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すぎもとかずきくん(小学5年生・愛知県)からの質問に、「植物」の田中修先生が答えます。(司会・中條誠子アナウンサー)

【出演者】
田中先生:田中修先生(甲南大学特別客員教授)
かずきくん:質問者


――お名前を教えてください。

かずきくん:
かずきです。

――どんな質問ですか?

かずきくん:
おじいちゃんの家の柿の実を食べてタネを植えたんですけど、5年間、柿の木を育てています。おじいちゃんに、接ぎ木をしないと食べられる実がつかないと言われたので、どこまでの種類が交配できますか?

――柿のタネから柿の木を育てているんですね。5年間育てているんだけど、まだ実はならないと。

かずきくん:
はい。花は咲くんですけど。

――花が咲くのに実がならない、と。それで、おじいちゃんから接ぎ木をしないとできないよとアドバイスがあったんですね。

かずきくん:
食べられる実がならない、って。渋柿はなるらしい。

――渋柿はなるんだけど、食べられる柿はならない、と。

かずきくん:
うん。そうらしい。

――接ぎ木は他の植物とくっつけるわけだから、それがどういう違う種類と掛け合わせることができるのかに興味を持ったんですね。

かずきくん:
はい。

――それでは田中先生に聞いてみましょう。お願いいたします。

田中先生:
はい。かずきくん、こんにちは。

かずきくん:
こんにちは。

田中先生:
柿のお話と、接ぎ木のお話やね。

かずきくん:
はい。

田中先生:
柿は接ぎ木して5年育てて、花が咲くけどまだ実がならない?

かずきくん:
はい。

田中先生:
うん。こんな言葉、知ってるかな。「桃栗3年、柿8年」。

かずきくん:
はい。

田中先生:
あ、知ってるんや。タネから育てた柿は、大体8年たたんと実がならないと言われているの。だからそのまま待ってたらそうやけど、「接ぎ木しなあかん」と言うのは、接ぎ木したらその8年が短くなるんや。

かずきくん:
へぇ~。

田中先生:
だからそれが、「柿は接ぎ木しなさい」という意味の1つやね。もう1つ大事な意味は、「食べた柿のタネを育ててる」って言うけど、食べた柿は甘柿やったの?

かずきくん:
はい。

田中先生:
甘柿やったんや。でも甘柿のタネをまいても渋柿の性質のほうがずっと強いから、まずほとんど渋柿ができるの。

かずきくん:
へぇ~。

田中先生:
甘柿を育てようと思ったら、やっぱりその木に甘柿の枝をちゃんと接ぎ木して、その枝を育てたら甘柿になる。だから「柿は接ぎ木しなあかんよ」というのは、その実がなるまでの期間を短縮したり、甘柿をならすために、そういうふうによく言われてきてるの。

かずきくん:
はぁ~。

田中先生:
えっと、接ぎ木はもう成功しているの?

かずきくん:
まだやってない。どの種類にすればいいのかわかんないから。

田中先生:
あぁ、そうか。接ぎ木するんやったら、甘柿とわかっているやつを接ぎ木したほうがいいね。

かずきくん:
はい。

田中先生:
それから接ぎ木という技術はね、柿ではそういうふうにして使うやろ?

かずきくん:
うん。

田中先生:
柿だけじゃなくて、有名な果物の品種というのは、みんな接ぎ木で増やしているの。

かずきくん:
そうなんだ。

田中先生:
うん。リンゴでもナシでも。サクランボは佐藤錦というおいしい品種があるんやけど、あれもサクランボのタネをまいたんではダメなの。佐藤錦はできないの。他の品種の花粉がついているからね。だから有名な果物の品種というのは、必ず接ぎ木、接ぎ木、接ぎ木で全部増やしてきているの。

かずきくん:
なるほど。

田中先生:
それともう1つ、接ぎ木がよく使われているのは、野菜の苗やね。家で野菜を育てたことないか?

かずきくん:
いっぱいある。

田中先生:
おっ、いっぱいあるんや! それは苗を買ってくるの? タネから育ててるの?

かずきくん:
タネから育てたのが1回と、苗で育てたのが2回ある。

田中先生:
そっか。苗買いに行ったらね、ちょっと値段高いけど「接ぎ木苗」というのを売ってるの。それは病気に強い、あるいは同じ場所で栽培してもちゃんと成長して収穫できるというような、「台木(だいぎ)」というのを使ってるの。「台木」という言葉、わかるかな? 「台」は物を置く台、「木」は普通の木。それで「台木」ね。

かずきくん:
台木? わかんない。

田中先生:
接ぎ木のもとになる、下のほうになるやつが台木なんや。おっきい声で言って覚えてくれるか?

かずきくん:
台木!

田中先生:
そうそう、台木。その台木というのを、病気に強いやつを使ったり、同じ場所で何年でも栽培してもいいというのを使うと、上に接ぎ木したやつはその影響を受けて、病気に強くなったり何年でも収穫できるということになるので、野菜では接ぎ木苗というのがかなり使われているの。

かずきくん:
そうなんだ。

田中先生:
うん。どの仲間とやったら接ぎ木できるかというのが、かずきくんの次の疑問やね。

かずきくん:
そうです。

田中先生:
これは普通には、同じ科やったら……「科」って、わかるね。

かずきくん:
うん。リンゴ科とか。

田中先生:
バラ科とかナス科とかウリ科とかキク科とか、その「科」やね。その「科の中ではできる」と言われているの。そうは言ってもほんまにできるかっていうと、実はほんまにはできないんや。無理やりできても成長が悪かったりしたら、何のために接ぎ木したんか、わからへんやろ?

かずきくん:
うん。

田中先生:
だから結局、これとこれをやったらうまいこと育って病気に強くなるというようなことが経験的にわかっているのを、使ってきているの。でも、「どこまで接ぎ木ができんのか?」と聞かれたら、普通には「同じ科の範囲ではできる」と答えるんやけども、「同じ科やったら、ほんまに全部できるんか?」と言われたら、「それは、でけへん」って答えるの。

かずきくん:
うん、なるほど。

田中先生:
ところがね、このごろすごいことがわかってきてるんや。タバコっていう植物、知ってるか?

かずきくん:
タバコ?

田中先生:
うん。吸うたばこの材料で、タバコという植物の葉っぱを使うんや。このごろやったら花がきれいだから見ることもあると思うけども、タバコという植物があるのね。これが、どんな科のやつでも接ぎ木ができるというのが発見された。

かずきくん:
えっ?

田中先生:
だからタバコに、例えばマメ科の大豆も接ぎ木できるし、ウリ科のカボチャも接ぎ木できるし、アブラナ科のブロッコリーなんかも接ぎ木してできるというのが見つかったんや。

かずきくん:
そうなんだ、すごい! じゃあイチゴを接ぎ木したらイチゴの味がするとか、そういう系なのかな?

田中先生:
いや(笑)、やらはった限りでは、七十数種類の植物全部ができたと報告されているの。そやからこれはそこにとどまらんと、それを使ったら何でもひっつけられるということになるんや。例えばその見つけた人がやらはったのは、菊にトマトを接ぎ木しようと思っても普通はできないの。菊はキク科やし、できないよね。そやけども菊を台木にしてタバコをまず接ぎ木するんや。そしてそのタバコに、今度は上にトマトを接ぎ木するんや。ほんなら下から菊、タバコ、トマトってなるけど、一番育っていくのはトマトなんやね。ここまでは大丈夫かな?

かずきくん:
はい。

田中先生:
まず接ぎ木というのは、普通は同じ科だけやけど、と言っても、同じ科やったら全部できるようなことはないということは知っといてね。

かずきくん:
はーい。

田中先生:
それでこのごろ、タバコがその科を超えて接ぎ木できる植物やということがわかってきた。キク科の植物を台木にして、その上にナス科のトマトなんて、普通は接ぎ木できへんやろ? そやけど間にタバコを挟んだら、タバコと台木のキク科がひっついて、そのあと今度はそのタバコにトマトをひっつけたら1本の植物になるの。菊を台木にしてトマトの実が実るというとんでもないことが、これからいろんな植物でできていくかもわからん。

かずきくん:
なるほど。ちょっとそれで思ったのが、なんとかとタバコ、なんとかとタバコ……ってやっていけば、世界中のすべての植物がつなげられるってこと?

田中先生:
そやねぇ、どこまでタバコがそれに耐えられるかわからんけども、いま発見されて論文で研究報告されているのは、その人は七十数種類やらはったと思うんやけども、その植物にタバコが接ぎ木できることはわかっているの。だからこれからどんどんと増やしていって、下にどんな植物を使って上にどんなのが作れるのか、新しい植物が出てくると思う。どんな植物を作ろうと思うか、また考えて夢を発展させてください。

かずきくん:
はいっ。最後に1個聞きたいんですけど、先生の中で一番おすすめの接ぎ木のやり方はどんな感じですか?

田中先生:
接ぎ木のやり方って、何と何をひっつけるかっていうことやね。

かずきくん:
柿をやるにあたって。

――柿をやるにあたって、おすすめの種類ということですか?

かずきくん:
種類じゃなくて、やり方。

田中先生:
接ぎ木のやり方は、おじいさん、ご存じなかったのかな?

かずきくん:
何種類かあるから、どれがいいかなと思って。

田中先生:
あぁ、そうか。台木をまず切るやろ? そして台木の木の周りの外側からちょっと内側のところが、維管束という、ひっつきやすいところなんや。そこに割れ目を入れて、そして甘柿の枝を持ってきて入れて、ぎゅうっと縛っとくんや。それが普通の接ぎ木のやり方で、たぶん普通にはうまいこといくと思う。そやけどね、1回でできるかと言われたらなかなか接ぎ木は技術がいるので、ベテランの人が野菜の苗でも接ぎ木はやっているので、かずきくんが初めてやって、「そのとおりにやってみたけど、あかんかった」って言われたらかなわんなと、いま思ってる(笑)。

かずきくん:
なるほど。

――いろいろ経験を重ねれば、できるようになると?

田中先生:
はい。

――ということで、かずきくん、大丈夫ですか?

かずきくん:
はい。よくわかりました。

――あぁ、よかったです! かずきくん、ぜひ接ぎ木をして、どうなったかを報告してくれますか?

かずきくん:
はい。

――待ってますからね。ありがとうございました。

かずきくん:
ありがとうございました。

田中先生:
はい、さよなら~。

――さようなら。

かずきくん:
さよなら~。


【放送】
2023/08/02 「子ども科学電話相談」

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