11時台を聴く
23/11/05まで

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たかおかゆらさん(小学1年生・愛媛県)からの質問に、「心と体」の篠原菊紀先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
篠原先生:篠原菊紀先生(公立諏訪東京理科大学教授)
ゆらさん:質問者


――お名前を教えてください。

ゆらさん:
ゆらです。

――どんな質問ですか?

ゆらさん:
「なんで勝ち負けがあるのか」が、知りたいです。

――ゆらさん、どういうときにそう思ったんですか?

ゆらさん:
勝ち負けがあるとイヤになるから、負けたときとかになんで勝ち負けがあるのか知りたくなって、勝とうとして頑張りすぎて疲れることが多い、ですね。

――負けたらくやしいし、勝とうとして頑張ると疲れちゃうし、ちょっとわかる気がしますねぇ。篠原先生、お願いいたします。

篠原先生:
はい。ゆらさん、こんにちは。

ゆらさん:
はいっ、こんにちは。

篠原先生:
すごいねぇ。「勝ち負けなんて当たり前にある」と思わないで、なんで「勝ち負けがあるの?」というふうに思ったんだね。

ゆらさん:
えー、だってさぁ、負けると、なんかピタゴラ装置みたいなのを作ってて、それまでコロコロッとビー玉を転がしてたんだけど、そのビー玉が途中で落ちてどこかに行っちゃった……みたいな感じ。

篠原先生:
ふぅ~ん……。

――途中でうまくいかなくなっちゃった、みたいな?

ゆらさん:
はい。

篠原先生:
勝ち負けがない場合は、そんなこと考えずに済むっていうこと?

ゆらさん:
そうです。

篠原先生:
勝ち負けがあると「勝たなきゃ」と思っちゃうから、なんか混乱しやすいってこと?

ゆらさん:
そういうことです。

篠原先生:
勝ち負けがないと、むしろ自分の力みたいなものをちゃんと発揮できるし、もっと言えば、もっとどんどん練習して上手になることができるのにっていう感じがある?

ゆらさん:
……。

篠原先生:
難しいかな。えっと、まず、勝ち負けなんかないほうが、基本的にはいいと思うという話なわけだよね。

ゆらさん:
はい。

篠原先生:
そうだね、なるほど。まず、ゆらさんの「なんで勝ち負けがあるのか」という質問に対してだけど、人間も生き物だから、もともと勝ち負けとか戦いとか争いとかが動物の時代からあるわけだけど、例えば動物どうしだと、結構同じものが好きだったりして同じ餌の取り合いとかしちゃうんだよね。そうするとその餌が「とれた人」と「とれない人」、というような勝ち負けが、自然にできちゃう。

ゆらさん:
うん。

篠原先生:
餌がすごくたくさんあったら、みんなで分けることもできるし分ければいいと思うけど、少ないとどちらかがとるということにどうしてもなっちゃうよね。

ゆらさん:
もしザリガニが1匹おって、男の子が2人おったらさぁ、おんなじ水槽で2人で飼ったらいいのに、どっちか1人がとらんといけんことになる。

篠原先生:
うん、そうだね。ザリガニの場合はそれを飼うという話だから、どちらかが独占してというか、どちらかだけが飼うということじゃなくても全然OKだと思うんだけど、そのザリガニを食べなきゃ生きていけないという話の場合だと、どちらかがじゃなくて分ければいいということもあるかもしれないけど、とにかくそれを食べなきゃ生きられないという話になれば、どちらかが食べることになっちゃうよね。ゆらさんが言うように、もっと食べるものだとか作る材料だとか土地だとか、そういうのを「資源」と言うんだけど、それがまぁまぁたくさんあれば、みんなで分ければいいしみんなで使えばいいという話になるし、それが平和ということだとは思うんだけど、資源が少ないと、どうしても競争になって勝ち負けが出てきてしまう。少なくとも人間はそういう歴史をたどってきましたという話になると思うんだけど、それはわかるかな?

ゆらさん:
はい。

篠原先生:
そうなってくると、よりたくさん資源が手に入るようにとか、より勝てるようにとか、そういう行動をとっていこうとするだろうし、そういう行動をたくさんとった生き物のほうが生き残りやすい、あるいは、そういうことをやってきた集団のほうが生き残りやすいということが起きるのは、わかるよね。

ゆらさん:
はい。

篠原先生:
うん。そうすると、結局うまく勝つための方法を考えたり工夫したりするしくみが脳の中にもできたりしてきて、それをちゃんと持っている人たちのほうが生き残りやすいというふうになってきますよね。

ゆらさん:
はい。

篠原先生:
生物が進化……「進化」と言っていいかどうかわからないけど、変化してくるあいだに勝ち負けを体験するときがあって、それに伴って勝ち負けというのができました。それから、より勝てたほうが生き残れるから、そういうことができるような行動をたくさんしようとするしくみも脳の中に残ってきました。だから勝ち負けというのは、なんだかんだいってあったりはします。
しかも、勝ち負けで勝とうとするしくみには「ドーパミン」という物質がかかわったりするんだけど、そういうのが働いていると、例えばそのことについての記憶力が高まったり、体の動かし方とか、「スキル」と言うんだけど技術が身につきやすくなるしくみが、われわれ生き物の中にはできています。だから勝ち負けというのは、資源が少なかったりすると競争から生まれてくるんだけど、何かを学んだり技術を身につけたりするうえでは、勝つということが役に立つし、勝つことに伴って起こるしくみというのが役に立つということにはなっています。

ゆらさん:
はい。あと、負けるのがイヤな気持ちは、どうすればいいんですか? 負けず嫌いなんですよ。負けず嫌いなのは、人生は繰り返せないから、もう直せないんですよ。

篠原先生:
あぁ。いや、でも、負けず嫌いということは、次は勝とうとするってことじゃないの?

ゆらさん:
そうですね。

篠原先生:
それはすばらしいです。ちょっとイヤな気分がするけど、それでへこむんじゃなくて、次は勝とうとする気持ちにつながっていくってことでしょう?

ゆらさん:
うん。

篠原先生:
そうだとすると、勝つということを求めて頑張るしくみというのが脳の中にできているんだけど、負けたときに、そのしくみにつながるようなしくみが、ゆらさんの中にはできているってことなの。

ゆらさん:
そうです。

篠原先生:
だから、すごくいいことだと思うよ。ただ、イヤな気分というのはどうしても出てきちゃうから、次に頑張ろうということに切り替えるということですね。それってある意味、負けは負けだったのかもしれないけど、負けたということで終わりにしてるんじゃなくて、次の勝ちにつなげるしくみを考えているということだから、それはそれで「勝ち」っていう話なんじゃないかと思うけどね。まぁ、勝ちがいいというわけじゃないけど。という話だろうとは思います。
ゆらさん、いいことしたら、お父さんとかお母さんとか周りの人に、ほめられたりするよね?

ゆらさん:
はい。

篠原先生:
ほめられると、さっき言った、勝ったときに働くドーパミンとかがやっぱり増えるんです。そうすると、どういうことをすればもっとほめられるのかをどんどん学習していって、やる気も高まって、ゆらさん、もっといい子になるんです。お勉強ができてうれしくなったりしてもドーパミンが出たりします。ゆらさんは、もう、勝つということより勝ったときのしくみがうまく働くようにできているから、心配することはないと思いますけどね。

ゆらさん:
はい、ありがとうございます。

――負けることから学ぶこともたくさんあるし、それも生かして、ゆらさん、これからも頑張ってください。

ゆらさん:
はい!

――質問をしてくれてありがとうございました。

篠原先生:
ありがとー。

ゆらさん:
ありがとうございました。バイバーイ。

――さようなら。

篠原先生:
勉強になりましたー。

ゆらさん:
さよなら~。

篠原先生:
はーい。


【放送】
2023/09/10 「子ども科学電話相談」

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