10時台を聴く
23/09/17まで

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むんはなさん(小学6年生・千葉県)からの質問に、「心と体」の大日向雅美先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
大日向先生:大日向雅美先生(恵泉女学園大学学長)
梅原先生:梅原淳先生(鉄道ジャーナリスト)
はなさん:質問者


――お名前を教えてください。

はなさん:
はなです。

――どんな質問ですか?

はなさん:
なんでプラスチックの容器に入れた料理よりも、曲げわっぱに入れた料理のほうがおいしく感じるのですか?

――はなさんは、曲げわっぱでお弁当とかを召し上がったことがあるのですか?

はなさん:
はい。

――そしたらおいしそうに見えた?

はなさん:
とてもおいしそうに見えました。

――そうですか! どんな変化があるんでしょうね。大日向先生にお答えいただきます。お願いいたします。

大日向先生:
はい。はなさん、こんにちは。

はなさん:
こんにちは。

大日向先生:
とってもおもしろいことに気が付きましたね。これね、味覚と視覚の関係に気付いたと言えると思うんです。私たち、食べ物は、味覚といって口の中、舌で味わっていると思いがちなんですけれど、実はいろいろな感覚を寄せ集めて味わっているんです。

はなさん:
へぇ〜!

大日向先生:
感覚、五感という言葉は、聞いたこと、ありますか?

はなさん:
あります。

大日向先生:
味覚のほかにどんなのがある?

はなさん:
視覚とか聴覚とか、あとは、なんて言うんだろう……。

大日向先生:
嗅覚?

はなさん:
あっ、そう、嗅覚。

大日向先生:
それから、触るのは触覚って言うかな。そういういろんな感覚があることが、わかっているのね。このうち味覚と嗅覚との関係は、わかりやすいじゃない? 「おいしそうな匂いがする」とかね。それから触覚、舌触りも、実際にお口の中でかんでみて味わえるわね。だけど味覚と視覚は、なかなか気付きにくいんですね。はなさんが、とてもおもしろい言い方をされて、「おいしい」とおっしゃる前に、「おいしそうに感じた」って言われたでしょう? それは味覚の前の感覚なの。食べる前に、見た目で「おいしそう」と感じたってこと。ここが、味覚と視覚の関係のおもしろさなんですね。

はなさん:
へぇ〜。

大日向先生:
味覚と視覚の関係について、とても鋭い指摘をされた北大路魯山人という方がいます。美食家としてとっても有名なんですけどね。お料理と器の関係について、こんなことを言ってらっしゃるんです。「料理と食器は密接な関係にある。料理は舌の先だけで味わうというふうに思っていたら、本当の料理はわかっていないんですよ」って言うのね。おいしくものを食べようとすれば、料理に伴って、それに連れ添う食器を選ぶことが大切だという、有名な言葉を残しているの。

はなさん:
おぉー。

大日向先生:
だから、はなさんが、お弁当箱に曲げわっぱを使って「おいしそう」と感じたのは、まさにこの北大路魯山人さんの心境にたどりついたのかなって、感心したのよ。

はなさん:
ふふふっ。

大日向先生:
もっとも、おいしそうに感じる器というのはお料理によっても違うし、その人の年齢によっても、時代や文化によっても、いろいろなんですって。ただね、お弁当箱というものに関して、はなさんは今、曲げわっぱで「おいしそうと感じた」とおっしゃったけれど、小さいときはどんなのが好きだった? 小さいときはお弁当箱、どんなのを使っていらした?

はなさん:
プラスチックで、キャラクターの絵が描いてあるような。

大日向先生:
そうよね。そういうのも、かわいくて好きだったでしょう? お弁当箱も用途によっていろいろなものがあってね。私も食器売り場なんかに行って見るのも好きです。きょうはスタジオに「鉄道」の梅原先生がいらっしゃるので、駅弁の器はどうなのかを、あとでお話をうかがえたらと思っているんですが、その前に、はなさんのご質問の、曲げわっぱがどうしておいしそうに見えるのかについて、少し考えてみますね。

はなさん:
はい。

大日向先生:
曲げわっぱは、材料が何か、わかる?

はなさん:
スギですよね。

大日向先生:
そう。スギとかヒノキの薄い板を曲げているから、「曲げわっぱ」と言っているのね。色がシンプルでしょう? だから視覚的に、どんなお料理も邪魔しないんですって。

はなさん:
あぁ……。

大日向先生:
和の魅力なんですって。はなさんは、曲げわっぱのお弁当に材料を盛りつけるとき、どんな工夫をしてらっしゃいます?

はなさん:
サンドイッチとかも多いんですけど、お弁当の中で半分は、お米の上に小さい梅干しをのっけて、半分は卵焼きとかピーマンとジャコのあえものとかをのせて……。

大日向先生:
すてきねぇ。想像しただけで、茶色もあるし赤もあるし緑もあって、その色が全部、スギとかヒノキで引き立つんだと思うのね。それから、曲げわっぱは比較的深みがあるでしょう? だから立体的に盛るというような、そういう工夫もできるかなって。

はなさん:
なるほど……。

大日向先生:
それからスギとかヒノキという木材は、水分を調整すると言われているのね。夏は水分を吸い取ってくれて、冬は水分を出してくれて、だからごはんがおいしそうになりますよって、言われているの。私なんかも曲げわっぱを使っていて、そういう知識があると、味わう前に、「夏だけど、水分を吸ってくれているんだ」とか、「冬だけど、水分を出してごはんがやわらかくなっているんだ」と頭で思って、なにかおいしく感じたりということもあるんですね。

はなさん:
へぇ〜。

大日向先生:
はなさんが、曲げわっぱの魅力に気付かれたということは、味覚と視覚という、五感の中でも比較的これまでは結び付きにくかった感覚、しかも、食べる前の情動に影響する視覚の重要性に気付かれたということですね。小さいときは、かわいいキャラクターのついた弁当箱が好きだったけど、和の魅力に気付かれた。大人の感性にも近づいて、大人の感性も育んでいらしたのかな。すてきだなって、このご質問をうかがったときに思ったんですけれども。

はなさん:
ありがとうございます!

大日向先生:
さっきちょっと触れたけれど、曲げわっぱ以外にも、いろいろなお弁当箱があるわよね。梅原先生がいらっしゃるので、駅弁のことも教えていただきましょうか。

はなさん:
はい。

梅原先生:
はい。はなさん、どうもこんにちは。

はなさん:
こんにちは。

梅原先生:
鉄道に乗ったときに、弁当を駅で買って食べたことはありますか?

はなさん:
小さいころにはあったと思うんですけど、最近ではスーパーで駅弁を買って、カニのお弁当を食べました。

梅原先生:
あぁ、そうですか! 駅弁フェアとかやっていますよね。中に入っているものがふだん食べないものだったりしておいしいのもあると思うんですけれど、入れ物もやっぱり工夫されていて、駅弁フェアでもたぶん売っていると思うんですけど(独特の器の)「釜めし」が……

はなさん:
あぁ!

梅原先生:
素焼きの容器で本当に釜めしみたいになっていますよね。この釜めしをプラスチックの容器に入れても普通のお弁当箱に入れても、たぶん同じ味だと思うんですけど、やっぱり釜めしは、あれに入っているといいなって思うんですよね。ほかにも、プラスチックの容器ですけど新幹線の格好をした駅弁もありますし、私は広島県出身ですけれど、しゃもじの格好をしたプラスチックの容器の中に、貝のカキのごはんが入っているお弁当もあります。駅弁の容器を持ち帰っても何にも使えないんですけれど、でもやっぱり列車で隣の人が食べていたりするとチラチラ見て「食べたいな」と思ったり、駅で売っていると「買って食べたいなぁ」というのはありますよね。

はなさん:
はい。

大日向先生:
ありがとうございます。はなさんは、お弁当箱にお料理を詰めたところから、こういう質問を考えてくださったのね。私たちの暮らしの中で、いろいろな「なぜ」がいっぱいあって、そこから科学の問題を考えつくことができるから、考えることはとても楽しいし、丁寧に暮らしを紡いでいくのはすてきだなぁって、思いますね。

はなさん:
はい。

――はなさんのお弁当のお話で、ピーマンとジャコのあえものがおいしそうだなと思って聞いていました(笑)。プラスチックの容器も、液もれしないとかそのよさもありますね。いろいろな器でお料理を楽しめるといいかなと思います。はなさん、すてきな質問をくださってありがとうございました。

はなさん:
こちらこそ、教えていただいてありがとうございました。

――おなかが空いてきました(笑)。また是非質問を送ってくださいね。さようなら。

はなさん:
さよなら〜。

大日向先生:
さよなら〜。


【放送】
2023/07/23 「子ども科学電話相談」

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