9時台を聴く
23/09/26まで

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えぐちみちろうくん(小学1年生・東京都)からの質問に、「岩石・鉱物」の西本昌司先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
西本先生:西本昌司先生(愛知大学教授)
林先生:林公義先生(北里大学海洋生命科学部講師)
みちろうくん:質問者


――お名前を教えてください。

みちろうくん:
みちろうです。

――どんな質問ですか?

みちろうくん:
アンモナイトは何を食べていたのですか?

――それは何か本を読んだりして、疑問がわいたんですか?

みちろうくん:
はい。鉱物とか岩石とか化石の本に「タコの仲間」と書いてあったんですけど、タコは小魚とかプランクトンを食べると思っているんですけど、だけどもしかしたら違うかもしれないと思って。

――本当はどうなんだろうと疑問がわいたんですねぇ。西本先生、お願いします。

西本先生:
はい。みちろうくん、おはようございます。

みちろうくん:
おはようございます。

西本先生:
岩石・鉱物・化石の本を読んでいたら、載っていたんだね。

みちろうくん:
はい。

西本先生:
たぶん、小魚とかプランクトンを食べていたと思うんだよね。でも昔のことだから、なかなか本当のことを知るのは難しいよね。アンモナイトが何を食べていたのかということは、どのようにしたらわかると思いますか?

みちろうくん:
……わかりません。

西本先生:
うん、難しいよねぇ。方法は2つあるんです。1つは、化石をじっくり観察すること。もう1つは、今、生きていて、似たような生き物と比べることです。

みちろうくん:
えっと、本で比べたことはあります、オウムガイと。

西本先生:
おー、すごいですねぇ。オウムガイは見たことあるの?

みちろうくん:
見たことはないんですけど、本に載っていて、アンモナイトとどこが違うのかが書いてありました。

西本先生:
なるほどねぇ、わかった。じゃあ先に、今、生きている生き物とどういうところが似ているかを、僕は石はわかるんですけど、今、生きている生き物のことはよくわからないから、ちょうど私の隣に「水中の生物」の林先生がいるので、アドバイスしてもらおうと思います。林先生、お願いします。

林先生:
はい。みちろうくん、おはようございます。

みちろうくん:
おはようございます。

林先生:
確かにアンモナイトは新生代には絶滅していたから、何を食べたかを見つけるのはなかなか難しいよね。アンモナイトはどういう時代に出てきたかというと、実はさっき、みちろうくんが言ってくれたオウムガイとは、ある意味共通祖先というのがあって、オウムガイのほうが生まれてきたのは早いんです。

みちろうくん:
えっ!?

林先生:
古生代のあるときに、アンモナイトというのに分かれていったということがあるんです。現在のイカとかタコとか、いるでしょう?

みちろうくん:
はい。

林先生:
これはどちらかというとアンモナイトのほうから出てきたやつで、オウムガイは昔から……「昔から」という言い方はおかしいけれど、オウムガイとしてずっと現在に至るという状況なんだよね。だから祖先的にはオウムガイもアンモナイトも同じだし、アンモナイトの絵をよく見ると、いろんな外観も一緒です。それでオウムガイが今、何を食べているかというのは、僕自分でオウムガイの胃袋を解剖してみたことがあるんです。

みちろうくん:
えっ……。

林先生:
うん。オウムガイは、今この地球上にちゃんと生きているというのは、知ってる?

みちろうくん:
知ってます。

林先生:
水族館にも時々いるよね。

みちろうくん:
それは見たことがありません。

林先生:
あ、そうですか。まぁ、なかなか解剖する機会はないと思うけど、僕が解剖したらね、やっぱり死んだ魚の肉が一番多く入っていました。ウロコなんかもたくさんありました。それから、エビ。特に砂の中に潜っているエビがたくさん入っていましたね。カニなんかもありました。ところが胃袋の中に入っていたカニの甲羅が、ぐちゃぐちゃでやわらかいの。一般的には、カニの甲羅は硬いじゃない?

みちろうくん:
はい。

林先生:
でも、カニは脱皮しますよね。そういうやわらかい状態のものを、オウムガイは食べることがあるみたいです。

みちろうくん:
おぉ~。

林先生:
現在のイカの口の中には、カラストンビという、何かすごいあごがあるでしょう?

みちろうくん:
それは知らない。

林先生:
イカの解剖図はわりと図鑑なんかに出ているから、今度見てください。カラストンビというのがあります。それが実は、オウムガイの口の中にもあるの。これは、何かをくわえる、鳥のくちばしみたいなものですよね。ですからそういうので捕まえやすい餌を食べる。ところがオウムガイは、漏斗を使って横に泳ぐときはすごくスピードが出るんだけど、上下に動こうとすると、何かこっくりこっくり、すごく遅いんですよ。だから泳いでいるものをパクッとイカのように捕まえるというのは、例えば捕まえる腕も持っていないから難しい。だから取り込んだものを押さえつけてかじり取って食べる、というような感じはわかるんですけどね。こんなところです、私が知っているのは。

みちろうくん:
ありがとうございます。

西本先生:
今の生き物でアンモナイトに近いオウムガイは、カニとか魚を食べていた。ということは、そこから想像できますよね。

みちろうくん:
はい。

西本先生:
実はアンモナイトにも、さっき出てきたカラストンビが化石として残っているんですよ。

みちろうくん:
えっ?

西本先生:
口の周りの、人間でいうと「歯」みたいなところだよね。その部分が残っていて同じような形をしているから、同じ仲間だなということがわかります。

みちろうくん:
おー。

西本先生:
その口の周りの化石をものすごく一生懸命観察した人がいて、口の周りからプランクトンの化石が見つかっています。

みちろうくん:
へぇー。

西本先生:
それから他の論文を見ると、おなかの部分にカニとか貝殻があるのが見つかっています。そういった状況から、アンモナイトも恐らくプランクトンやカニ、魚、貝とかの魚介類を食べていたと、推測はできるということです。ただ、種類によっても違うよね。魚だっていろんなものを食べるし、アンモナイトもきっといろいろな種類があるので、どの種類がどんなものを食べていたのかは、それぞれ化石とかを調べないと、たぶんわからないと思います。

みちろうくん:
はい。すいません、もう1個質問があるんですけど、いいですか?

――どんなことですか?

みちろうくん:
殻の中はどうなっていますか?

西本先生:
渦巻きになっているのは知ってる?

みちろうくん:
渦巻きになっているのは知っています。

西本先生:
その中に隔壁があって部屋に分かれているのは、聞いたことある?

みちろうくん:
部屋に分かれているのは本で読んだことがあります。なんか、10個の部屋になっているんですよね。

西本先生:
10個か何個かは知らないけど、あれは増えていくからね。どうして部屋に分かれているのかは、知っているかな?

みちろうくん:
わかりません。

西本先生:
みちろうくんは、殻の中の構造が知りたいってこと? どうしてそんな形をしているのかなってことかな?

みちろうくん:
はい。

西本先生:
「水中の生物」の林先生に教えてもらったら、アンモナイトの中が部屋に分かれているのは、その中にガスを入れたり出したりして浮き輪の代わりにしているんだって。もし隔壁がなかったら、ガスをためられないじゃん? だから部屋に分かれているということです。

みちろうくん:
へぇ~。

西本先生:
ちなみに、アンモナイトは生まれたときはどんな形をしていたと思う? 同じ形をしていたと思う?

みちろうくん:
生まれたときも殻がついてるって、本に書いてあった。

西本先生:
よく知ってるねぇ、そのとおりです。これも、アンモナイトによく似ているオウムガイの観察なんかをすることで、想像されています。僕は、鳥羽水族館でオウムガイを見たことがあります。あそこは卵から子どもをかえしたことがあって、生まれたときから同じ形だということがわかっているんです。それがそのまま成長すると、中身が大きくなって部屋が狭くなって困るじゃん?

みちろうくん:
はい。

西本先生:
だから自分が前にちょちょっと出てきて、後ろに壁を作って、隔壁を作りながら成長していくというふうに考えられています。

みちろうくん:
はい。

――みちろうくん、よく本を読んで勉強していますね。また是非何かあったら質問してください。

みちろうくん:
はい。

――ありがとうございました。

みちろうくん:
ありがとうございました。

――さようなら。

みちろうくん:
さよなら~。

西本先生:
さよなら~。


【放送】
2023/08/01 「子ども科学電話相談」

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