のぐちかのんさん(小学2年生・北海道)からの質問に、「昆虫」の清水聡司先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
清水先生:清水聡司先生(大阪府営箕面公園昆虫館 副館長)
丸山先生:丸山宗利先生(九州大学総合研究博物館 准教授)
小松先生:小松貴先生(昆虫学者)
百野先生:百野直実先生(広島市森林公園こんちゅう館 次長)
かのんさん:質問者
――お名前を教えてください。
かのんさん:
かのんです。
――どんな質問ですか?
かのんさん:
スズメバチの毒の威力はどれくらいなんですか?
――かのんさんは、刺されたことがあるのかな?
かのんさん:
ないです。
――あぁ、よかった。でも気になるんですね。では清水先生、お願いします。
清水先生:
はい。かのんちゃん、こんにちは。
かのんさん:
こんにちは。
清水先生:
スズメバチに刺されたら怖いから、気になるよね。
かのんさん:
うん。
清水先生:
おっちゃんが刺されたときはね、めっちゃめちゃ痛かったです(笑)。なかなか数値化するのは難しいんやけれども、スズメバチの毒は、「毒のカクテル」という言い方をされていて、いろいろな毒の成分が混じり合っているんですね。その中で痛みの成分というと、ヒスタミンとかセロトニンとかいうんですけれども、他にも血圧が狂っちゃうとか脈拍がおかしくなる毒とか、神経の制御に問題が出てくる毒とか……
――人が刺されると、そうなるということですね。
清水先生:
はい。あと「たんぱく質」、これは体の成分やね。そういうものを溶かしちゃう毒とかが、いろいろ混ざっているみたいです。
かのんさん:
はい。
清水先生:
ただ毒自体の強さでいうと、オオスズメバチという、日本最大、世界最強のハチよりも、セイヨウミツバチなんかのほうが強いみたいです。ただ、オオスズメバチなんかは体が大きいでしょう? だから毒の量とか成分とかでみんなに怖がられるんやけれども、例えばかのんちゃんが、スズメバチに2~3か所刺されたり、10匹に刺されたとかしても、実際に毒の強さだけでは、人間が死に至るほどではないと言われています。致死量にはならないと言われています。
かのんさん:
はい。
清水先生:
怖いのは、そのあと。2回目、3回目に刺されたときに、体が過剰な反応をしちゃって死に至る「アナフィラキシーショック」って、聞いたこと、ある?
かのんさん:
うん。
清水先生:
人によって、2回目で出るか3回目で出るか、10回目で出るかずっと出ないか、それは違うんやけれども、1度経験すると、同じ系統のハチなんかだと、過剰反応、そういう反応が起きて死に至ることがあるので、刺されて15分とか30分ぐらい安静にして、そのあいだにおかしな症状、息切れがするとか心臓が速くなるとか変な汗が出るとか、そういうことになったらすぐ救急車を呼ぶというのが、よく言われている対処方法です。病院に行かなければ死んじゃう可能性があります。
かのんさん:
そうなんだ……。
清水先生:
それをちょっと覚えといてください。きょうはスタジオにいろいろな先生がおられて、たぶんいろんなものに刺されています(笑)。おじさんも、いろんなものに刺されていて、中でも自分自身が一番痛かったのは、スズメバチよりもオオスズメバチよりも、トビズムカデにギュウウーッとかまれたとき。
かのんさん:
うわぁ……。
清水先生:
もう、あれが一番、おじさんは痛かったです。ちょっと座り込んでしまいましたね。という経験があったり、おじさんたちの昆虫館の大先輩なんかは、ゲンゴロウの幼虫に指をかまれて、それもめちゃめちゃ痛いらしいです。ただそれよりもヤバかったのはそのあとで、ゲンゴロウの幼虫は「消化酵素」といって、たんぱく質を溶かす、体を溶かす成分を持っているので、その人があわや指を切断という騒ぎになったという、そんな逸話もあります。じゃあ、他の先生方にも、“痛かった自慢”を聞いてみましょうか。
かのんさん:
ふふふっ。
丸山先生:
丸山です。僕が痛かったのは、ベッコウバチという、クモをかるハチの仲間。それに刺された瞬間の痛さはもう、スズメバチよりもずっと痛い感じでした。
かのんさん:
はぁっ……。
丸山先生:
あとね、さっきゲンゴロウの話をしていましたけど、それに近い感じで、コオイムシという水生昆虫に刺されたときは、それも消化をする液を出すんだけれども、本当にもう、涙が出るほど痛かったですよね。
――小松先生はいかがですか。
小松先生:
同じく、水の中にいるカメムシ。基本的に水の中にいるカメムシはみんなヤバいんですけど、マツモムシという水面に背泳ぎで浮かんで泳ぐ変わったカメムシがいるんですよ。これは、つかむと口で刺すんです。もう、べらぼうに痛くて、1匹に刺されるだけで大の大人が、もう、のたうち回るような……
かのんさん:
ひぃ~っ。
小松先生:
小さいころ、初めてマツモムシというのが池に何匹も泳いでいるのを見て、網ですくって10匹ぐらい手で握ったんです。そこから先はしばらく記憶がない(笑)。
かのんさん:
えーっ……。
――百野先生はいかがですか。
百野先生:
私は本当にハチにはすごく痛い目に遭っていて、ミツバチのお世話をしていたのに、巣をのぞいたときにまぶたをちょっと刺されてしまって、そのあと完全にアナフィラキシーショックを起こしてしまいました。まず体中がしびれ、そして息ができなくなり……救急車のお世話になってしまいました。痛いどころの話じゃないですよね。
かのんさん:
すごい……。
――かのんさん、スズメバチの話から、先生たちがみんないろんな虫に刺されていることがわかりました。
かのんさん:
はい。
――ねぇ、怖いね。だから気を付けるのと、もし刺されたら、すぐ近くの大人の人に「痛いよ」っていうことをちゃんと伝えましょうね。病院に行かなきゃいけないこともあるのでね。
かのんさん:
はい。
清水先生:
まずは何に刺されたか、それを確定させるほうがいいです。
――先生方のお話を聞いていて、ちょっとドキドキしましたね。かのんさん、おもしろい質問をしてくれてありがとうございました。
かのんさん:
ありがとうございました。
――また何かあったら質問ください。さようなら。
かのんさん:
さよなら~。
清水先生:
さよなら~。
【放送】
2023/08/04 「子ども科学電話相談」