【マイあさ!】若者に広がる「市販薬の過剰摂取」

22/03/01まで

深よみ。

放送日:2022/02/22

#インタビュー#医療・健康#カラダのハナシ#ココロのハナシ#コロナウイルス

ざっくりいうと

  • 一時的な現実逃避・高揚感を求めて市販薬を規定より多く摂取しても、すぐに効果を感じられなくなり次第に過剰な摂取へ。内臓への影響が大きく、禁断症状も出てくる。
  • コロナ禍で居場所をなくした子どもたちが陥りやすい(ネットだけの情報で抵抗なく始めてしまう)。
  • もし身近な子どもがやっていると気づいても責め立てない。つらい気持ちに寄り添うことが大事。

放送を聴く
22/03/01 7:40まで

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毎月のように、今の社会の問題を深堀りしてきた、番組デスクの三好アナ。今回、注目したのが、今、若者たちに広がる、「市販薬の過剰摂取」。新型コロナウイルスの影響が長引く中、10代の若者たちの間で、市販薬を大量に飲んで精神的な苦痛を和らげようという問題が深刻化しています。なぜ市販薬に頼るのか、そして大人たちはどんなケアをする必要があるのか、考えます。

【出演者】
松本医師:松本俊彦さん(国立精神・神経医療研究センター 薬物依存研究部長)
小杉さん:小杉沙織さん(NPO法人「若者メンタルサポート協会」理事長)
三宅:三宅民夫キャスター
三好:三好正人アナウンサー(取材・構成)

市販薬の過剰摂取「オーバードーズ」とは!?

三宅: 今朝はまず、実際に大量の市販薬を飲んでいたという若い女性の声から聞いていただきます。はじめは20錠ほどをまとめて飲んだと言います。

市販薬を過剰摂取していた女性
「友達が飲んでいて、ふわふわするとか、嫌な気持ちを忘れられるよって言われて、それを見て自分も『ああ、こうなりたいな』と。薬が効いてきて、ふわふわし始めて、これ快感だなって思って、もっとやりたいなと」

三宅: 次第に飲む頻度が高くなっていきます。すると、効果を感じにくくなり、最終的には1回に100錠を超えるほどになります。激しい吐き気で救急搬送されてしまいます。

市販薬を過剰摂取していた女性
「本当に死んじゃうんじゃないかと思ったときに、死ぬときの恐怖が出てきて、なんで死にたいはずなのに恐いんだろうって、それで、もがき苦しんで」

三宅: この市販薬の過剰摂取を「オーバードーズ」、略して「OD(オー・ディー)」と言います。この冬、滋賀県で、女子高校生が薬物中毒で死亡した事件では、現場で、空になった薬のパッケージが大量に見つかりました。死因は「オーバードーズによる薬物中毒」と確認されました。

コロナ禍の今、オーバードーズをしてしまう若者たち、特に10代の子どもたちが多くなっています。子どもたちがどんな状況に置かれ、大人たちはどんな対応をする必要があるのか、取材をしている、三好正人アナウンサーとお伝えします。おはようございます。
三好: はい。おはようございます。
三宅: まず、100錠の市販薬なんて信じられない量ですよね。先ほどの女性の声もありましたが、具体的にはどんな状況になってしまうんですか?

三好:
とにかく、内臓が痛みます。特に、肝臓や腎臓への影響が甚大です。中には、取り返しがつかないぐらいの深刻なケースも、このところ多くなっています。

薬物依存の治療に詳しい、国立精神・神経医療研究センターの精神科医、松本俊彦さんに伺いました。具体的な症例をこう話します。

松本医師:
やって来たときに、すでに目の白目のところが真っ黄色になっていてですね。これ黄疸(おうだん)ですね。肝臓が悪いという兆候なんですけれど、それで慌てて血液検査をしたところですね。もちろん肝臓の障害も深刻だったんですが、もっと深刻だったのは腎臓の障害で、もうほとんどですね、体の老廃物を、尿ですね。おしっことして出すということができないような状況。もう直ちにですね、人工血液透析といいますか、機械を使って体中の老廃物がたまった血液を入れ替えなければいけない。そういう状態になった方もいました。

三宅: 聞いているだけで恐ろしくなってきますが、そんな状態になるまでやめられないものなんですか?
三好: 松本さんによりますと、市販薬の中には一時的に意欲が高まったり、不安感をおさえたりする成分が入っているということなんですが、飲み続けると効果を感じにくくなって、次第に量が増えていきます。しかも、依存性が強い成分もあるため、長く大量に飲んでいたのを急にやめると、激しい不安や焦燥感などの禁断症状が出てきます。そうなると、もう自分の意思ではどうにもできなくなってしまうということなんです。

なぜ、今、若者の間でOD?

三宅: この市販薬の乱用が、今、若者たちの間で、そんなにも広がっているんですか?
三好: はい。今、かなり広がってきています。データも出てきています。厚生労働省では薬物関連の患者がいる、全国の医療施設を調査しています。精神科医の松本さんはその研究班の責任者をしているんですが、最も新しいデータで見ると、10代の患者については、乱用した主な薬物は市販薬で、全体の半数を超えています。調査を重ねるたびに、10代では市販薬の乱用が増えているという結果が出ています。
三宅: なぜ若者たちの間で、今、市販薬の乱用が増えているんでしょうか?
三好: それだけ、一時的であったとしても、つらい気持ちから逃れたい、ということがあります。10代の若者たちを支援するNPOのところにも、ここ2年ほどで相談件数が倍になり、オーバードーズをしていると話す子どもの数も倍増しています。そこには、なかなかおさまらない新型コロナも大きく影響しているということなんです。

NPO法人「若者メンタルサポート協会」の理事長、小杉沙織さんは、こうした事例があると言います。

小杉さん:
例えば今まで普通のおうちだったんだけど、コロナになったことで両親のけんかが増えましたと。で、あるとき、部屋で勉強をしていたら、けんかしていた両親が部屋まで入ってきて、もとはと言えば、お前の学費のせいで、パパもママもこうなってしまったんだって言われてしまって、もうコロナでうちは崩壊です、とか、私のせいでこうなっちゃったんです、みたいに自分を責めてしまって、例えば自傷行為とかODだったり、つらい・死にたいってなってるみたいな子も増えているので、コロナ禍で、家庭内がピリピリしている親御さんたちが非常に増えている。そこに比例するように、子どもたちも居場所がなくてつらいっていう連鎖が起きているっていうのは、非常に感じる部分ですね。

三宅: コロナがこんなかたちで影響を及ぼすんですね。しかし、市販薬を大量に飲むことでつらさを解消しようなんて、なかなか思わないですよね。どうして、そういう手段にはしってしまうんでしょうか?

三好: その背景の一つに、SNSがあると見られています。NPOの小杉さんによると、インターネット上だけで関わりがある友達を「ネットモ」と呼ぶそうなんですが、コロナ禍の今、ネットモが心の支えになっているという子どもたちもいるそうです。
小杉さん: 家庭内に居場所がないし、学校でもうまく友達と会えなかったり、友達を作りたくてもうまくコミュニケーションがとれないみたいな子たちが、もう今すごくネット上で知り合った人、ネットモが助けてくれるとか、ネットモとしか最近話していないみたいな会話もあるぐらい、ネット上でのつながりっていうのは唯一の居場所になってたり、救いになってる子は非常に多いですね。
三好: 小杉さんによると、こうしたネットモから、オーバードーズの情報を得たという子どもがとても多いということです。そして、本当は、つらくてリストカットのような自傷行為をしたいけれど、それだと外見上に傷ができてすぐに親に知られてしまう。しかし、オーバードーズであれば、すぐにはわからないと思って、閉じこもった部屋でやってしまい、気づいたら大変な状況になってしまうということです。

どんな対処が必要か?

三宅:
こうした状況に、何か対処はできないものでしょうか? せめて、子どもたちが市販薬を過剰に手にしないように、規制したりはできないんですかね?

三好: 一部の市販薬については、厚生労働省が「1人1箱までの販売」というように制限していますが、覚醒剤のような違法薬物ではないため、手にしてしまう機会は多く、なかなか難しいというのが現状です。こうした状況について、精神科医の松本俊彦さんは、次のような提案をしています。
松本医師: 実は同じようなことは1980年代イギリスでもありました。若者たちが危険な成分が入っている市販薬を大量に摂取して自殺を図るということが非常に問題になったんですね。そのときに、製薬会社がですね。その市販薬1箱あたりに入っている錠剤の数を半分にしたんですよ。そしたら、若者の自殺や市販薬の乱用が減ったんですね。成分を変えるとなってくると、製薬会社にとってもまた新しいコストが生じてしまうんですが、1箱の中に、あるいは1瓶の中に含まれている錠剤の数を減らしてみてください、ということであれば、比較的負担が少なく、すぐにできることではないかなと思うんですね。
三宅: 製薬会社、そして国も、どうしていくか早急に対応する必要がありますね。一方で、実際、そういう状況に置かれた子どもたちに気づいたとき、私たちはどうすれば良いものでしょうか?

三好: 精神科医の松本さんによると、薬の影響ですごく疲れやすくなり、だるくて横になっている時間が増えてくるそうです。そうしたサインから、もしかしたらオーバードーズをしているかもと気づいたときに、注意することがあると言います。

松本医師:
あんまりうるさくダメダメって言い過ぎちゃうと、子どもたちがどんどん隠すようになっちゃうんですよ。だからもしも自分の子どもにそのような問題があったときには、もちろんそれはいいこととして肯定する必要はないけれども、何かつらい気持ちを抱えているんじゃないかというふうにとらえて、そのことも含めて病院に相談に行こうよっていうふうな働きかけをしてほしいと思うんですね。もう二度と飲まないで!約束して!ってすると、指切りげんまんして隠れてするっていうふうになっちゃうだけなんですね。

三好: また、10代の若者たちを支援するNPOの小杉さんも、子どもたちに向き合う姿勢が何より大事だと話しています。

小杉さん:
結局その子どもたちを見ていると、親御さんをみんな嫌いになっているわけではなくて、できればやっぱりお父さんとかお母さんに話を聞いてほしい。だけど、いつも忙しそうだったり、いつも怒っていたりして聞いてもらえないから、ネット上の人、というのが本心なんですよね。なので、何か怒られるんじゃないか、どうせまた何か言われるんじゃないかっていう、そういう恐れを持っている子たちに対して、何も怒らないし、何かあったら言ってほしいんだ、あなたの悩みに寄り添いたいんだっていう姿を、まず、子どもたちが本当に怒んないんだって信じられるような、そういう姿勢を親御さんが見せてほしいなって思うんですね。

三宅: 先が見えない中、大人が思っている以上に、不安や孤独に悩まされている子どもたちはいるのかもしれませんね。
三好: 今回、専門家の話を聞いていると、「親には心配をかけたくない」と、なんとか一人で不安と緊張を和らげようとしている子どもたちの孤独な姿が目に浮かびました。新型コロナの影響が長引いて大変な日々が続いていますが、毎日、少しの時間でも子どもの目を見て向き合って話をしているか、大人一人一人が見つめ直さないといけないと改めて感じました。

<追記>

番組放送後、たくさんの反響をいただきました。その中から、メールを1通ご紹介します。

<10代のころ、ODもリストカットもしました。そのとき、こんなに頑張っても、大人の社会って問題ばかりだし、学校の勉強ができても認められないし、生きる意味ないなってすごく不安定な気持ちでした。悲しさや不安は今もあります。でも、心療内科の先生に、全部大事な気持ちだよ、感じることで成長できるからと言われて、とても救われました。ODするときの気持ち、とてもつらいけれど、私は支えてくれた方々に恩返ししたくて、将来、そういう仕事につきたいと思っています>


【放送】
2022/02/22 「三宅民夫のマイあさ!」 深よみ。


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22/03/01 7:40まで

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