11時台を聴く
23/09/03まで

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ふじいゆうかさん(小学4年生・岩手県)からの質問に、「動物」の成島悦雄先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)

【出演者】
成島先生:成島悦雄先生(元・井の頭自然文化園園長/獣医師)
ゆうかさん:質問者


――お名前を教えてください。

ゆうかさん:
ゆうかです。

――ゆうかさんは、どんなことが聞きたいですか?

ゆうかさん:
どうしてコアラやパンダは葉っぱしか食べていないのに、すくすく育つのですか?

――コアラやパンダは体がしっかりしていますものね。教えていただきましょう。成島先生、お願いいたします。

成島先生:
はい。ゆうかさん、こんにちは。

ゆうかさん:
こんにちは。

成島先生:
コアラやパンダは、葉っぱしか食べてないのにすくすく育っているよね。ゆうかさんは、葉っぱだけじゃなくてお肉も食べていますか?

ゆうかさん:
はい。

成島先生:
そうだよね、バランスよく、いろんなものを食べますよね。コアラやパンダは本当に葉っぱしか食べないよね。コアラは何を食べているか、知ってる?

ゆうかさん:
はい。ユーカリの葉です。

成島先生:
うん。ユーカリの葉、だけだよね。本当に偏食もはなはだしいですよね。パンダは何を食べてる?

ゆうかさん:
ささの葉。

成島先生:
そうだね。ささの葉とか竹の葉とか、あるいはたけのこも大好きなんだよ。でもね、パンダは何の仲間だか、知っていますか?

ゆうかさん:
わかりません。

成島先生:
あのね、クマの仲間なんです。岩手県だとツキノワグマがいるでしょう?

ゆうかさん:
はい。

成島先生:
パンダも同じようにクマの仲間なんです。クマの仲間ということは、お肉も食べるけれども植物、果物なんかも食べるということで、雑食の動物なんですね。「雑食獣」ともいいます。パンダは99%ぐらい、メインはささやたけのこなどの植物ですけれども、それ以外に、場合によっては例えばネズミを捕まえるとか鳥の卵を食べるとかして、動物質もたまには食べるんです。だからコアラほど偏食ではないんですけれども、メインはやっぱり、竹とかたけのこだよね。彼らがどうして偏食でやっていけるかということなんですけれども、まず、コアラから考えてみましょうか。

ゆうかさん:
はい。

成島先生:
コアラはユーカリしか食べませんよね。なぜだと思う? なんでコアラはユーカリだけ食べるようになったと思いますか?

ゆうかさん:
ユーカリは栄養があるからだと思います。

成島先生:
あぁ。結構ね……それほど栄養はないらしいんだけれども、ユーカリには、ユーカリ油という油が含まれていたり、タンニンというのがあったり、シアンという毒が含まれていることもあるんですね。だからあんまり動物の食べ物としては適していないんです。

ゆうかさん:
そうなんですか。

成島先生:
うん。だから他の動物が食べないわけ。ということは、コアラが独占できるわけです。コアラが、食べ物を巡って他の動物と争う必要がないんだよね。そのかわり、油があったりタンニンがあったり毒があったりということで、とっても食べにくい。だから他の動物もユーカリをたぶん食べたいと思っているんだろうけれども、食べると結構、おなかを壊しちゃったりするので敬遠しているんです。そこでコアラは、長い進化の中で、ユーカリを食べるために体のつくりを変えちゃったんだよね。

ゆうかさん:
そうなんですか!

成島先生:
うん。盲腸って、知ってる?

ゆうかさん:
はい。

成島先生:
僕たちも、ちっちゃい盲腸を持っているよね。コアラの場合は、哺乳類で一番長いと言われている盲腸を持っているんです。

ゆうかさん:
へぇ〜。

成島先生:
2メートルあるんだって。すごいよね、大きいよね。おじさん、コアラの解剖をしたことがあるんですけど、あんなにちっちゃいのに、おなかを開けるとバーンと盲腸が出てくるんですよ。

ゆうかさん:
へぇ……。

成島先生:
すごく大きいの。それでその長い盲腸の中で、ユーカリの葉を発酵させて消化できるようにしたり、あるいは毒素を分解しているんです。そのかわり、それはものすごく時間がかかるんだって。1日のうちの80%ぐらいかな、18〜20時間ぐらい盲腸で消化しないと、栄養にならないんですって。だから、コアラはよく眠るって言われるじゃないですか。

ゆうかさん:
はい。

成島先生:
あ、ごめんなさい、今ちょっと言い方が間違ったかな……。18〜20時間くらいは眠っているんです。その眠っている間に、盲腸で消化してもらっているらしいんだよ。

ゆうかさん:
へぇー。

成島先生:
ユーカリから得られる栄養があまりないので、その時間を消化に使って、自分はリラックスしているというか眠ってるんですって。それで盲腸には、特別な微生物が住んでいるんです。それはユーカリの毒を分解するのに、すごく役に立っているんだって。

ゆうかさん:
へぇ……。

成島先生:
コアラの赤ちゃんは、お母さんから、ユーカリの毒を分解してくれる微生物をもらうんですけれども、もらい方がすごくすてきなんです。おもしろいの。どうやってもらうかというと、おじさんはビデオでしか見たことがないんですけれども、コアラの赤ちゃんがお母さんのおなかを、頭でツンツンと動かすんです。するとお母さんが、ウンチをするんですよ。始めは普通のかたいウンチなんだけど、それがだんだん、盲腸に入っているウンチを「盲腸便」と言うんですけれども、その盲腸便を出してくるの。すごくやわらかいんです。それが出てくると、コアラの赤ちゃんはおいしそうに一生懸命食べるのよ。

ゆうかさん:
そうなんですか!

成島先生:
うん。盲腸便のことを「パップ」というんですけど、それはコアラの赤ちゃんにとっては離乳食なんだね。それを食べて、自分の盲腸にその微生物を居つかせることによって、自分も離乳してユーカリの葉っぱを食べられるように、食べても大丈夫なようになると言われています。これがコアラですね。

ゆうかさん:
はい。

成島先生:
次、パンダです。パンダの食べ物というのは、竹やささや、たけのこだと言いましたね。大体1日に10〜20kgぐらい、とてもたくさん食べるんです。パンダももともとは雑食獣だったので、いろんな動物も食べていたわけです。でもやっぱり食べ物を巡っての争いは結構大変なので、だけど竹は誰も食べないから、パンダは「あっ、これはいい食べ物を見つけた」というので、竹に特化するようになったんです。

ゆうかさん:
へぇー。

成島先生:
それが大体、今から200万年ぐらい前らしいですよ。それまでは、パンダのご先祖様は他のクマと同じ仲間だったので、動物も食べれば植物も食べていた。ところが今から200万〜240万年ぐらい前に、草、植物を食べるように体の形を変えたらしいんです。そのかわり、竹もあんまり栄養が多くないので、たくさん食べなきゃならない。たくさん食べて、たくさんウンチをするようになっちゃったんです。

コアラは盲腸に特別な微生物が住んでいると言いましたけど、パンダも、もしかすると小腸とか大腸に特別な微生物が住んでいて、その微生物が消化してくれるんじゃないかなって、みんな、そう思うわけですよね。それで世界中の科学者がフンを培養していろいろ調べているんですが、「これがそうだ」っていうのは残念ながらまだ見つかっていないんです。今のところは、クエスチョンなんですね。おじさんが読んだ論文だと、中国の科学者が、ウシとかシカとか、いわゆる反すう動物が持っているような、植物を分解してくれる微生物を持っているらしいということを報告しているんですけれども、その人は、「これだ! こういう微生物です」とは、まだ言っていないんです。

もしかするとそういう微生物を持っているかもしれないけれども、今のところはよくわからない。でもいずれにしても、パンダは栄養の少ない植物を食べているので、たくさん食べてたくさんウンチをしている。要するに、あまり消化しないでウンチをしているんですって。だからパンダのウンチを見ると、結構、植物の繊維がいっぱい残っているんです。それでクマのウンチは結構くさいんだけれども、パンダのウンチはいいにおいがするの、すごく。

ゆうかさん:
ふふっ。

成島先生:
緑でね、おじさんも、かいだことあるんだけど、全然イヤなにおいじゃないの。もちろん汚ないから、みんながやっちゃ駄目だけど、おじさんはお仕事で、動物園で獣医さんをやっていたので、パンダの病気を治すときに「ウンチはどうかな?」っていうので検査したことがあるんですけれども、とってもいいにおいでした。それもやっぱり、十分に分解、消化をしていないという証拠だと思いますね。

そういうわけで、コアラとかパンダは、他の動物が食べない餌を食べることによって、他の動物と餌を巡ってケンカをしないようになったのね。そのかわり、それは特別な餌なので何か特別なことをしなきゃいけない。コアラの場合には、盲腸を長くしてそこに微生物を住まわせている。パンダの場合は、たくさん食べてたくさんウンチをする。それでなんとか栄養をとっているということなんです。よろしいですかね。

ゆうかさん:
はい。

――おいしいのかな、好きなのかなと思ってましたけど、そうじゃないんですね。

成島先生:
彼らは「おいしい」とは思っていると思いますけどね(笑)。

――ゆうかさん、わかりましたか?

ゆうかさん:
はい、わかりました。

――質問してくださってありがとうございました。

ゆうかさん:
ありがとうございました。

――さようなら。

ゆうかさん:
さよなら〜。

成島先生:
さよなら〜。


【放送】
2023/07/09 「子ども科学電話相談」

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