たかはしかいとくん(小学2年生・沖縄県)からの質問に、「昆虫」の清水聡司先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
清水先生:清水聡司先生(大阪府営箕面公園昆虫館 副館長)
かいとくん:質問者
――お名前を教えてください。
かいとくん:
かいとです。
――どんな質問ですか?
かいとくん:
なんでニシキオオツバメガは毒を持っているのか、教えてください。
――かいとくんは、ニシキオオツバメガを何かで見たことがあるのですか?
かいとくん:
本に載ってた。
――そうなんですね。では教えていただきましょう。清水先生、お願いいたします。
清水先生:
はい。かいとくん、こんにちは。
かいとくん:
こんにちは。
清水先生:
図鑑かなんかで見た?
かいとくん:
うん。
清水先生:
「毒を持っています」っていうふうに書いてた?
かいとくん:
うん。
清水先生:
理由は書いてなかった?
かいとくん:
書いてたけど読んでない。
清水先生:
あっ、読んでないんか(笑)。はい、わかりました。ニシキオオツバメガ、どの辺りにいるガなのかは、覚えていますか?
かいとくん:
読んでなーい。
清水先生:
読んでなーいか、そうか。「きれいなガやなぁ」と思って見てた? すっごいきれいなガやからね。黒地にキラッキラの緑の帯が入ってたりとか。
かいとくん:
なんか毒があるとか・・・
清水先生:
ニシキオオツバメガに限らず、毒を持っている昆虫なんかも多いんやけれども、マダガスカルっていう島は、わかる?
かいとくん:
……。
清水先生:
遠くのほうやな。アフリカのほうの東側にある島ですけれども、そこにいるガなのね。それでこのガは、昼間に活動するの。ガっていうと、夜、活動するイメージが強いやんか?
かいとくん:
……。
清水先生:
あんまりそれは考えたことない?
かいとくん:
うん。
清水先生:
そっか。昼間に動き回るということは、いろいろな敵に狙われやすくなっちゃうのよ。同じように空を飛ぶ生き物って、いるよね。
かいとくん:
うん。コウモリとか。
清水先生:
コウモリは夜やな。夜行性は夜行性で、そう、コウモリ対策をしているガなんかもいっぱいいるんやけれども、昼間は例えば鳥なんかに狙われやすくなるし、樹上性のトカゲとかいろいろな天敵がいると思います。毒を持っているということは、例えばかいとくんは、毒を持っている生き物を食べたいですか?
かいとくん:
食べたくアリマセンヨ〜。
清水先生:
ねぇ(笑)。答えが出ましたね、そうです。毒を持っているので、敵に狙われにくくなるんです。生き残る可能性が高くなるという理由で、毒を持っているというふうに考えてもらったらいいと思います。ただね、毒を持っているから絶対食べられないかというと、実はそうではないのね。
かいとくん:
え〜?
清水先生:
だってね、かいとくん。このガは毒を持っていると知らなかったら、かいとくんは食べへんかもしれへんけど、食べちゃうよね。
かいとくん:
食べれないヨ〜。
清水先生:
じゃあ、かいとくんが、もし野生の生き物だったとして、野生の生き物のかいとくんは、ガとか昆虫が大好きです。そこに、このきれいな目立つガが現れました。そしたら、おいしそうで食べちゃったりするかもしれない。
かいとくん:
ふふっ。
清水先生:
1回食べるとおいしくないのがわかるので、そのときに、ニシキオオツバメガはすごく派手なガでしょう? だから、かいとくん、2度と忘れへんよね。
かいとくん:
ん? 忘れちゃう。
清水先生:
忘れちゃう? できたら忘れてほしくないんやけど(笑)、次からは、こういう模様の派手なガを見たら食べなくなる、学習してくれるので、そのために、このガは毒を持っています。最初の、覚えられていないうちは食べられちゃうかもしれないけど、全体として、食べられる確率がすごく下がるという……
かいとくん:
でも、昆虫って食べられないヨ。
清水先生:
そうか? 結構、昆虫は、いろんな生き物の食べ物として、餌資源として利用されるのね。だから昆虫は、すごく狙われやすい生き物なのよ。かいとくんは、あんまり昆虫は食べたくないみたいだから狙わないかもしれないけど、野生の生き物にとっては、昆虫はすごくおいしいごはん、自分が生きていくために大事な食べ物なんです。かいとくんの周りにも、同じように毒を持ったガとかチョウが住んでいるのは知っていますか?
かいとくん:
うわ〜お。
清水先生:
その前に、ニシキオオツバメガは毒をどこからもらっているかという、そっちの話を先にしとかなきゃね。幼虫が食べる葉っぱ、植物に、毒があるのね。それを体にため込んで、自分自身が毒の虫になって食べられないようにするんやけれども、似たようなことをしている昆虫が沖縄にもいます。かいとくん、沖縄なので覚えといてください。オオゴマダラというチョウチョ、知ってますか?
かいとくん:
知ってる! 4299回ぐらい。
清水先生:
そっか、そんなに聞いたことあるか。オオゴマダラが毒を持っているというのも、知ってる?
かいとくん:
ん? そうなんだ。
清水先生:
うん、そうなのよ。だからね、かいとくん、つまんで食べないようにしてください。
かいとくん:
わぁ〜お。
清水先生:
それは冗談ですけれども(笑)。おいしくなくて、食べるとちょっと苦しくなっちゃったり吐き気がしたり、そういう系統の毒だと言われています。ただ絶対食べられてしまわないわけではなくて、さっきと一緒で、覚えてもらえるまでは食べられちゃうこともあるし、あとは例えばカマキリなんかは平気で食べちゃったり、生き物によって、相手によって、その毒を警戒して「ダメや」と思ってくれるのもいるし、思ってくれないというか、平気で食べちゃうのもいるのね。
あともう1つぐらい、沖縄なので覚えとこうか。オキナワルリチラシというガがいます。ニシキオオツバメガほど大きくないけれども、すごくきれいなガなので、後でちょっと調べてもらったらいいと思うんですけれども、マダラガ科のガで、それは食べ物から体の毒を作るのではなくて、体の中で合成しちゃうみたいです。
かいとくん:
えっ……。
清水先生:
毒を取り込むんじゃなくて、それを材料にして自分の体の中で「青酸配糖体」という結構な毒を作っちゃいます。そんな毒を持って身を守るチョウとかガが意外といるので、かいとくん、また興味を持って調べてみてください。昼間の危険な敵の多い中で活動するために獲得した、特技みたいな、個性みたいなものだね。
――個性だそうですよ。かいとくん、わかりましたか?
かいとくん:
うん。
――よかったです。沖縄にもいろいろな昆虫がいるそうなので、観察してみてください。質問してくれてありがとうございました。
かいとくん:
ありがとうございました。
――さようなら。
かいとくん:
サヨウナラ〜。
清水先生:
さよなら〜。
【放送】
2023/07/09 「子ども科学電話相談」