放送を聴く
21/04/14まで

――においが分からなくなる嗅覚障害は、新型コロナウイルス感染以外でも起こることなのでしょうか。

三輪さん: いろいろな原因があります。
慢性副鼻くう炎(いわゆる「蓄のう症」)やダニや花粉などによるアレルギー性鼻炎などの鼻の病気がある場合、そして、かぜをひいた場合にも起こります。顔や頭をぶつけたあとにも起こります。
慢性副鼻くう炎やアレルギー性鼻炎がある場合は、鼻詰まりでにおいが分からなくなります。慢性副鼻くう炎やアレルギー性鼻炎は慢性の疾患ですので、原因に合わせた治療を行います。お薬によって早く治ることもありますし、手術が必要となることもあります。

――鼻が詰まってにおいが分からないのは経験がありますが、鼻の病気以外で嗅覚障害が起こる場合もありますか。

三輪さん: あります。年齢を重ねることによって嗅覚が低下します。ただこの場合、嗅覚障害というよりも嗅覚低下と呼ぶほうが正しいです。
嗅覚の低下は、一般に男性では60歳代から、女性では70歳代から目立つようになるのですが、少しずつ低下していきますので、ほとんどの方は自分の嗅覚が低下していることに気付いていません。

――嗅覚障害がありますと、日常生活にどういう影響が出ますか。

三輪さん: 嗅覚障害の患者さんを対象に行いましたアンケート調査によりますと、においが分からないことにより、食べ物の腐っているのに気付かない、ガス漏れに気付かないなどといった生活のリスクがあることが分かっております。煙のにおいを感知できなくなりますと、鍋を焦がしてしまうこともあります。

また、嗅覚と味覚は密接に関係しています。においが分からなくなると味を感じにくくなり、食事がおいしくなくなることがあります。そうなりますと、味付けをついつい濃くしてしまいがちになって、塩分や糖分のとり過ぎにつながることもあります。

さらに、認知症と嗅覚障害には深い関係があると分かっています。認知症を引き起こす脳の病変が、嗅覚に関わる神経細胞にも影響を及ぼすためと考えられています。
嗅覚が低下すると、将来的に軽度認知障害やアルツハイマー病を発症する可能性が高くなるという研究報告も出されています。

――嗅覚の低下や嗅覚障害は、自分では気付きにくいこともあるとおっしゃいました。どうしたら早く見つけることができますか。

三輪さん: 嗅覚障害を発見できるバロメーターがあります。それはカレーです。カレーのにおいが分からない場合は、嗅覚症があるとみて間違いありません。

――カレーのにおいが分からなくなったら、嗅覚に異常があるのですね。
年齢による嗅覚の低下を改善・予防する方法はあるのですか。

三輪さん: 残念ながら、現在のところ嗅覚低下を改善する方法というのはありません。しかし、予防する方法というのはあります。
まず1つには、週に3回以上汗をかく程度の運動をすることが嗅覚低下を予防するという報告があります。もう1つは、嗅覚トレーニングに予防効果があるという海外からの報告があります。

――嗅覚トレーニングを詳しく教えてください。

三輪さん: 朝と晩の1日2回、レモン・ユーカリ・バラ・クローブ(チョウジ)のにおいのエキスを十数秒嗅ぐものであります。においを感じる細胞の再生を促すと考えられています。
意識してにおいを嗅ぐことも嗅覚トレーニングになりますので、その場合は嗅ぐにおいは何でも構いません。
今回スタジオに、コーヒー・ハーブのローズマリー・ラベンダーの香りのアロマオイルを用意していただいています。においを嗅いでみてください。

――まずはコーヒー。香ばしい、深い、いい香りがします。ローズマリーは、すっきりしたフレッシュな香り。そしてラベンダーは、フローラルな、甘い、いい香りがします。
三輪さんは「香りは何でもいい」とおっしゃいましたが、特別なものを用意しなくても身の回りにある香りをただ連続して嗅ぐだけでトレーニングになるわけですか。

三輪さん: おっしゃるとおりで、意識して嗅ぐことが大事です。
例えば調理をするときににんにくのにおいを嗅いだり、カレーはにおいを嗅いでから食べたり、さらにお風呂につかるときには入浴剤のにおいを楽しむ、といった日常生活の中でにおいを意識して嗅いでいると、嗅覚が鍛えられます。
どうしても症状が改善しなくてお困りの場合は、耳鼻咽喉科を受診してください。

放送を聴く
21/04/14まで