さのあさとくん(5歳・千葉県)からの質問に、「植物」の多田多恵子先生が答えます。(司会・中條誠子アナウンサー)
【出演者】
多田先生:多田多恵子先生(植物生態学者/立教大学・国際基督教大学 兼任講師)
あさとくん:質問者
――お名前を教えてください。
あさとくん:
あさとです。
――質問を教えてください。
あさとくん:
他の葉っぱにはないのに、アジサイの葉っぱにはどうして毒があるんですか?
――アジサイに毒があるのは、どうして知っているの?
あさとくん:
図鑑に書いてあったのと、幼稚園に行く道にアジサイが咲いていたからです。
――幼稚園に行く道にアジサイがあって、図鑑で調べてみたら、毒があることがわかったんですね?
あさとくん:
はい。
――では多田先生に聞いてみます。お願いします。
多田先生:
はい。あさとくん、こんにちは。
あさとくん:
こんにちは。
多田先生:
アジサイって、葉っぱを食べて中毒した例が知られていてね。お料理の下にアジサイの葉っぱが飾りとして敷いてあったんだけれども、それを食べ物だと思って食べちゃったお客さんがいて、食べたあとに気持ちが悪くなったり目がぐるぐる回ったり、そういう症状があって治療を受けたんです。命に関わるようなことはなくて、2~3日ぐらいでみんな回復したという、そういう例が、いくつか知られているのね。
あさとくん:
はい。
多田先生:
アジサイはそれまであまり有毒だとか言われていなかったんだけれども、じゃあアジサイは毒があるんだということになって、 図鑑なんかでは、アジサイの葉っぱだけじゃなくて花びらとか茎にも毒がありますと書かれていることが、今多いです。だけど、その成分というか、どんな種類の毒なのかについては、いまだにあまりはっきりしていなくて、まだ調べられている途中なんです。図鑑によっては、特定の成分が書いてあったりするんだけれども、それが全部について含まれているわけではなかったり、とにかくまだわからないところが残っています。だから、アジサイは少し毒があるけれども、葉っぱを触ったり花を触ったり、あるいは花瓶に生けたり、おままごとに使って遊んだりしても、そんなに心配することはないので、そんなに恐れなくても大丈夫です。
あさとくん:
はい。
多田先生:
それでね、結構いろんな植物が、人間が食べたりすると毒に当たるような成分を持っていたりするのね。アジサイだけじゃないんだよ。どうしてそういうものを持っているかというと、なんでだと思う? 毒みたいなものを結構含んでいる植物があるんだけど、どうしてだと思う?
あさとくん:
……。
多田先生:
植物の立場に立ってみると、食べられちゃったら、困るじゃない?
あさとくん:
うん。
多田先生:
花を食べられちゃったら実ができないし、葉っぱでいろいろな栄養を作っているから葉っぱを食べられちゃったら栄養を作れなくなるし、植物は食べられちゃったら困るんだよね。
あさとくん:
うん。
多田先生:
動物ももちろん誰か敵に食べられたら困るけど、動物の場合はそのときに走ったり飛んで逃げることができるんだけど、植物は地面に根っこが生えているから、走ったり飛んだりして逃げることができないよね。
あさとくん:
うん。
多田先生:
だから植物はその代わりに、食べられちゃ困るから、相手が食べにくくなるようなものを体の中に作って、それで身を守っているものが結構あるわけ。アジサイもそういうものを持っているし、あとはそうだなぁ、どんな植物、知っているかなぁ……。カタバミって知ってる?
あさとくん:
知ってる。
多田先生:
あっ、知ってる? カタバミはね、ちょっとだけかじってみると酸っぱい味がするの。これもそんなにすごい毒なんかじゃないから、味見するぐらいだったら心配ないから、ちょっとかじってみるとわかるんだけど、酸っぱい味がするのね。それもカタバミが身を守るために、食べられないようにするために持っているもので、「シュウ酸」という酸っぱい味のもとなんだけど、動物なんかがそれを食べ過ぎちゃうと、体の健康に害が出るようなものなのね。他にもいろいろ、知っているものがあるんじゃないかな。トマトが生えているのは、見たことある?
あさとくん:
ある。
多田先生:
トマトの葉っぱとか茎に触ると、なんだかトマトくさいにおいがするの、気がついたこと、ある?
あさとくん:
ある。
多田先生:
そうそう。トマトの茎とかをよく見ると、白い長い毛がいっぱい生えているの。トマトにはその他にもいっぱい毛が生えていて、毛に触ると、そういうところに蓄えられていたにおいのもとが空中にうわっと出てきて、それであのにおいがするんだけど、あのにおいのもとっていうのも、トマトが人だとか動物だとか虫だとかに食べられないようにするために身を守っているものなのね。だから植物は、目に見えない味やにおいだとかで身を守っているものが結構あるわけ。他にも植物が身を守っている仕組み・やり方があって、例えばバラの茎には何が生えている?
あさとくん:
わかんない。
多田先生:
きれいなお花が咲くバラは、茎に鋭いトゲがあるの。だからトゲトゲで食べられないように、っていうのもあるし、あと、アサガオの葉っぱとか茎は見たことある?
あさとくん:
ある。
多田先生:
アサガオの葉っぱとか茎を触ってみると、どんな感じ?
あさとくん:
ツルツルする。
多田先生:
ツルツルする? かな? 今度もっとよく触ってみて。アサガオの葉とか茎には、毛がいっぱい生えているんだよ。
――ちょっとザラザラする、のかな?
多田先生:
うん。人間だとザラザラすると感じるんだけど、もし自分がうんと小さい虫だったらどうかなっていうと、葉っぱを食べようと思ってもザラザラに邪魔されちゃって、食べられなかったりするわけよ。だから植物は大きな動物だけじゃなくて、ちっちゃな虫に対しては細かい毛とかをいっぱい生やしたりして、身を守っているの。
あさとくん:
へぇ~。
多田先生:
だから、「どうしてアジサイは毒があるんですか?」と言われたら、「身を守るため」。そしてそのやり方はいろいろな仕組みがあって、毒だけじゃなくて、とげだったり毛だったりにおいだったり、いろいろなもので植物は身を守っているんだね。ということで、どうでしょうか。わかったかな?
あさとくん:
わかった。
多田先生:
あぁ、よかった!
――あさとくん、ちょっとくしゃみが出ていたけれども、大丈夫かな?
あさとくん:
うん。
――そんな中、頑張って先生のお話聞いて、偉いですね。これからもいろいろな植物を見て、気付いたことがあったらまた質問を送ってくださいね。
あさとくん:
はい。
――お大事にしてください。さようなら。
あさとくん:
さよなら~。
多田先生:
はい、さよなら~。
【放送】
2023/08/03 「子ども科学電話相談」