やまがみふうかさん(小学1年生・神奈川県)からの質問に、「天気・気象」の福田寛之先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
福田先生:福田寛之先生(気象予報士)
藤田先生:藤田貢崇先生(法政大学教授)
ふうかさん:質問者
――お名前を教えてください。
ふうかさん:
ふうかです。
――どんな質問ですか?
ふうかさん:
もし雲の上に行けたら雲に乗れますか? 私の体重は20kgです。
――ふうかさんは、雲の上に乗ってみたいなと思っているんですか?
ふうかさん:
思ってます。
――そうですか。では福田先生、お願いします。
福田先生:
はい。ふうかさん、こんにちは。
ふうかさん:
こんにちは。
福田先生:
福田といいます。よろしくお願いします。
ふうかさん:
よろしくお願いしまーす。
福田先生:
ふうかさん、雲に乗りたいということですが、どんな形の雲に乗りたいか、希望はありますか?
ふうかさん:
……特にありません。
福田先生:
雲もいろいろな形があって、ふわふわとした綿菓子みたいな雲もあれば、はけではいたみたいな薄い雲もあるんですけど、今、ふうかさんのいるところから、雲は見えますか?
ふうかさん:
見えます。
福田先生:
どんな雲が見えますか?
ふうかさん:
ちょっと平べったい雲です。
福田先生:
ソフトクリームみたいに、もくもく上のほうに長くなっているというよりも、横に平べったい雲ですね。
ふうかさん:
そんな感じです。
福田先生:
今、私のいるスタジオからも、たぶん同じような雲が見えていると思うんですけど、その平べったい雲は、ふうかさんが乗りたい雲ですか?
ふうかさん:
違います。
福田先生:
あっ、違いますか、そうなんですね。どんな感じの雲を想像してました?
ふうかさん:
もうちょっと丸くて白っぽい雲。
福田先生:
なるほど。もくもくとした入道雲、夏によく出てくるような雲でいいかな?
ふうかさん:
そうです。
福田先生:
わかりました。その雲に乗ることができるかどうか、一緒に考えてみたいと思います。ふうかさんは、もし雲の上に行くことができたら、自分はそのまま雲に乗れると思っていますか? それとも何か特別なことが必要かなと思っていますか?
ふうかさん:
乗れると思うけど、ちょっと重すぎるかもしれない。
福田先生:
なるほどー。じゃあ、その辺りから少しお話ししたいと思います。雲というのはどういうものなのかということを、まず話したいと思います。ちなみに、「雲はこういうものですよ」って、テレビとか図鑑などで見たり聞いたりしたことはありますか?
ふうかさん:
あります。
福田先生:
どういうふうに書いてあったか、教えてもらってもいいですか。
ふうかさん:
はい。海の水が蒸発して、空の上に上って、上で冷やされて、霧とかと混ざって雲になります。
福田先生:
すばらしいです、そのとおりです! ふうかさんが言ってくれたように、雲というのは、海などから水が蒸発して上のほうまで上っていって、霧など小さい水の粒みたいになったものです。高さによっては氷の粒がたくさん集まってできたもので、言ってみれば、水と空気でできているようなものですよね。「霧」という言葉が出たんですけど、雲と似たようなものが実は身近なところにもありまして、それはお風呂場の湯気です。「湯気」って、わかりますか?
ふうかさん:
わかります。
福田先生:
お風呂に入ると湯気が見えると思うんですけど、仕組みとしては、空気の中にある水が冷やされて、目に見えるような形になったものなんです。雲は空の高いところにあるけど、できかたとしてはこれと同じで、小さい水滴とか光の粒がたくさん集まってできたものなんです。それが遠くのほうからだと光に反射して白く見えて、太陽が照らすと、輪郭もはっきり見えるものなんです。ふうかさんが雲に乗ろうとしているのは、お風呂の湯気に乗ろうとしているのと似たようなことなんだなということが、1つあります。ふうかさん、お風呂の湯気に、乗れそうな感じはしますか? どうでしょう。
ふうかさん:
あんまりしません。
福田先生:
そうですよねぇ。お風呂の湯気に乗るのはできないというのは、なんとなくわかるかなと思います。実は雲も一緒で、例えば雲のあるところまで飛行機で行くと、今まで輪郭がはっきりしていた雲がだんだんもやもやしてきて、白っぽい霧の中に入ったようになってしまいます。もしそこで、ふうかさんがピョンと雲の上に乗ったら、ストーンと地上まで落ちてきてしまいます。じゃあ、雲の重さはどのくらいかなというと、今、ふうかさんは体重が大体20kgくらいあると教えてくれたんですけど、ふうかさんが乗りたいと言ってくれたような、もくもくとした雲は、1m×1m×1mで1㎥……ちょっと難しいんですけれど、ふうかさん、身長は何cmですか?
ふうかさん:
125cmです。
福田先生:
125cmとすると、ふうかさんよりも少し小さいくらいの四角い箱を想像してほしいんですけど、それぐらいの箱の中に雲を詰めたとしたら、大体重さは0.5gくらい。1円玉1枚よりも軽いことになります。そんなところに乗ろうとすることになりますから、なかなか難しいかなと思います。でもせっかくなので、乗る方法というのも一緒に考えてみたいなと思います。乗りたいですよね、やっぱり。
ふうかさん:
はい。
福田先生:
まず1つの提案として、ふうかさんが、すごく軽くなる! これ、できるかなぁ。ふうかさんが雲と同じぐらい、同じくらいまでとはいかなくても、雲のあるところは上に向かって吹く風があるので、羽毛くらい軽くなったら、もしかしたら雲と同じくらいのところをふわふわと漂っていられるかもしれません。でも、これはちょっと難しいですね……。 別の方法も考えてみましょう。高いところまで、雲の上まで行って、そこからパラシュート……「パラシュート」って、わかるかな?
ふうかさん:
知ってます。
福田先生:
そういうのを使ったら、何となく雲の上に乗っているような感覚を味わえるかもしれない。どうでしょう。それだったらやってみたいなと思うか、いや、やっぱり本物の雲に乗りたいなと思うか、どっちでしょう。
ふうかさん:
……。
福田先生:
ちょっと提案が違ったかな?
ふうかさん:
やってみたいです。
福田先生:
やってみたいですか! 確かにそうすると雲の上に乗ったような感じになるかもしれません。ただ、ふうかさんが乗りたいもくもくとした雲というのは、すごく高いんです。富士山よりももっと高い。大体1万mくらいの高さまでありますので、そこの気温は氷点下10℃とか20℃とか、季節によって変わりますけれどかなり寒いんです。それから激しい風が吹いているので、そこに行くと巻き込まれてあっちに行ったりこっちに行ったり、非常に危険な状態になるかもしれません。だから同じ雲に乗るとしても、もくもくとした雲というのは、実はあまりおすすめできないんですよね。どちらかというと、今、ふうかさんが見ているような横に平べったく広がっている雲のほうが、近くまで行って雲の上に乗っているような気分を味わいやすいかもしれません。どうでしょう。平べったい雲でもいいかなと、思います?
ふうかさん:
思います。
福田先生:
ほんと? ありがとうございます。なんか、ごめんなさいね……うまく雲に乗せてあげたいんですけど。ここまでは飛行機とかでお空に行くという話だったんですけど、もう少し現実的に行けるようなものですと、山のほうに行ってみてください。季節にもよりますが、下からもくもくと雲がわき上がってくることもありますから、まるで自分が雲の上にいるみたいな感じになるかもしれません。私も、実際に山に行って同じような体験をしたことがあります。下のほうから雲がわき上がって迫ってくるような感じがして、本当に僕はこれから雲と一緒に空の上まで運ばれてしまうんじゃないかと感じたりしました。もし雲に乗る感覚を楽しみたいのであれば、家族のみんなと一緒にちょっと高い山に行って、雲がわき上がる様子を見られるチャンスを探してもらえたらなと思います。
――ふうかさん、もうちょっと大きくなったら、そういう山に行けるかもしれませんね。
福田先生:
雲に直接乗ると落ちちゃうんですけど、雲の近くに行って雲と親しむ方法をいくつかご紹介しましたけど、ふうかさん、どれかやってみたいなというものは、ありましたか?
ふうかさん:
ありまーす。
福田先生:
どれですか、教えてください。
ふうかさん:
パラシュートです。
福田先生:
あっ、そうですか! これは結構危険を伴うのであまりおすすめはしないんですけど……。さっきも言ったんですけど、特にもくもくとした雲は危ないので、地面の付近にできるふわふわっとした雲であったら、パラシュートとかあるいはハンググライダーとかで近くを飛ぶことはできるかなと思いますね。
――雲はお風呂の湯気みたいだということでしたけれども、「科学」の藤田先生、それっぽいものを作れたりするんでしょうか。
藤田先生:
作ろうと思えば雲は実験で簡単にできます。ペットボトルの内側をさっと濡らして、お線香の煙なんかをちょっと入れてギュッと押してパッとはなすと、中が真っ白になって小さい水滴が中に浮かぶんです。それを見たら、「あっ、雲だ」というふうにわかります。
――線香のにおいがする?
藤田先生:
はい、煙を入れるので(笑)。水蒸気が集まって水滴になるんですけど、そのときに集まるものが、何か中心に必要なんですね。例えば先ほどの別の質問で、蒸留水が氷になるのに時間がかかるというのがありましたけれども、蒸留水には微小なものは入っていますけれども、氷のもとになるようなものがないので、氷ができにくいんだと思います。ですから雲を作るときには、その核になるものを入れてあげるんです。線香の煙が一番いいんです。
福田先生:
アルコールスプレーをシュシュッとやると、アルコールが核になると聞いたことがあるので、それでもできるかもしれません。でもちょっと薄いので、やはり線香がいいですよね。
――ふうかさん、雲っぽいものを作っていろいろ想像するのもいいかもしれませんね。
福田先生:
自分でも「見える雲」を作って想像していただいて、もっと雲に親しんでもらえるといいかなと思います。
――雲に乗ってみたいなとか、あと食べてみたいなという人も(笑)、いるかもしれません。ふうかさん、楽しい質問をしてくれてありがとうございました。
ふうかさん:
ありがとうございました。
福田先生:
ありがとうございました。
――また不思議だなと思うことがあったら質問を送ってくださいね。
ふうかさん:
はい。
――さようなら。
ふうかさん:
さよなら~。
福田先生:
さよなら~。
【放送】
2023/07/31 「子ども科学電話相談」