選択的夫婦別姓について、「ほかの夫婦が同姓でも別姓でもかまわない」として「賛成」と答えた人は、合わせて7割を超えていることが最新の調査で分かりました。全国の20~59歳の男女、合わせて7000人の回答結果から、どのようなことが見えてくるのか。市民団体とともに調査を行った、早稲田大学法学学術院教授で家族法が専門の棚村政行さんに伺います。

【出演者】
棚村さん:棚村政行さん(早稲田大学法学学術院法学部教授)
三宅キャスター:三宅民夫キャスター


他人の別姓選択を許容できるか

三宅キャスター: インターネットを通じて行ったかなり大がかりな調査ですね。今回どうしてこういう調査を行おうと考えたのですか。
棚村さん: 30年以上前から、選択的夫婦別姓制度の導入に研究者として関わってきました。これまで内閣府が行ってきた調査ですと、60歳以上の回答する人が45%で、50歳未満は26.9%しかありませんでした。年齢層や男女の比率に少し偏りがあるこういう結果を、裁判ですとやっぱり「内閣府が行っている」という(理由で採用される)のですが、どうも調査が十分でないのかなという感じを持ってきました。
三宅キャスター: 今回の調査からどのようなことが見えてきたのか。ポイントは「選択的夫婦別姓への賛否」ということですよね。
棚村さん: 内閣府の調査ですと、「法改正をすべきか・すべきでないか」「賛成・反対」しか聞いていなかったんです。今回の調査では、「自分は同姓を選ぶけれども、ほかの人が別姓を選んでもかまわない」というふうに、自分と他人の区別、他人がやることを許容するかどうかも聞いた点が特色になります。その結果、選択制への賛成の人が70.6%と7割を超えました。自分もほかの人も同姓じゃなきゃだめだという「反対」は14.4%で、かなりはっきり賛成の人が増えていることが明らかになりました。
三宅キャスター: この数字、どう受け止めたらいいんでしょう。
棚村さん: 平成29年に内閣府が行ったものですと、賛成が42.5%、反対が29.3%ですけれども、「ほかの人が、別姓を選択しても同姓でもかまわない」という許容度は、かなり広がっているのは明らかです。ほかの新聞社等がやっている調査でも7割近くが賛成と答えるなど増えていますので、多くの人たちが選択制について賛成をしていることがはっきりしたといえるかと思います。
三宅キャスター: 許容してもいいという人が増えている。その背景を、どのように見てらっしゃいますか。
棚村さん: 共働きのご夫婦が7割に達していて、男性・夫も家事育児を平等に負担すべきだというのが、世論調査などでも8割以上になっています。グローバル化とかICT化とか日本の社会経済が変わるとともに、人々の意識もかなり大きく変化しているといえると思います。
三宅キャスター: 男女や年齢によっても、受け止めの違いは出ていますか。
棚村さん: 賛成の割合は女性がすごく高いんです。20~30代の女性ですと8割以上が賛成です。賛成の割合が一番低いのは40~50代の男性ですけれども、それでも6割近くが賛成と回答していますから、反対している人が比較的多い男性の40~50代でも賛成が上回る、という結果になっています。
三宅キャスター: 若い女性に賛成がとても多いのは、どうしてだと考えますか。
棚村さん: 若い人たちは働く女性が非常に増えていますので、結婚して姓を変える不都合や不便を肌身で感じたり、あるいは、同じように男女で働きながら姓も選べないのかということで、「なんでかな」と素朴に疑問に思う人が増えているということじゃないでしょうか。
三宅キャスター: 離婚などもありますものね。
棚村さん: そうですね。それで姓を変えるのにいろんな手続きをしなきゃいけないということについて、率直に問題を感じる人が増えたのだと思います。
三宅キャスター: 都道府県別でもデータを見てらっしゃるそうですね。発見はありますか。
棚村さん: 沖縄県、青森県、和歌山県で賛成の割合が高く、愛媛県、山口県、新潟県で比較的賛成の割合が低かったんです。賛成が反対のどの程度の倍率かという「賛否倍率」もとったんですけど、1位の沖縄では反対がほとんどなくて、10倍ぐらい、賛成が多かったんです。
沖縄県は離婚もすごく多いんです。離婚したあと女性が働いて自立しなきゃいけないとか、再婚したときに名前をいちいち変えなきゃいけないというので、悩む方も多いと思うんです。しかもほかのデータを見ますと、女性の社長率が全国で一番高いのも沖縄県で、女性が活躍している・活躍できる地域というのが、青森や和歌山もそうでしたけれど、割合が高く出ている、と。

逆に低かったところ、別に非難するわけではないんですけれども、愛媛県が一番低かったんですが、それでも賛成が反対の倍はいるんです。これはやっぱり地方の議会で女性議員の数が少なかったり、男性中心という考え方がかなり根強くあったり。こういうところを見ると、別姓への賛成・反対というだけではなく、女の方が意思決定できるかとか、LGBTへの理解や子育て支援に力を入れているのかとか、そういうことも見えてきました。

別姓を選べないと結婚できない

三宅キャスター: 棚村さんが気になる結果も出ているということですが、どういうことでしょうか。
棚村さん: 今回の調査で一番気にかかったのが、「別姓を選べないので、結婚を諦めたり事実婚に留まった方」が、全体で1.3%いたことです。7000人の調査ですから91人ということですが、別姓が選べなくて結婚できなかった中に、20代の男性が2.4%もいたことに非常に衝撃を受けました。
夫婦別姓を選べるか選べないかというのは、名前を変えなきゃいけない女性だけではなくて、男性にとっても、結婚できないという切実で大きな問題だということが明らかになったということになります。
三宅キャスター: いろいろ事情があるのかもしれないけれど、「名前が変えられないと結婚できない」って、どういうことですか。
棚村さん: 結局女性のほうが、96%ぐらいは夫の姓に変えざるをえない。そのために、「結婚できません」とか、あるいは事実婚というので夫婦として暮らしているけれども届け出は出せないということは、一般的に女性の問題だと考えられていたんです。でも実はその相手方である男性も、そのために結婚ができなかったり諦めなきゃいけなかったという数字が出てきたわけです。
三宅キャスター: 選択的夫婦別姓を巡る議論には、これからどういうことが求められているとお考えでしょうか。
棚村さん: 多くの人たちが、これまでは夫の姓を名乗り、夫婦が同じ姓を名乗り続けるということだったんですけれども、男女平等で男も女も関係なくしっかり社会を支えていくんだという中で、国会でも今、議論が非常に活発になってきています。生きやすい社会をできるだけ作っていくということで、議論していただくと助かります。
三宅キャスター: どういう社会が生きやすいのか、活発な議論が期待されるということですね。ありがとうございました。

より詳しく調査内容を知りたい方は<選択的夫婦別姓・全国陳情アクション>ホームページの47都道府県「選択的夫婦別姓」意識調査でご覧いただけます。