【国語辞典サーフィン】不透明なことをわかりやすく

23/09/16まで

国語辞典サーフィン

放送日:2023/09/09

#学び#勉強#お笑い

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突然ですが、あなたはふだんどんなカバンを使っていますか? 買い物に行くならエコバッグ? 自転車に乗る日はリュックサック? 国内旅行はボストンバッグ? 海外だったらスーツケース? ライフスタイルや用途によって選ぶバッグは変わってきますよね。では、国語辞典はどうでしょう? 同じ辞書をずっと使っていませんか? 国語辞典なんてどれも同じ! と思ってはいないでしょうか? 実は国語辞典には、それぞれ編者のこだわり、編集方針があって、一つ一つ違うんです。また、言葉の意味以外にもたくさんの情報が詰め込まれていて、さまざまな楽しみ方があるのです。さあ、国語辞典を開いて、広くて深~い言葉の海、言葉の波を乗りこなしましょう!

【出演者】
タツオ:サンキュータツオさん
柘植:柘植恵水アナウンサー


タツオ:
ごきげんよう、サンキュータツオです。

柘植:
アナウンサーの柘植恵水です。タツオさんはこの春から山形の大学で教壇に立っていらっしゃいますけれども、学生のみなさんは夏休みですか?

タツオ:
今もたぶん夏休みですね。

柘植:
大学生は長いんですね。タツオさんも夏休みはあるのですか?

タツオ:
これといってないですね。会社員と違って芸人は仕事あってナンボですからね。皆さんは夏を満喫されましたでしょうか? きょうも国語辞典を開いて、言葉の波をサーフィンして楽しみましょう! ってどういうつながりなんだ(笑)。
まずは街頭インタビューからスタートです。街行く人たちにこんな質問を投げかけてみました。もしもあなたが国語辞典ならこの言葉、何と説明しますか? みなさんがどの言葉について説明しているのか想像しながらお聴きください。

  • 言語化、もしくは象形化すること。
  • 具体化する中で、文字とかでなく、グラフや図で表すこと。
  • 数値やデータとして表現すること。
  • 不透明なことを誰にでも分かりやすい状況にすること。
  • 可視化すること。

タツオ:
いろんな意見がありましたね。何だと思います?

柘植:
データ化とか具体化とか、ちょっとビジネス用語っぽい感じもしますね。

タツオ:
正解は「見える化」なんです。

柘植:
「見える化」ってここ数年ですよね?

タツオ:
柘植さんは使いますか?

柘植:
「業務の見える化」とか、文章では見るようになりましたが、日常会話では使わないですね。

タツオ:
この「見える化」は、辞書にもちゃんと載っている言葉なんです。そもそも「視覚化(可視化)」という言葉がありますよね。ふつう「〇〇化」という言葉は、「名詞化」というのが一般的なんです。例えば、明鏡国語辞典で「化」という漢字を調べると<名詞などについて>そのような性質・状態などに変える(変わる)意の名詞を作る。例えば「美化」「機械化」「自由化」「高齢化」「文庫本化」「全額自己負担化」「省エネ化」「グローバル化」と大体が名詞のあとに付くんです。

柘植:
ホントですね!

タツオ:
しかし、「見える化」は「見える」という可能形の動詞に「化」が付いているんです。将来的には「話せる化」とか「歩ける化」もできるようになるかもしれませんが、ここで重要なのは、なぜ「見える化」という言葉が生まれたのかということなんです。「可視化」と「見える化」は違うから残っているんです。

柘植:
「可視化」という言葉をわかりやすくするために「見える化」としたのかしら?

タツオ:
岩波国語辞典の第八版には、動向や問題点、計画などを、常に意識できるように視覚化して表示すること。「業務の見える化」と、ただ見えるようにするだけではなく、動きや問題点、計画などを意識できるようにという目的が示されているんです。また、三省堂国語辞典 第八版には、①情報を、だれにもわかる具体的な形にして示すこと。これは、どんな環境のどんな情報に触れている人でもわかりやすく、具体化するということが大事ということ。そして、②何がおこなわれているかが、だれにもわかるようにすること。これは、どのセクションで、何をやっているかというのを皆にわかるようにすることですね。明鏡国語辞典の第三版では、実態や情報などを客観的に把握できるように視覚化すること。可視化。と客観的な把握のこと。さらに、新明解国語辞典 第八版では、目で見て事態・状況が理解できるようにすること。可視化。特に、企業の業務や生産現場で進行・工程・現況・目標・課題などを視覚的に配置して誰もが見られるようにすること。と書いてあるんです。

柘植:
ずいぶん具体的に書いてあるんですね。

タツオ:
たとえば番組づくりの場合、台本を書く人、出る人、編集する人、録音をする人など、いろいろなセクションの人がいますよね。それを一元管理して、情報にアクセスすれば、誰がどの作業に入っていて、何パーセントまでできているのか知ることができます。

柘植:
見てパッとわかりますね。

タツオ:
コロナ禍のリモートワークで(自宅にいながら)仮想空間で職場を再現して、誰がどの業務に携わっているのかをネット上でわかるようにするのも「見える化」ですよね。このように生産現場の進行・工程・現況・目標・課題などが、一発でわかるというのはけっこう大事なことなんです。
そういう「可視化」と「見える化」のニュアンスの違いをくみ取って、業務、問題点、状況、目標、といったワードを国語辞典では入れているんですね。似たような言葉のちょっとした違いにこだわって、目的にあった言葉を使えたら、あなたも立派な国語辞典サーファーです。

国語辞典お悩み相談

先日、ステキな先輩と私と同僚の3人で焼き肉に行きました。先輩はイケメンで、グルメでステキなのですが、グルメ過ぎました。ワイワイ楽しみたかったのですが、先輩は「鍋奉行」ならぬ「焼き肉奉行」なんです。タン塩をひっくり返すタイミングとか、食べ方とか、そんなことばかり気をつかっていて、私たちの話なんてまるで興味なし。実は好きな先輩で、あわよくばと思っていたのですが、距離を縮めるのはやめたほうがいいかなと思ってしまいました。こんな私ってどうなんでしょう?(埼玉県 やっちんさん 30代)

タツオ:
お肉を一番おいしい状態で提供したいという先輩なりの責任感だったのかな? 今回は「鍋奉行」という言葉について国語辞典に相談してみました。「鍋奉行」は、ほとんどの国語辞典に入っているんですよ。

柘植:
そうなんですか!

タツオ:
「奉行」と「鍋」という言葉を知っていても、「鍋奉行」という言葉になると、1+1以上の意味があるので、そういう言葉は辞書に載せましょうということなんです。
三省堂国語辞典には、なべ料理を食べるとき、食材を入れる順序や食べごろなどを、あれこれとさしずする人。「そこをひっくり返して! 次この肉入れて! 野菜! 野菜!」とか。口で指図する人が奉行ということですね。明鏡国語辞典では、鍋料理を食べるとき、食材を入れる順序や食べ頃などあれこれと指図する人。新明解国語辞典には、数人で鍋料理を食べるとき、具材をいれるタイミングや食べ頃など細かく指示する人。指図とか細かく指示とかあるので、あまりよく思っていないのかな? やはり焼き肉とか鍋って人格が出るんですか?

柘植:
焼き加減とか、そこは各自でいいと思いますよ。

タツオ:
でもグルメの先輩ってどうなんだろう?

柘植:
グルメ過ぎず、おいしいお店を知っているくらいがいいですね。

タツオ:
「あそこの店はおいしかったよ」くらいならいいけど、「絶対にあそこのお店だから!」みたいな感じで主導権を取られるとちょっとうっとうしいですね(笑)。

柘植:
メニューも全部決められちゃって(笑)。

タツオ:
そんなゆるさを受け入れてくれない先輩を、やっちんさんは肌で感じたのかな?

柘植:
やっちんさん、もうすこし様子を見ましょうか。

タツオ:
こういう新しい視点で人柄を知るのっておもしろかったですね。国語辞典さんたちにもしっかり相談できました。ありがとうございます。

柘植:
番組では国語辞典にまつわるエピソードやタツオさんへの質問、お遊び企画のお悩み相談もお待ちしております。

タツオ:
国語辞典サーフィンそろそろお別れです。

柘植:
きょうは「見える化」でしたね。

タツオ:
焼き肉って作業工程が全部「見える化」されているよね。食材が出てくるところから、「焼けてるから早くひっくり返して!」ってゲームみたいな忙しい感じがあるよね。

柘植:
見える化し過ぎ! って感じですね(笑)。

タツオ:
それではまた国語辞典を開いて言葉の波を一緒に楽しんでいきましょう。

柘植:
お相手は、アナウンサーの柘植恵水と、

タツオ:
サンキュータツオでした。ごきげんよう。

国語辞典サーフィン

ラジオ第1 毎週土曜 午後0時45分

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2023/09/09 「国語辞典サーフィン」

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