おぎのことこさん(小学2年生・埼玉県)からの質問に、「植物」の田中修先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
田中先生:田中修先生(甲南大学特別客員教授)
ことこさん:質問者
――お名前を教えてください。
ことこさん:
ことこです。
――ことこさんは、どんなことが聞きたいですか?
ことこさん:
学校でタンポポをやったんですが、タンポポとタネはどうして一緒にくっついて飛ぶんですか?
――ことこさん、学校でタンポポを育てているの?
ことこさん:
育てているのではなくて、学校で勉強して気になったことです。
――学校でタンポポのことをお勉強して、不思議だなと思ったんですね。では教えていただきましょう。田中先生、お願いいたします。
田中先生:
ことこさん、こんにちは。
ことこさん:
こんにちは。
田中先生:
「タネと一緒に飛んでいく」というのは、ふわふわの綿毛のことを言っているのかな?
ことこさん:
はい。
田中先生:
「綿毛と一緒にタネが飛んでいくのは何でやろう」という質問ですか?
ことこさん:
はい。
田中先生:
わかりました。綿毛の下にある粒がタネだということ、知ってるんやね?
ことこさん:
はい。
田中先生:
あの粒の中にタネが入っていて、タネが飛んでいくんやね。タンポポが、あれを綿毛にくっつけて風にのせて飛ばしてるというのは、タネを遠くへ飛ばしたいんや。綿毛がついてると、風にのって遠くへ飛んでいってくれるやろ? 遠くへ飛んでいったら、自分が育つ範囲が広がるでしょう?
ことこさん:
はい。
田中先生:
「もし、飛ばないで落ちたら?」って、考えてみて。丸い綿毛の中にタネがあるけれども、何個ぐらいタネがあるか、知ってるかな?
ことこさん:
知りません。
田中先生:
あれね、だいたい普通にその辺にあるセイヨウタンポポだと、1個の花で200個ぐらいあるんや。丸い1個の綿毛に、200本ぐらいあるんです。それが全部、飛ばんとその場に落ちてその200個ほどが発芽したら、窮屈で育たへんわね。花は何個も、3つも4つも咲くからね。全部が親の周りに落ちたら窮屈やから、タンポポは広い範囲に飛び散っていって、そこではびこってくれるほうがいいから、もっと外へ飛ばすんや。その意味はわかってくれるかな?
ことこさん:
はい。
田中先生:
そのために、「綿毛」と言うてるやつには大事な工夫が3つ込められているの。まず1つは、ふわふわやから風にのってビューッと飛んでいくやろ? ふわふわで、ええよね。あれをつけといたら、タネが遠くへ飛ぶ。もう1つ、綿毛ができてるときに観察してほしいのは、花が咲いてるときに綿毛ができてるのもあるけども、綿毛をつけてる、茎にあたるやつ、茎みたいに伸びてる「柄」があるやろ? あれが必ず花より高いところまで伸びてるんや。低いところにあるより高いところにあるほうが、風がピュッときたら飛んでいけるやろ?
ことこさん:
はい。
田中先生:
だから必ず、花より高い背丈のところに綿毛が広がるというのが、2つ目の工夫ね。
ことこさん:
はい。
田中先生:
そして3つ目の工夫は、あれが丸く広がるとき、観察したこと、あるか?
ことこさん:
あります。
田中先生:
あっ、あるんや! それを見た日というのは、必ず乾燥した日なんや。雨が降っているときにあれを広げてもボトッと落ちてしまって飛んでいけへんよね。だから綿毛が広がるときは、乾燥した日。ふわふわの綿毛で、必ず背丈は一番高いところへいって飛び始める。そして乾燥したときに、綿毛は丸くなって広がって飛べるようにするという、この3つの工夫を凝らして、タンポポはなるべく遠くで自分の子どものタネが育つようにしているの。ここまではいいかな?
ことこさん:
はい。
田中先生:
「ダンデライオン」って、聞いたことあるか?
ことこさん:
聞いたことありません。
田中先生:
あのね、タンポポは英語でダンデライオンっていうんや。何でかというと、タンポポの葉っぱ、知ってるやろ? ギザギザやろ?
ことこさん:
はい。
田中先生:
ライオンの口の中にある歯が、あんなんやと例えられてね。ダンデライオンというのはライオンの歯、口の中の歯という意味なんや。せっかく今、電話がつながってるからね、「ダンデライオン」って大きい声で言うて、タンポポの英語名、覚えてくれるか?
ことこさん:
ダンデライオン!
田中先生:
はい。こうしてタンポポはタネを飛び散らす努力をしてるんやけども、ほかの植物も、みんなそれぞれ遠くへタネを飛ばす工夫を凝らしているの。例えばホウセンカは知ってるかな? 栽培したこと、ないか?
ことこさん:
わかりません。
田中先生:
あぁ、そうか。あれはタネができたら自分でパーンと弾けて飛ばすんや。モミジなんかは羽みたいなものがついててね、これも木から落ちてくるとき、くるくると回りながらちょっと遠くへ飛ぶんや。タンポポは綿毛で自分のタネを遠くへ飛ばすという工夫を凝らしてるけど、どんな植物でもそれぞれタネを遠くへ飛ばして広い範囲で繁殖する工夫をしているから、タンポポだけじゃなくてほかの植物はどうしているのかなというような見方をしてくれたらいいね。動物にくっついていくやつもあるやろ?
ことこさん:
はい。
田中先生:
そういうふうにして、みんな遠くへ自分のタネを飛ばそう、持っていこうと努力をしているから、それぞれの植物でそんなのをまた考えたり観察したりしてみてください。いいですか?
ことこさん:
はい。
――ことこさんは、タンポポの綿毛をフウッと吹いたりしたことはありますか?
ことこさん:
あります。
――そのときに、ふわふわっと飛ぶ綿毛も見たりしたんですね。
ことこさん:
はい。
――そうですか。先生、先ほどホウセンカっておっしゃいましたけれど、これからの時期に見られたりしますか。
田中先生:
そうですね。夏から秋にかけて、たくさん花が咲いて大きな実がなるんです。触ったらパーンと弾けるので、英語で「私に触らんといて」という意味の「touch-me-not」という名前が付いているんです。
――「私に触らんといて〜」って、ホウセンカが(笑)。
田中先生:
触ったら弾けるし、自分が自然に弾けるのを待っといてほしいっていうね。
――そうなんですね。いろんなタネの飛ばし方が、植物にはあるんですね。
田中先生:
はい、そうですね。
――ことこさん、わかりましたか?
ことこさん:
はい。
――ことこさんは、タンポポのことをしっかりと勉強していましたね。
田中先生:
そうですね。葉っぱの形も知っててくれてね。「ライオンの歯」って、覚えといてください。
ことこさん:
はい。
――ことこさん、質問してくれてありがとうございました。
ことこさん:
ありがとうございました。
――また何か「どうかな?」と思うことがあったら、質問してくださいね。ありがとうございました。さようなら。
ことこさん:
さよなら〜。
田中先生:
さよなら〜。
【放送】
2023/07/02 「子ども科学電話相談」