突然ですが、あなたはいつもどんな服を着ていますか? 会社に行く日はビシッとスーツ。運動するならスポーツウエア。デートに行くならワンピース? ライフスタイルや年齢、職業によっても選ぶ服は変わってきますよね。
では、国語辞典はどうでしょう? 同じ辞書をずっと使っていませんか? 国語辞典なんてどれも同じ! と思ってはいないでしょうか? 実は国語辞典には、それぞれ編者のこだわり、編集方針があって、一つ一つ違うんです。また、言葉の意味以外にもたくさんの情報が詰め込まれていて、さまざまな楽しみ方があるのです。
さあ、国語辞典を開いて、広くて深い言葉の海、言葉の波を乗りこなしましょう!
【出演者】
タツオ:サンキュータツオさん
柘植:柘植恵水アナウンサー
タツオ:
ごきげんよう。東北芸術工科大学、そして、漫才・米粒写経のサンキュータツオです。
柘植:
アナウンサーの柘植恵水です。
タツオ:
この番組をきっかけに国語辞典を買ってくれる人もいらっしゃるみたいですよ。
柘植:
うれしいですね。
タツオ:
新しい辞典を最低2冊は持ちましょう!
きょうも恒例の街頭インタビューからスタートです。もしもあなたが国語辞典ならこの言葉、何と説明しますか? 皆さんが何について説明しているのか想像しながら聴いてください。
- イカかな?
- バラがついているから花みたいな感じ?
- 南米の民族舞踊?
- 民族ぽい曲?
- 南国の鳥の名前?
- カクテル?
柘植:
知らない人がこんなに多いのって初めてじゃないですか?
タツオ:
カクテルも正解なんですが、今回こちらが求めていたのは「楽器」としての説明でした。
何についてたずねたのかといいますと、「バラライカ」でした。
柘植:
パフィーの『アジアの純真』の歌詞に出てきましたよね。
タツオ:
ほとんどの国語辞典にバラライカは入っています。だから知っておいたほうがいい言葉なんですよ。
柘植:
日常でバラライカなんて言ったことないけど、辞典には載っているんですね。
タツオ:
明鏡国語辞典 第三版には、撥弦(はつげん)楽器の一つ。ウクライナの民族楽器で、長い棹(さお)のついた三角形の共鳴胴に三本の弦を張り、指ではじくもの。とあります。また、三省堂国語辞典 第八版には、①ウクライナの独特の弦(げん)楽器。三角形の胴に三本の糸を張ったもので、指ではじいて演奏する。②ウォッカでつくった、カクテルの一種。と書いてあります。三省堂国語辞典はBARに行ってますね(笑)。
柘植:
民族衣装を着てバラライカを弾いているイラストも描いてありますね。
タツオ:
衣装の名前がルバシカとも書いてあります。説明されてもイメージができないものにイラストを載せるのはよくやっているんですよ。
柘植:
そうなんですね。
タツオ:
新選国語辞典 第十版は、木製の三角形の胴に、三本の弦をはったロシアの民族楽器。指ではじいて演奏する。木製という材質にも触れていて、伝統的な楽器ということがわかりますね。そして、ばっちりイラストも描かれています。
柘植:
こちらはバラライカだけのイラストですね。
タツオ:
岩波国語辞典 第八版は、ロシアやウクライナの弦楽器。ギターに似て、三弦で、胴は三角形。指ではじいて演奏する。と説明されています。そのほか、集英社国語辞典にもルバシカを着てバラライカを弾いている人のイラストがあります。
柘植:
こんなに辞典にイラストが出ているとは知りませんでした。
タツオ:
辞典のイラスト職人さんもいらっしゃるんです。辞書のイラストは、大きく描いて縮小して掲載するので、なるべく線がはっきり出るような絵を描くんです。三省堂国語辞典は、編者の一人としても有名な飯間浩明先生ご自身がイラストを描く場合もあるんですよ。意味を調べるだけじゃなく、イラストを描くのも国語辞典作りの一貫なんですね。
柘植:
すごいですね~。
タツオ:
国語辞典にイラストを載せるということは、それだけスペースが必要なんです。国語辞典は、なるべく短い語数で意味を伝えるので、スペースを使うイラストを載せるというのは、入れられる言葉の数が減るということを意味しています。しかし、どんなに言葉で説明してもイラストを見てもらったほうが早いもの、例えば、昔の建物(設計)などはけっこうイラストになっています。空間を説明するってけっこう難しいんですよ。やたら文字数がかかるので、そういうときにイラストが使われるんです。