11時台を聴く
24/06/16まで

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せきてんせいくん(小学3年生・北海道)からの質問に、「水中の生物」の林公義先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
林先生:林公義先生(北里大学海洋生命科学部講師)
てんせいくん:質問者


――お名前を教えてください。

てんせいくん:
てんせいです。

――どんな質問ですか?

てんせいくん:
タコやイカの墨と書道の墨は何が違いますか? また、タコの墨で字は書けますか?

――タコの墨で字! 書いてみたいですねぇ、おもしろい質問ですね。タコの墨のことは、本で読んだりテレビで見たりしたんですか?

てんせいくん:
はい。

――どんなものから情報を得たのかな?

てんせいくん:
タコは墨とかのイメージが強かったので。

――どうなんだろうと思ったわけですね。では林先生、お願いします。

林先生:
はい。せきてんせいくん、こんにちは。

てんせいくん:
こんにちは。

林先生:
書道やってるの?

てんせいくん:
やってません。3年生で書道が始まります。

――学校の授業で始まるんですね。

林先生:
あぁ、そうですか。実は余計なお話なんだけど、僕も墨を使った芸術をやっているんです。水墨画っていうの。てんせいくんも、もし興味があったらやってみてくれる?

てんせいくん:
はい。

林先生:
えーっと、質問ですが、ひらがなで書くと「すみ」っていうことだから全く同じだよね。漢字で書くと書道でもって使う墨はちょっと難しい字なので、今度時間があったら辞典で調べてみてくれる?

てんせいくん:
はい。

林先生:
タコやイカの墨も、同じ漢字なんだよね。もう1つ、「すみ」で思い出すもの、何かない?

てんせいくん:
木が燃えた炭?

林先生:
そのとおり! 漢字だと「山」の下に「灰」という字を書くよね。てんせいくんの質問というのは、何が違うか、ということでしたよね。

てんせいくん:
はい。

林先生:
まず、書道の墨とタコやイカが出す墨は作り方が違うんです。書道の墨は誰が作るかというと、人が作るんですね。それを、使う人がいるということです。タコやイカの墨はタコやイカ自身が作っているということで、誰かが作ったものをタコやイカが墨袋にためるのではなくて自分で作り出すということですから、そこに作り方の違いがありますね。

てんせいくん:
はい。

林先生:
もう1つ、作られた墨は成分が全く違います。書道で使う墨の成分とイカやタコが自分で作っている墨の成分は全く違います。ですからてんせいくんの質問には、作り方と成分の違いについて2つ説明したいと思いますけど、よろしいですか?

てんせいくん:
はい。

林先生:
まず、そもそもの墨なんだけれども、江戸時代だとか古い時代にさかのぼって考えてみても、作り方は現在でもほとんど変わっていないんです。ある器、これは土で作った器が一番いいと言われているんですが、その中に油を入れます。ナタネ油とかゴマ油、キリの油、ツバキ油、こういう油が使われます。これらは全て植物から取る油で、それを器に入れて、そこに「灯芯」といって……ろうそくは知ってますか?

てんせいくん:
はい。

林先生:
ろうそくの真ん中に、ひもみたいなものが出ているでしょう? あれを灯芯というんですけれども、墨を作るときの灯芯は、和紙、日本の紙ですね。その和紙を木にくるくる巻いて、その木をすぽんと抜いてろうにつけると、中が空洞で和紙のストローみたいなものができますよね。それを油の中に置いて、和紙のストローのところに火をつけると中に空気が通るから燃えるわけです。

てんせいくん:
うん。

林先生:
すると炎が出ますよね。油ですから、その中に入っている物質が燃えて煙となって出てくるんです。その煙が、ふたのようなものでカバーするとどんどんふたについていって、そこに黒いすすができるんです。「すす」ってわかるかな?

てんせいくん:
黒いもやみたいな……

林先生:
そうだそうだ! うん、わかってるね。例えば昔は、お風呂を沸かすときに外でまきをくべて火をつけてお湯を沸かしたんだけど、熱はどこから出ていくかというと煙突から出ていって、屋根のほうに出ている煙突の中が、掃除しないといけないぐらいすすが真っ黒にたまるでしょう? 実は書道の墨のもともとになる成分というのは、そのすすなんです。

てんせいくん:
そうなんですか。

林先生:
うん。そのすすに水を混ぜて少しやわらかくする。それだけではただ溶けただけになってしまうので、そこにね、「ゼラチン」は知っていますか?

てんせいくん:
ゼリーとかに使う?

林先生:
そうです。ゼラチンというのは、動物の骨とか皮とか腸だとか、最近は魚の浮き袋も使うらしいんですけれども、それをぐずぐず煮て冷やすとゼラチンができます。

てんせいくん:
へぇ~。

林先生:
それを墨を作ったり他の方法で使うときは、「にかわ」と呼ぶ一種の接着剤になるんですよね。このにかわを、すすと水を混ぜた中に入れて、おもちのようにしてぐるぐるひねって、手で押しておだんごを作るようにしていきます。そうしてそれを木の型にはめて、要するに墨は何か長方形の形をしているでしょう?

てんせいくん:
はい。

林先生:
あの形の箱や、または石で作った型に埋めて乾燥させたものが墨なんです。だから書道の墨というのは、炭素のたまったもので1つの「結合体」というんだけど、もともとは粉末であるすすです。そういうものから作っています。

――それが本来の作り方ということですね。

林先生:
はい。それで実は高い墨と安い墨があるじゃない? 高い墨というのは、「松煙(しょうえん)」といって、マツの木は「松やに」というのがあるくらい油がありますよね。あの油を使って、マツを燃やしたときにできるすすを取って作る墨というのが、ものすごく高いし時間もかかるんです。

てんせいくん:
そうなんですね。

林先生:
僕たち、私を含めて、てんせいくんも書道のときに使う墨はそんなに高い墨は使えないから、植物油で作った、値段でいうともう少し安いほうの墨でいいわけなんだけど、作り方はそういう方法で全く同じです。

てんせいくん:
はい。

林先生:
さて、タコやイカの墨ですが、これは自分の体の中に墨袋というのを持っていて、その墨袋の中に、体液の中から出るすごく粘りの強い成分、炭素ではなくメラニン色素の入った液を作り出します。「メラニン色素」ってわかるかな。人間の髪の毛の……

てんせいくん:
黒とか?

林先生:
はい。あと目の、瞳の黒い部分だとかはメラニン色素です。ほくろの黒いのもメラニン色素です。これが実は成分になっています。墨袋の中のその成分に海水を混ぜてぷっと吹き出すのが、タコやイカの墨です。

てんせいくん:
そうなんですね。

林先生:
そうなんです。だから炭素と、アミノ酸だとかカオリンとかオルニチンだとかグルタミン酸のような栄養分も入っているメラニン色素の液とは、全く成分が違うわけね。ここまでわかりましたか?

てんせいくん:
はい、わかりました。

――先生、絵や字が書けるかというのはどうですか。

林先生:
あっ、そうそう。実はタコよりイカのほうが、墨にたくさん粘りけがあって多いんです。

てんせいくん:
そうなんですね。

林先生:
ですからタコから墨を取るというのはなかなか難しいくらい小さな袋で、液もものすごく薄いんです。水の中に入れるとばーっと散ってしまうぐらいです。だから瞬間的にタコの天敵を脅かすという感じ。ところがイカの墨は、はくとどろっと長く糸状に伸びたりして、まるでイカがもっとたくさんいるように見えることもあります。実はこのイカのインクを使って、茶色い絵の具だとか彩色インクが作られています。

てんせいくん:
そうなんですね。

林先生:
「セピアカラー」って言うでしょう? あれはイカの墨から作っています。

てんせいくん:
へぇ~。

――イカを丸ごと買ってきて、おうちの人とやってみてもいいかもしれませんね。

林先生:
そうですね。ネットで調べると、セピアのインクの作り方も出ているので、是非そういうところも研究してやってみたらいいと思います。

てんせいくん:
はい。

――質問してくれてありがとうございました。

てんせいくん:
あの、もう1つ、いいですか?

林先生:
はい。

てんせいくん:
イカとかタコの墨のにおいとかはどんなにおいがするんですか?

林先生:
においはほとんどないですね。

てんせいくん:
くさくないんですか?

林先生:
はい。書道で使う墨ににおいがあるのは、ショウノウという香料を入れているからです。

てんせいくん:
へぇ~。

――てんせいくん、質問してくれてありがとうございました。

てんせいくん:
ありがとうございます。

林先生:
どうも~。

――さようなら。

てんせいくん:
さよなら~。


【放送】
2024/04/21 「子ども科学電話相談」

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