9時台を聴く
24/06/30まで

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もりたうきさん(小学4年生・福岡県)からの質問に、「恐竜」の小林快次先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
小林先生:小林快次先生(北海道大学総合博物館教授)
清水先生:清水聡司先生(大阪府営箕面公園昆虫館 副館長)
成島先生:成島悦雄先生(元・井の頭自然文化園園長/獣医師)
うきさん:質問者


――お名前を教えてください。

うきさん:
うきです。

――どんな質問ですか?

うきさん:
モササウルスは、は虫類なのになぜおなかから子どもを産むのか、です。

――モササウルス……うきさんや恐竜好きな人たちは当然知っているんだろうと思いますけれども、小林先生にモササウルスの説明からお願いしましょうか。

小林先生:
いや(笑)。うきさん、おはようございます。

うきさん:
おはようございます。

小林先生:
モササウルスの説明をしてくださいと言われたんですけど、うきさんのほうから説明してもらいましょうか。どんな動物だっけ?

うきさん:
海に多い肉食動物。

小林先生:
海にすんでいた、どう猛な動物だよね。モササウルスは、は虫類。にもかかわらずおなかの中から赤ちゃんが生まれるのはなぜですか、と。まず生物がどうやって子孫を残すかということで、私たち哺乳類は赤ちゃんを産みますが、たぶんうきさんはそういうところから疑問を持ったと思うので、「動物」の成島先生、動物の出産というか、そんな話をお願いします。

成島先生:
はい、わかりました。うきさん、おはようございます。

うきさん:
おはようございます。

成島先生:
(モササウルスは)は虫類だから、普通は卵で産むと思うよね。

うきさん:
はい。

成島先生:
それなのにどうしておなかから(赤ちゃんが)生まれるんだろうと思ったと思うんだけど、おなかから生まれるのは哺乳類ですよね。哺乳類というのは、おっぱいを与える、哺乳をする動物の仲間を全部含めて言うわけです。ほとんどはおなかに子宮があって、そこで赤ちゃんが大きくなって、お母さんのおなかから子どもが出てくるという繁殖をするわけだよね。

うきさん:
はい。

成島先生:
でもね、哺乳類の中にも卵を産んで増える動物がいるの、知ってる?

うきさん:
知りません。

成島先生:
いるんだよ。「単孔類」というんだけど、カモノハシとかハリモグラのような動物ですけれども、ハリモグラなんかは、いくつかの動物園で飼育しているので見ることができると思います。哺乳類はおっぱいで育つので、単孔類もおっぱいで子どもが育ちますが、卵で生まれてくるのですごく原始的な哺乳類だと言われているんです。でも多くは、お母さんのおなかから生まれてくる。胎盤を持っていて、お母さん側の胎盤と赤ちゃん側の胎盤がくっついて栄養をもらって子どもが大きくなるという生まれ方をするんです。

うきさん:
うん。

成島先生:
魚は卵で生まれる、両生類も卵で生まれる、は虫類も卵で生まれるということですが、結構、例外もあるんです。哺乳類は基本的にはおっぱいで育つ動物だけれども、多くはお母さんのおなかの中で赤ちゃんが大きくなるという生まれ方をします。

小林先生:
成島先生、ありがとうございます。うきさん、虫はどうやって子どもを産むか、知ってる?

うきさん:
卵を葉っぱとかにつけて……。

小林先生:
うん。これは「昆虫」の清水先生に教えていただきましょうか(笑)。結構、複雑ですよね。

清水先生:
はい。うきさん、おはようございます。

うきさん:
おはようございます。

清水先生:
すいません、横からいろいろと(笑)。昆虫は、先ほど小林先生にお話しいただいたみたいに卵を産むのが普通なんですけれども、例えばこの時期から秋にかけてどんどん植物の若いところについて汁を吸っちゃう、アブラムシという虫、わかる?

うきさん:
はい。

清水先生:
アリマキね。今の時期はわりとメスばっかり出るんやけれども、あれはおなかの中で子どもがかえってしまって、「胎生」といって卵を産まずにどんどん子どもを産んでしまう昆虫もいます(*後半で訂正あり)。あとゴキブリは……あっ、ゴキブリ、わかる?

うきさん:
はい。

清水先生:
おうちに出たりする(笑)? 普通は、茶色いハンドバッグみたいな容器に卵をたくさん詰めて産み落とすイメージがあるでしょう?

うきさん:
はい。

清水先生:
でもゴキブリは「卵胎生」といって、意外とおなかの中で卵をかえして幼虫を産み落とす。正確に言うと、いったん卵を外に出して、「育児嚢(いくじのう)」という卵をかえすための袋を持っているんだけれども、そこに戻してそこでふ化させて卵を産み落とすという”偽卵胎生”、似た卵胎生みたいな感じかな。そういうのもたくさんいます。

うきさん:
ふぅん。

清水先生:
おなかの中で卵をかえすのを「卵胎生」と言うので、卵を産む卵生と、卵胎生、”偽卵胎生”、胎生と、いろいろなものがあります。

小林先生:
うきさん、難しいね。

うきさん:
はい。

小林先生:
今、先生たちに答えてもらったように、哺乳類だから赤ちゃんを産む、哺乳類だけが赤ちゃんを産むというのではなくて、実はいろいろな動物がおなかの中で卵をかえしている。もっと言えば、おなかの中で赤ちゃんを育てて産む、胎生というのがあるということです。まずおさえておくと、卵を産むのを卵生といいます。そして赤ちゃんで産むのを、胎生といいます。実はおなかの中から赤ちゃんを産む動物はいっぱいいるのよ。サメも、おなかの中で赤ちゃんをかえしておなかの中でミルクをあげて、そして育てて赤ちゃんとして産む。そういうことが結構あるので、いろいろな意味で見てもらうといいと思います。

うきさん:
はい。

小林先生:
質問のモササウルスに関しては、アメリカのカンザス州からクリダステスという化石、赤ちゃんの化石が見つかっているのね。ものすごく小さいです。

うきさん:
へぇ~。

小林先生:
モササウルスは、ウミガメのように砂浜に上がって卵を産んだでしょうか? というのは、ウミガメは海にすんでいるんだけど、産卵期になると砂浜に上がって卵を産むのを、見たことあるよね。

うきさん:
はい。見たことあります。

小林先生:
モササウルスは、そこまでできなかった。体もでかいし、体の構造上も、はい上がっていけなかった。赤ちゃんの化石もカンザス州から見つかっています。大人になると3メートルぐらいなんだけど、50センチぐらいのかわいいモササウルスの赤ちゃんが見つかっていて、赤ちゃんとして産んでたんじゃないかというのがあります。

うきさん:
へぇ~。

小林先生:
もうちょっと言うと、ヘビとかトカゲは20%ぐらいは胎生で、赤ちゃんで産むのがいます。

うきさん:
へぇ~。

小林先生:
胎生というのが実はトカゲとかヘビの中で、僕らは「収れん進化」という難しいことばを使うんだけど、100回以上そういうのが進化していて、必ずしも卵で産むのがは虫類の特徴ではないです。赤ちゃんを産むのも哺乳類だけの特徴じゃないので、哺乳類は必ず赤ちゃんを産むという考え方を、ちょっと捨てたほうがいいかなと先生は思うんですよね。

清水先生:
……あの、ごめんなさい。ちょっとさっき、僕、アブラムシを胎生と言っちゃったかもしれないけど(前半*の部分)、アブラムシは卵胎生です。ごめんなさい。

うきさん:
あ、はい。

小林先生:
なのでヘビとかトカゲは実は胎生も結構いるんです。さて、うきさん、問題です。モササウルス類は、今生きている、ある、は虫類に近いと考えられています。3つのうち、どの、は虫類に近いでしょう。A・ワニ、B・ヘビ、C・トカゲ。

うきさん:
トカゲ。

小林先生:
まぁ、トカゲなんだけれども、その中でも一番近いとされているのはヘビの仲間だと言われています。

うきさん:
ふぅん。

小林先生:
だから、ヘビを見たらモササウルスだと思ってもらっていいと思うんだけど。

うきさん:
ふふっ。

小林先生:
さっき言ったみたいに、ヘビもトカゲも卵を産むのがほとんどなんだけれども、結構赤ちゃんで産んでいるので、モササウルスも胎生というかそうやって赤ちゃんで産みます。なんで赤ちゃんで産むのかは結構いろいろな説があって、例えば寒い環境であったり、そういう季節のために卵で産むと赤ちゃんが死んじゃうのでおなかの中で産むというのが、トカゲとかヘビでは言われたりします。モササウルスも卵を海のどこに産むのかという話じゃないですか。卵がおぼれちゃうので。なので、おなかの中で赤ちゃんを産んだんじゃないかという説があります。

ただ絶対にモササウルスが赤ちゃんで産んでいたのかはまだ実証されていないんだけれども、魚竜なんかも出産途中のやつが化石になったりしているんです。赤ちゃんを産む状態で化石になっていたりするんですよ。魚竜という、モササウルスとはまた別の海生は虫類も赤ちゃんで産んでいたりするので、モササウルスも赤ちゃんで産んでいてもおかしくないかな。なぜかというと、やはり子どもをちゃんと安全に出産するため。それは私たち人間と同じですね。赤ちゃんをおなかで育てて健康な赤ちゃんを産むということを、モササウルスもしていたということです。いいかな?

うきさん:
はい。あの……トカゲが海に入って進化したのがモササウルスなんですか?

小林先生:
トカゲというかヘビなんだけど、ヘビが海に行ったわけではなくて、ヘビとモササウルスの祖先が同じだということなので、ヘビのおじいちゃん・おばあちゃんのもっとすごい昔の生き物と、モササウルスのず~っとさかのぼった祖先が同じだということです。ヘビが海に入ったわけではないです。

うきさん:
ありがとうございます。

――ず~っとたどっていくと、同じ祖先だった?

小林先生:
そうですね。モササウルスがヘビと近いのは意外に知られていないんです。

――見た目は全然違いますものね。うきさん、こうじゃないかなって仮定しながら、いろいろ考えてくれましたね。どうでしょう、わかりましたか?

うきさん:
はい、わかりました。

小林先生:
ちなみに、みんな勘違いするといけないから、モササウルスは恐竜じゃないということを、ひと言、言っておきます。うきさんはわかっているよね。

うきさん:
わかってます。

小林先生:
すみません、一応確認です(笑)。

――うきさん、質問してくれてありがとうございました。

うきさん:
ありがとうございました。

小林先生:
ありがとうございます。

――さようなら。

うきさん:
さよなら~。

小林先生:
さよなら~。


【放送】
2024/05/05 「子ども科学電話相談」

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