10時台を聴く
23/10/29まで

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ささきあおはさん(小学4年生・北海道)からの質問に、「昆虫」の清水聡司先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
清水先生:清水聡司先生(大阪府営箕面公園昆虫館 副館長)
あおはさん:質問者


――お名前を教えてください。

あおはさん:
あおはです。

――どんな質問ですか?

あおはさん:
家にユウレイグモがたくさんいます。水を少しかけただけでペチャンコになっちゃうし、風を当てるとすぐふっとんでしまいます。なんでこんなに弱いんですか? 弱いのに外で生きていけるのですか? もし外にいるならどんなふうに生きてますか? 教えてください。

――よく観察していますね。清水先生、お願いいたします。

清水先生:
はい。あおはさん、こんにちは。

あおはさん:
こんにちは。

清水先生:
たくさんいますか?

あおはさん:
たくさんいます。

清水先生:
たぶん、イエユウレイグモあたりかなと思うんですけれども、おうちの中、あったかいよね。

あおはさん:
はい。

清水先生:
水をかけちゃったりするの? すぐ死んじゃう?

あおはさん:
はい。

清水先生:
外やったら、とても暮らしていけないような気がするよね。

あおはさん:
はい……。

清水先生:
これね、たぶん……暮らしていけないです。外にすんでいるとしたら、ユウレイグモの仲間は薄暗いところ、おうちでも家の角っこみたいなとこにおるやんか。

あおはさん:
はい。

清水先生:
あと倉庫なんかにもいます。ふだんおうちの人があまり出入りしないようなところは、あるかな? そういうところとかに、いない?

あおはさん:
いる。

清水先生:
ねぇ。そういうもの静かなところにいると思うんやけども、もともとユウレイグモの仲間は、洞窟とか岩陰とか薄暗いところにいて、おうちなんかにも入ってくる「屋内性」、外と中を行き来しちゃうクモの1つなんだけれども、ただ北海道では、ユウレイグモは外にはいないと思います。おじさんの住んでいる大阪でも、イエユウレイグモはおうちの中にはいるんですけど外にはいないです。それはなぜかと考えると、イエユウレイグモは恐らく古い時代に外からやって来た、「外来種」って、わかるかな?

あおはさん:
はい。

清水先生:
外来種だと考えられているんです。

あおはさん:
へぇ~。

清水先生:
外来種でも、絶対に屋外にいないわけではないんです。外来種として入ってきたからといって日本の自然にすめないわけじゃないんです。例えばおじさんの大好きなチョウチョなんかでも、モンシロチョウは古い時代の外来種と言われているのは知ってる?

あおはさん:
はい。

清水先生:
だから外ですめるものもいるんですけれども、イエユウレイグモの場合は、外にはすめない。外と行き来はできない。表で、自然の中で見つかっていないということは、あおはさんのおうちの周りの、もともとの自然の中にはいないと考えられているんです。

あおはさん:
へぇ〜。

清水先生:
起源の特定はできていないかもしれないですけど、アジアに広く分布していて、北海道のもうちょっと南のあたたかい地方の温帯、それは日本のほとんどの地域にあたるんですけれども、日本じゃなくて大陸のほう、アジアのほうの温帯地域が起源じゃないかと考えられています。だから日本国内だと、外ではすめない。例えば、おじさんちの周りだったら普通のユウレイグモはいるんやけれども、それは家の中にもいるし外にもいるんです。やっぱり薄暗いところとか木の陰とか岩陰とかにすんでるの。それが家の中で繁殖しちゃう。おうちの中って、あたたかいじゃないですか。

あおはさん:
はい。

清水先生:
あおはさんが言ってくれたみたいに、ユウレイグモは体がやわらかいから風なんかのちょっとした刺激で動けなくなったりするので、しっかり守られたところじゃないとすめない。あと恐らく北海道の寒さだと外にはすめない。おうちの中には、ふだんは気がついていないかもしれないけど、コバエとかトビムシとか目に見えないちっちゃい虫が、たくさん、ひっそり暮らしているんです。それをごはんにして食べてくれているの。それがどうやって広がったかというと、人間の移動です。よく言われているのが、段ボール箱。

あおはさん:
あぁ……。

清水先生:
ゴキブリなんかもそうなんやけれども、段ボール箱の隅っこにくっついてくる。しかも常に成虫というわけじゃないよね。ちっちゃい幼体のときもあるじゃないですか。

あおはさん:
はい。

清水先生:
そういうときに紛れ込むとわからないし、引っ越しとか車とか、そういう荷物の移動、人間の移動に伴って広がっている。だから人間の住んでいる場所の近くにしかいないので、それが外来種じゃないかと言われる根拠でもあるの。

あおはさん:
へぇ〜。

清水先生:
おじさんの家にも、実は古い外来種じゃないかなという昆虫がいるの。ヤマトオサムシダマシっていう、最近この番組ではよく名前を出すんですけど、甲虫の仲間です。大陸由来の外来種じゃないかと言われています。人の家にしかいなくて、それも古いおうちにいる可能性があるんですけど、野外では見つからない。そういうふうに、外から入って人の暮らしにうまく乗っかって生きているクモの1つだと覚えといてください。

あおはさん:
はい。

――あおはさん、「こんなに弱いのに大丈夫なの?」っておっしゃっていましたけれども、家の中の暗いところにひっそりといるんですね。

清水先生:
たぶん皆さんも、家の隅っこなどふだん見ないようなところをふっと見ると、ものすごく細いふわふわっとしたクモの巣があるかもしれません。結構かなりのところにすんでいると思います。

――それは、おうちの中のコバエの幼虫とかも食べてくれる?

清水先生:
コバエの成虫ですね。そこまでたどり着かないといけないので。ちっちゃな生き物は家の中にもたくさんいますので、ちょっと人が嫌がるような生き物も食べてくれてるんじゃないかっていう益虫だと思って、大事にしてあげてください。

――あおはさん、大事にしてあげてくださいということだそうです。

あおはさん:
はい。この前ね、アリとイモムシを捕まえてました。

清水先生:
あぁっ、すごいね、イモムシまで捕まえれるんや!

あおはさん:
ちっちゃいの。

清水先生:
ユウレイグモってわりと足を広げると大きいんだよね。へぇ〜、これはちょっと自由研究になるなぁ。

――あおはさん、質問をしてくれてありがとうございました。

あおはさん:
ありがとうございました。

――さようなら。

あおはさん:
さよなら〜。

清水先生:
さよなら〜。


【放送】
2023/09/03 「子ども科学電話相談」

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