――味覚障害にはどういう症状があるのでしょうか。
三輪さん: | 味覚障害は「味が分からない」「味がおかしい」といった症状が現れます。生活に不便を感じている状態が出たときに「味覚障害」といいます。 |
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――味覚障害がある人は、どれぐらいいるのですか。
三輪さん: | 日本口腔(こうくう)・咽頭科学会が2019年に行いました調査によりますと、年間27万人以上が耳鼻咽喉科の医院や病院を味覚障害で受診しておられました。65歳以上の高齢者がおよそ半数を占めております。 |
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――味が分からない、おいしい食べ物をおいしいと感じられなくなるというのは、食べる楽しみがなくなってつらいことですよね。自分が味覚障害かどうかが分かる方法はありますか。
三輪さん: | 「味覚障害のセルフチェック方法」があります。 ・何を食べても味がしない、または特定の味がしない ・いつもと違う味がする ・いつも口の中が苦く感じる 3つのうち1つでも該当する場合には味覚障害の可能性があります。 |
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――「味がしない」「特定の味がしない」ということが、あるのですか。
三輪さん: | 徐々に味覚が低下している場合、自分では症状に気付きにくいこともあるのです。その場合、自分ではいつもどおり料理をしているはずなのに、周りの家族の方から「最近味付けが濃くなった」と言われて気付くこともあります。 |
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――無意識のうちに味を濃くしているわけですね。
「いつもと違う味がする」というのは、どういうことですか。
三輪さん: | たとえば、塩辛いはずなのに苦く感じたり、すっぱいもののはずなのに塩辛いと感じたり、本来の味とは違う味に感じてしまう症状であります。 |
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――3つ目は「いつも口の中が苦い」ということでしたが。
三輪さん: | 常に口の中に苦い感覚があって、ものを食べてもおいしくないという症状が出ることがあります。 |
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――これも嫌ですよね。
味覚障害は、新型コロナウイルス感染症の症状以外でも起こるのですか。
三輪さん: | 味覚障害の原因はさまざまです。 まずは加齢です。加齢によって、舌にある味蕾(みらい)の働きが低下します。味蕾は、甘味・酸味・苦味など味を感じるセンサーの役割を果たしております。加齢に伴い味蕾が減ることによって、味覚障害が増えるといわれております。 最も重要な原因としては、亜鉛の不足が挙げられています。味覚障害の半数以上の方が、亜鉛不足が原因だといわれております。 味を感じる細胞は常に新しいものに再生されているんですが、その際に亜鉛が必要です。亜鉛が不足することによって細胞が再生されないため、味覚障害が起こっているわけです。 |
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――亜鉛が不足するのはなぜですか。
三輪さん: | 原因として最も多いのは偏った食事です。そして、糖尿病や胃腸の病気で、吸収される亜鉛が減って亜鉛不足になることもあります。 |
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――亜鉛不足以外にも原因はありますか。
三輪さん: | たとえばかぜのウイルスや喫煙によりましても、舌の神経の細胞が壊れて味覚障害を起こすことがあります。 |
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――味覚障害は、どのように治療をするのですか。
三輪さん: | 味覚障害の原因を特定して、その原因に合わせて治療しています。 体内の亜鉛が不足している場合には、亜鉛の薬で補充したり、食事やサプリメントで補うこともあります。亜鉛は体内で作ることができないからであります。 |
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――食事で補う場合、亜鉛が多く含まれる食材にはどんなものがありますか。
三輪さん: | カキやホタテなどの貝類、わかめやひじきなどの海藻類、チーズなどの乳製品、干ししいたけ、牛肉、レバー、納豆、さらにはココアや抹茶などがあります。 |
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