10時台を聴く
23/09/26まで

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まつのあまねさん(小学2年生・兵庫県)からの質問に、「心と体」の篠原菊紀先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
篠原先生:篠原菊紀先生(公立諏訪東京理科大学教授)
あまねさん:質問者


――お名前を教えてください。

あまねさん:
あまねです。

――どんな質問ですか?

あまねさん:
なぜ心臓は普通ならば「ドク、ドク」なのに、緊張すると「ドクドクドクッ」と速くなるんですか?

――あまねさんは、ドクドクドクッてなったことはありますか?

あまねさん:
あります。

――どんなとき?

あまねさん:
運動会とか発表会です。

――どうしてそうなるのか、先生に教えていただきましょう。「心と体」の篠原先生、お願いします。

篠原先生:
あまねさん、こんにちは。

あまねさん:
こんにちは。

篠原先生:
元気だねぇ。なんか声が元気そうに聞こえましたよ。確かにそうだよね。大会とか発表会の前とか、心臓のドクドクが速くなるよね。手で触ってみるとよくわかるし、触らなくてもわかるぐらいにドクドクするかな。そうやって心臓がドクドクするのは、「これから頑張ろう!」というときに、心臓から体中にたくさん血液を送って、筋肉とか脳とかにしっかり働いてもらうためなんだよね。例えば運動会の前だと、頑張って走ろうというときには筋肉にたくさん血液を送って、がんがん筋肉に動いてもらわなきゃいけないよね。だから心臓がドクドク速くなるというのは、血液……「血液」は、わかりますか?

あまねさん:
わかります。

篠原先生:
血液が、体に栄養を送ったり酸素を送ったりしているんだけど、それを筋肉にたくさん送ってあげると、速く走れるようになったり、急に動いたりするのにも対応できるようになったりするんだよね。発表会のときも、その種類によってはちゃんと体が動いてくれなきゃいけないというのもあるし、頭も働いてくれないといけないので、そのために、心臓がドクドクして体中に血液を送るということなんですね。わかるかな?

あまねさん:
わかります。

篠原先生:
じゃあ、どうやって心臓をドクドクさせるかというと、人間の体には、今言ったように、これから何か頑張ろうとか急に何かが起こったりとか、それによって緊張したりするときに働く、「交感神経」という神経があるんですね。これは覚えなくてもいいけど、そういうふうに、頑張ろうとか緊張するとか急に何かをやるというときに、脳の奥のほうから体全体に命令を送る神経があって、それが活動してくれるんですね。わかりますか? あまねさん、大丈夫?

あまねさん:
大丈夫です。

篠原先生:
はい。この交感神経が働くと、心臓がドキドキしたり、「血圧」といって血液を送る力、血管を押す力が高くなったり、心臓がドキドキしたときはちょっと呼吸も増えたりするのは、わかりますか?

あまねさん:
わかりません。

篠原先生:
わかんないか……。時によって違うけど、「呼吸」はわかるよね。吸ったり吐いたりするやつね。

あまねさん:
わかります。

篠原先生:
うん。今度観察してみればわかると思うけど、その呼吸数というのも、少し増えるんです。

――ちょっとドキドキして、「ハァ、ハァ、ハァ」ってしたりすることですか。

篠原先生:
そうです、そうです。

――そういうふうになったりもするかな、あまねちゃん。

あまねさん:
そうです。

篠原先生:
そういうのが増えて、「酸素」という、体を動かすのに必要なものをたくさん取り込んだりするのね。それから「瞳孔」というのはわかりますか?

あまねさん:
知りません。

篠原先生:
目がありますよね。目に黒目、ありますよね。黒目の真ん中のところに、もっと黒いところ、瞳孔というのがあるんだけど、それがちょっと開いたりするんです。これは、しっかりものを見るために開くんです。それから交感神経が働くと、「消化が抑制される」といって胃とか腸の働きが小さくなるんです。これは、ものを食べたり消化したりすることにエネルギーを使うのがもったいないからで、頑張るというほうに全部回していくってことをやるんですね。

あまねさん:
ふぅん。

篠原先生:
大昔とかだったら、人間が獣に出会ったら戦ったり逃げたりしなきゃいけないじゃない? そういうときに、交感神経を働かせて心臓をドキドキさせたり、戦ったり逃げ出したりするのにいい体の状態を作るのね。それが現代だと、大会や発表会が始まる前に交感神経が働いて、ドキドキする。それはいいことと言えばいいことなんだけど、「心臓がドクドクしてる」とか「私、緊張してる」とか「これはまずい」とか思ってしまうと、今度は交感神経が働き過ぎてしまって、本番を失敗しちゃったりとかいうことが起きやすくなるのね。

あまねさん:
わかりました。

篠原先生:
うん。そういうときのいい方法として、おじさんが気に入っているのが1個あるから、そのお話をしてもいいですか?

あまねさん:
いいです。

篠原先生:
はい。おじさん(篠原先生)はハーバード大学のブルックスという先生が10年も前に報告した研究が気に入っていて、この先生は、みんなの前でお話をしたり面倒な算数の問題を解く試験の前とかに、「私は緊張している」と言うグループと、「私は興奮している。ワクワクしている」と言うグループに分けたんです。心臓がちょっとドキドキしてくるのを、「緊張している」と捉えるのか、それとも、これから何かするのを「楽しみだな」というふうに捉えるのとではどう変わるのかを調べるために、そういう実験をしたんです。

例えば、あまねさんが大会の前とか発表会の前の日に、心臓のドクドクが速くなったりするじゃない? それを、「私は緊張しているんだ」と思うか、それとも、「私は今ちょっと興奮していて、これから何かをしようとワクワクしているんだ。体が頑張ろうとしているんだ」と思うかに、分けるということですね。そうやって実験したら、「緊張している」と思っているグループよりは、「私は興奮している。ワクワクしている」と自分で思ったり口に出して言ったりしたグループのほうが、上手にできたりよくできたりしたと報告されているんです。

だからあまねさんも、心臓がドキドキしてきたら、「私は今、ワクワクしているんだ。大会の前で、頑張ろうと思っているんだ。体も頑張ろうとしてくれているんだ。心臓も頑張っている。よし、やるぞ~」と思ったり言ったりしてみると、いいと思うよ。

あまねさん:
はい。

――発表会とか運動会とかの前にドキドキしてきたら、「緊張してきちゃった」と思うんじゃなくて、「よし、頑張るぞ~。ワクワクしているからドキドキしているんだな」と思ったほうが、いい結果が生まれるかもしれないということですね。口にも出したりして、自分でそう思うということですね。

篠原先生:
そうです。この実験自体は実際に声に出してやったんですけど、「思う」ということでもいいと思います。自分の体に起こったことがらをどう解釈するかというのは自分しだいなので、それを使ってあげるのは、いい方法だと思います。最近のスポーツ選手はみんなそうだけど、「試合を楽しもうと思っている」とか「楽しみだ」とかよく言いますね。それも同じような話だろうと思っています。「緊張する」ということを「ワクワクして楽しい」と置き換えてあげることが、とても役に立っているんだろうなと思います。

――あまねさん、どうでしょうか。

あまねさん:
わかりました。

篠原先生:
あぁ、よかった。

――きょうの電話も、ひょっとしたらドキドキしながらくれたのかな。大丈夫かな?

あまねさん:
うん。

――よかったです。

篠原先生:
あまねさんの最初の声がハキハキしていたから、そんなに緊張せずに聞いてくれたんじゃないかと思っています。

――大人にも参考になる質問を、あまねさんがしてくれました。ありがとうございました。

あまねさん:
ありがとうございました。

篠原先生:
はーい。

――また何かあったら質問を送ってみてくださいね。さようなら。

あまねさん:
さよなら~。

篠原先生:
さよなら~。ありがとー。

あまねさん:
ありがとうございまーす。


【放送】
2023/08/01 「子ども科学電話相談」

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