しみずさきさん(小学3年生・愛知県)からの質問に、「水中の生物」の林公義先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
林先生:林公義先生(北里大学海洋生命科学部講師)
さきさん:質問者
――お名前を教えてください。
さきさん:
さきです。
――さきさんは、どんなことが聞きたいですか?
さきさん:
カエルは、オタマジャクシのときは水の中にいるのに、大人のカエルになるとなぜわざわざ陸の上に上がったりするのですか? 子どもと一緒に水の中にいればいいのにと思いました。
――「ずっと子どもと一緒にいればいいのに」って、思ったんですねぇ。さきさんは、オタマジャクシとかカエルを実際に見たことはありますか?
さきさん:
歩いているときに見ました。
――わかりました。では林先生、お願いします。
林先生:
はい。さきさん、こんにちは。
さきさん:
こんにちは。
林先生:
さきさんが住んでいるところのそばでは、まだカエルやオタマジャクシをたくさん見ることができるんだね。いいところに住んでいますね。親のカエルと子どものオタマジャクシは、見ていると一緒に住んでいることは絶対にないよね。さきさんは、一緒に住むほうがいいと思う?
さきさん:
はい、いいと思います。
林先生:
あぁ、そうだね。一緒に住むとしたら、水の中のほうがいいですか、それとも親のカエルがいる陸のほうがいいですか?
さきさん:
水の中のほうがいいと思います。
林先生:
どうして?
さきさん:
水の中のほうが子どももなれていると思うからです。
林先生:
なるほどー、そうか。それは非常にいい考え方ですね。ところがね、残念ながら今のカエルは、子どもと親が住む場所が違っているので、どう頑張っても両方一緒に住むのは難しいんです。
さきさん:
ふーん……。
林先生:
でもね、例えばさきさんが、おうちで水槽にオタマジャクシと親になったカエルが住めるような、水もあるけど親のカエルが陸に上がって葉っぱなんかにつく、または岩の上にのるような環境をもし作ってあげるとしたら、それは両方同時に飼うことができると思います。だけど自然界では、一緒に住むことはないんですよ。これはなぜかというと……大昔の話から始めなくちゃいけない。大昔って何億年も前の話なんだけど、その前に……今、水の中や陸上にはいろんな動物がたくさんいるんだけど、グループというのがあるんだよね。お魚は「魚類」、鳥は「鳥類」というんだね。
さきさん:
あっ、鳥類!
林先生:
うん。じゃあね、ヘビやカメの仲間は?
さきさん:
カメ……。
林先生:
これは、「は虫類」。
さきさん:
あっ、うーん。
林先生:
さきさん、3年生だから、これからどんどんそういうことをいっぱい覚えていくと思います。さて、さきさんの質問にあったカエルなんだけど、サンショウウオは知ってる?
さきさん:
知りません。
林先生:
イモリは?
さきさん:
うーんと……聞いたことはある。
林先生:
今度もし図鑑なんかがあったら、どんな格好をしている動物なのか見てください。実はカエルとサンショウウオやイモリは同じグループで、このグループのことを「両生類」というんです。
さきさん:
ふうん。
林先生:
両生類は漢字で書くと、両方の「両」、両手の「両」、これは「2つある」という意味ね。それから「生」は、生き物、生物の「生」です。つまり両生類は、両方の生活、「生」は生き物であると同時に生活している場所を表しますから、「水と陸の両方の場所に住むことができる生き物」という意味なんですよね。例えば、大人のカエルはどっち側? 陸側かな、水側かな。
さきさん:
陸側。
林先生:
そうですね。じゃあ、オタマジャクシはどこに住んでいますか?
さきさん:
水。
林先生:
水の中、そうですね。その両方を住みわけられる、両生類というグループがあるんです。
さきさん:
あぁ。
林先生:
それでね、地球が誕生して、あるとき生命が地球の中に生まれたわけだよね。その生命が、水の中から陸で生活するような動物になるまでには、ものすごく長い歴史、「進化」というんだけど、そういう歴史があるわけ。カエルとかサンショウウオ、イモリだとかの両生類は、今から約3億年前の古生代という時代に、魚類、水の中にいた魚から進化したといわれています。だからカエルの仲間は魚から誕生したということなんです。
さきさん:
あぁ〜。
林先生:
今、魚で陸上にいるのは何かいるかな? いないよね。ほとんどが水の中だよね。
さきさん:
キンギョとか?
林先生:
あっ、キンギョは陸上にいるけど、水の中で生活しているね。陸地では、空気呼吸じゃないと駄目なの。肺呼吸じゃないと陸では住めないでしょう? お魚はエラで呼吸をしているから、エラ呼吸だから、水の中でしか生活できないわけ。
さきさん:
ふうん。
林先生:
そういう状態からいうと、ヘビなんかはどうかな? 陸に上がって、水の中にはあまり入らないでしょ。水の中にいる生き物を取って食べるヘビもいるんだけどね。は虫類の仲間は、カエルのほうからヘビのほうに進化していったというふうにいわれているんです。だからカエルは、魚と、ヘビなんかの仲間のは虫類の、ちょうど中間にいるわけね。
さきさん:
ふぅん。
林先生:
答えを言っちゃいますと、どうしてカエルは一生を陸上で過ごせないのかというと、まずカエルの卵やオタマジャクシである「幼生」というのは、水を必要としているわけです。だから一生をとおして陸上で暮らすことはできませんよね。なぜかと言うと、陸上は水のように湿った環境じゃなくて乾燥しているでしょう?
さきさん:
うん。
林先生:
カエルの卵はゼリー状の膜に包まれていて、それは乾燥にすごく弱いわけだよね。だから多くの種類のカエルは、水の中に卵を産む。中にはアオガエルの仲間でモリアオガエルという、木の葉っぱの上に卵を産むカエルもいるんだけれども、ネバネバした、水分をたっぷり含んだ綿のような中で、卵が湿気をちゃんと使いながら生活できています。その下には必ず池があって、水の近くなんだよね。 ほとんどのカエルは水の近くにいるでしょう?
さきさん:
はい。
林先生:
湿った場所、または水のあるようなところじゃないと、どうしても卵がうまく産めないというか、卵を育てることができないというのが1つあります。卵から生まれた幼生は、魚と同じような生活、つまり空気を必要とするんだけど、水の中に溶け込んでいる酸素を使うわけです。それで呼吸をしている。だからオタマジャクシはエラ呼吸、大人のカエルは肺があるから肺呼吸ということです。ですからこの時期、幼生、つまりオタマジャクシは、どうしても水から外れることができない。移動するにも、親のカエルのように4本の足はないから、尾っぽを使って魚のように泳ぐんだよね。それで移動して、エサのあるところへ行ったり隠れたりするわけだ。
カエルというのは魚から進化してきたものなので、まだ水の中で生活する部分と、陸に上がって生活する親の部分の、2つの生活史を使っているわけです。だからどちらか一方にというのは難しいのね。親のカエルは陸上で生活し、子どものカエル、オタマジャクシは水の中ということになります。両方の場所で、あるいはどっちかでも、(一緒には)住めないということになりますね。
さきさん:
はい。
――さきさん、わかりましたか?
さきさん:
はい。
――よく観察して質問してくれて、ありがとうございました。
さきさん:
ありがとうございました。
――またぜひ質問を送ってくださいね。さようなら。
さきさん:
さよなら〜。
林先生:
さよなら〜。
【放送】
2023/07/02 「子ども科学電話相談」