を作るのか、教える内容は多岐にわたります。しかし、授業数が増えるわけではないんですね。いかに効率よく、中身の濃い授業にできるかが問われてきます。

そうした中で、生徒たちに、少しでも理解を深めてもらうように取り組んでいる事例も出てきています。
阿部: どんな取り組みですか。
三好: 先ほど、現場としての実感を伺った都立国際高校では、学習指導要領が変わるのを見据えて、4年前からある取り組みを行ってきました。それは、金融教育を家庭科だけで抱え込まずに、公民科とコラボレーションをして一緒に授業を進めるというものです。1つの授業の中で、家庭科の教員が、投資などによって将来の自分の資産をどう作るかを伝え、公民科の教員も登場し、そうした投資などが経済全体にどう影響するか教えます。このコラボによって、どれほどの効果が生まれるのか、家庭科の教諭、岩澤さんのお話です。

国際高校授業の様子

岩澤さん: 家庭科で、今までの授業の流れの中で、「お金は大切なものだから、計画的に大切に使わなきゃいけない。無駄遣いをしてはいけません」みたいなことをやって来たのに、「さあ、投資しましょう」というのは、すごく矛盾を感じるというか、生徒も混乱するような気がするんですね。

ところが社会の立場からいくと、自分で貯金でため込んでお金が社会に回らないというのは、景気が悪くなっていったり必要な事業が行えなかったりするから、「めぐりめぐって、自分たちの生活がよくなっていかないね」というような視点が入ると、「両方大事なんだな」というか、多角的にとらえられるというのがよりスムーズで、なおかつ、矛盾はしていないというか両立するものだという、それがすごく伝わりやすかったんじゃないかなと思います。
阿部: 少ない授業数でも、相乗りすることで理解を深めてきたんですね。こういう取り組みって、ほかの学校でも行われているんですか。
三好: 学校によってカリキュラムが異なり、家庭科に割く時間がさらに少ないところもあります。「どの学校でも簡単にできることではない」と、岩澤さんは話していました。実際に国際高校でも、各教科の年間の授業数は決まっていて、気軽にできることではありません。家庭科の時間に、公民科の先生がたまたま空いていた場合に特別に参加してもらって、実施してきたとのことです。

教科連携の必要性(常識にとらわれない)

阿部: ただ、こうした工夫をそれぞれの学校で、できる範囲でいいので進めていってもらえると、生徒にとっては学習の理解が進みますね。
三好: そうですね。そうした連携はますます求められると岩澤さんも話していました。そして、暮らしに密接している家庭科のような教科が、各教科と結びつくことは、生徒たちがこれからを生きていく上で、必要な力を養えると言います。

岩澤未奈さん

岩澤さん: 縦割りの教科を横につなぐのが家庭科かなと思って頑張っています。今までだったら、「家庭を保っていく、生きていくために、調理ができなきゃいけない」と言っていたのが、もっと広がって、自分の人生のいろんな場面で対応するために、家庭科の知識を育てなきゃいけないみたいな、本当にいろんな知識を組み合わせて自分なりの考えを表現するとかいうことが、今、求められているので、それができるのは家庭科かなと思っています。
三好: そして、中央大学客員講師の頼藤さんは、今後、金融教育がしっかりと根づくためには、これまでの価値観にとらわれず、柔軟に物事を見ていく必要があると言います。

頼藤太希さん

頼藤さん: やはりお金というのは、常にアップデートし続けているんですよね。新しいトレンドがすぐに入ってきます。

よく、「昔の常識は今の非常識」と言うんですよね。 昔、常識だったことっていうのは、「お金をためときなさい」ですよね。でも今、それって非常識じゃないですか。ということだったり、昔は「家を買っといたほうがいい」みたいな話が圧倒的に多かったけれども、今はリモートワークがオーケーになって、別にどこに住んでもいいじゃないですか。そうすると、購入するのが正解なのかっていうのも怪しくなりますよね。 それぐらい、お金のトレンドは激しく変わりますので、学び続けないといけないということですね。

これからの時代を生き抜く力に

阿部: お金の話ではありますけど、生活全般を見直すことにもつながりますね。
三好: そうですね。学校も家庭も固定観念にとらわれない考え方が求められ、難しい部分はあるかと思います。しかし、新型コロナウイルスの影響もあって、働き方が変わり、生活全体の価値観も、これだけ急速に変わる中です。この変化の波に合わせて、柔軟に教えることを積み重ねていけば、金融教育を根づかせ、子どもたちがこれからを生き抜く力を身につけることにつながるのではないかと、取材を通して感じました。
阿部: ここまで、この春変わった高校の学習指導要領、家庭科で行われる金融教育について、三好正人アナウンサーでした。

【放送】
2022/04/07 「マイあさ!」 けさの“聞きたい” 「どうなる!? 高校で行う『金融教育』」

放送を聴く
22/04/14 7:40まで

放送を聴く
22/04/14 7:40まで

この記事をシェアする