9時台を聴く
24/07/01まで

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かみやまゆうまくん(小学3年生・愛知県)からの質問に、「心と体」の大日向雅美先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
大日向先生:大日向雅美先生(恵泉女学園大学学長)
上田先生:上田恵介先生(立教大学名誉教授/日本野鳥の会会長)
ゆうまくん:質問者


――お名前を教えてください。

ゆうまくん:
ゆうまです。

――どんな質問ですか?

ゆうまくん:
人間はなぜ他の動物たちと違っていろいろなものを作ろうとすることができるのですか? または、なぜ生活に必要なものを想像して作ることができるのですか?

――ゆうまくんは、例えば人間がどんなものを作ったのを不思議だと思いましたか?

ゆうまくん:
最初、お風呂とかなんで作れるのかなっていうのを思いました。

――確かにいろいろなものを作り出してきましたものね。これは「心と体」の大日向先生、お願いいたします。

大日向先生:
はい。ゆうまさん、おはようございます。

ゆうまくん:
おはようございます。

大日向先生:
ゆうまさんは、私たちが毎日使っているもの、当たり前のように使っているものを見て、この質問を思いついたのね。

ゆうまくん:
はい。

大日向先生:
それこそが、ゆうまさんの質問に対する答えの1つになるかなと思います。人間は確かにいろいろなものを作ってきましたけど、それは全て暮らしの中から生み出してきた、作ってきたもので、暮らしていく中で「お風呂はなぜ?」とか疑問を持って、その疑問を大切にして解き明かしてきた。さっき「天文・宇宙」の質問のときに国司先生が、「疑問を解き明かすことが科学です」とおっしゃったけど、私も同じことをお伝えしたいと思ってね。日頃の暮らしの中で起きてきた疑問を大切にして工夫してきたから、人間はいろいろなものを作り出せたと言えるかなと思うんです。

ゆうまくん:
はい。

大日向先生:
暮らしの中でなぜ疑問が起きてくるかというと、なんとかして快適に暮らしたいとか、一生懸命生きたいとか、安心して暮らしたいという気持ちが人間には根本的にあって、だから工夫するということだと思うんです。例えばお風呂もそうだけど、時間とか時計はどうしてできたのか、考えたこと、ありますか?

ゆうまくん:
うーん、ありません。

大日向先生:
あまりないかな。だけどゆうまさんの毎日の生活では、時間は大事じゃない? 学校に行くのに時計を見たりしますよね。ゆうまさんはスポーツはしていますか?

ゆうまくん:
はい。野球とかサッカーとか水泳とか。

大日向先生:
それは全部、野球は何回までに終わんなきゃいけないとか、サッカーとか水泳はタイムが大事よね。時計の歴史というのもすごくおもしろくて、最初は日時計から始まったの。日時計って、わかる?

ゆうまくん:
はい。

大日向先生:
お日さまの光で影ができる。それで時間を計ったりする。なぜ日時計を必要としたかというと、これは紀元前3500年ぐらいの大昔ね。

ゆうまくん:
うわっ。

大日向先生:
すごい昔でしょう? メソポタミア文明とか古代エジプトの時代にさかのぼるんだけど、農作物を育てるのにいつ収穫したらいいかとか、人間が生きていくために農業は大事だったので、時間とか季節を計るために日時計を発明したらしいのね。

ゆうまくん:
あぁ、そうなんですか。

大日向先生:
ところが日時計は弱点もあるじゃない? どんな弱点があるか、わかります?

ゆうまくん:
曇りのときには見えなかったりする。

大日向先生:
そう。雨が降ったり曇りのときは使えないでしょう? それで次は水時計。ギリシャでね、アテネの法廷で弁論するのに、時間を計るのに水を使ったの。バケツみたいなものに小さな穴を開けて、水がたれるので時間を計った。やがてろうそくとかランプの火を使ったり、砂時計を作ったり、そして今の機械式、ゼンマイ式で腕時計とか小型化するんだけど、その長い歴史の中で、先人たちがいろいろな必要性から時計を作ってきたんです。だから、ゆうまさん、ものづくりに興味があるんだったら、時計の歴史なんかも調べてみてくださるといいかなと思います。

ゆうまくん:
はい。

大日向先生:
ゆうまさんはもう1つ、動物と比べて「人間はなぜ?」って考えましたね。これもとても大切な着眼点なんです。大昔、今から300年以上ぐらい前は、人間と動物の違いは道具を使うか使わないかだ、道具を使うのは人間だけだと言われていたけれど、今はそうじゃなくて、いろいろなことがわかってきています。

ゆうまくん:
チンパンジーとか……。

大日向先生:
うん。きょうはお隣に「鳥」の上田先生がいらっしゃるので、違っていたらあとで教えていただきたいんですけど、キツツキという鳥、いますよね。

ゆうまくん:
はい。

大日向先生:
それは穴から虫をほじくるのに、特別な枝を使っている、と。

上田先生:
あっ、それはキツツキじゃなくて、ニューカレドニアにいるカレドニアガラスという、カラスの仲間です。木の中にカミキリムシの幼虫とかが潜っているでしょう? それを、トゲトゲを持つ木の葉を裂いて細い釣り針みたいな道具を作って、それで捕るんです。ゆうまくんの質問にあったみたいに、想像してものを作ることができるという、この形にすればこう使えることがわかっているという、ものすごい能力があるということで、最近このカレドニアガラスが注目されています。

ゆうまくん:
へぇ~。

大日向先生:
上田先生、ありがとうございます。鳥の名前を間違っていてごめんなさい。それで鳥もそうなんだけど、ものづくりの発展というのは動物と人間では大きく違っていることは事実で、そこはゆうまさんが考えてくださったのと同じなんだけど、「なぜ?」と考えたときに2つ理由があるかなと思うんです。1つは、人はいろいろな人と一緒に暮らしている、社会生活をしているから。もう1つは、2本足で手を使えるようになったことと、脳が重くて生まれてくるときの形態が他の動物と違っているから。この2つを、順にちょっとお話ししていきたいと思います。

ゆうまくん:
はい。

大日向先生:
まず、社会生活をするといろいろな人と交流するでしょう? 文化とか暮らし方とか、気候風土が異なる人とも交わって、自分たちになかったものに出会うと「こっちはいいなぁ」とかいうものを取り入れる。文化交流を通してよりよいものを作り、それが自分に便利なだけじゃなく、他の人にも喜んでいただける。さらには、だんだん貧富の差が出てくると、権力のある人がすごい工芸品を求めて命令して作らせたり、技術を持った人がそれに応えようとしたりお弟子さんができたりして、それは全部、人が人と暮らす文化の中で発展してきたということが1つ。もう1つは、それができたのは脳の発達のおかげなの。人間の脳は哺乳類の中で一番重いと、聞いたことはありますか?

ゆうまくん:
はい、あります。

大日向先生:
生まれたときの赤ちゃんの脳は何グラムぐらい?

ゆうまくん:
それは知りません。

大日向先生:
そうね。重いというのはよく言われているけど300~400グラムぐらいあって、他の哺乳動物とか類人猿の3倍ぐらい重たいんですって。

ゆうまくん:
重たいんですね……。

大日向先生:
そうすると、生まれてくるとき大変なのよ。ウシとかウマみたいに生まれてきてすぐ自分で立てればいいけど、大体1歳ぐらいの赤ちゃんにならないと、重たい頭を自分の足で支えて歩くことができない。だけど1歳ぐらいまでの大きさの赤ちゃんをおなかの中に入れていたら、お産できないじゃない?

ゆうまくん:
はい、そうですね。重すぎてできません。

大日向先生:
うん。おかあさん、大変よね。(もしもそんなふうにして)1人産むと、死に絶えちゃうんじゃないかと言われているの。だから赤ちゃんにとっては早めに生まれてくれるんです、1年くらい。

ゆうまくん:
あぁ……。

大日向先生:
そうすると生活習慣とかいろいろな暮らし方も、他の動物が生まれたときはもういろいろなことが全部決まっているけれども、人間は生まれたあとに学習することがとても大事なんです。長い時間をかけて学習する中で、文化の違いとかいろいろな先輩たちが作ってきたものを、「いいな」とか思ったり、疑問に思ったりして、ものを作ってきたということなのね。

ゆうまくん:
はい。

大日向先生:
最後にもう1つ、「もの」って言うと形のある物というふうに考えるかもしれないけれども、「無形文化財」って、聞いたこと、ありますか?

ゆうまくん:
うーん、ありません。

大日向先生:
あまり聞かないかな。でもね、日頃接していらっしゃると思うんだけど、例えば建物とか建造物、教会とか仏閣とかね。これは有形、形のあるものだけど、ユネスコが、これは毎年かな、無形文化財に登録してくれるのは音楽とか文化なの。日本からは「和食」なんかも無形文化財に登録されているのよ。浄瑠璃とか東北地方の風流踊(ふりゅうおどり)とかお祭り、これらは全部、形がはかないものかもしれないけれど、人が人と交わりながら作っていったもの。だから「もの」は形のある物だけじゃなくて、形がないものも人間は作ってきた。そこに、先人の知恵とか文化の交流、人の役に立ちたいということがあったということね。
でも最近、ものづくりがいいことばかりじゃないとも言われていて、人間が作ったものが環境を破壊するとかいうことにも警鐘が鳴らされていることは知っていますね?

ゆうまくん:
はい、知ってます。

大日向先生:
ものを作ることの原点は、なんだったんだろうか。よりよい暮らしとか人との関係性を大事にしながら、人間は人間の特性、脳の重さとか社会生活をしていくという特性を大事にしてきたから、これからも、文化とか私たちが生きている環境を大事にするためのものづくりって何かなということを、ゆうまさんがもう一歩、進んで考えてくださるとうれしいかなと思いました。

ゆうまくん:
はい。

――ゆうまさん、どうですか?

ゆうまくん:
よくわかりました。

――これからどんなものが生まれてくるかも楽しみですね。私は「どこでもドア」があったらいいなと思いました。ごめんなさい、次元が違って(笑)。ゆうまくんの発想、すてきでした。質問してくれてありがとうございました。

ゆうまくん:
ありがとうございました。

――さようなら。

ゆうまくん:
さよなら~。

大日向先生:
さよなら~。


【放送】
2024/05/06 「子ども科学電話相談」

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