おおくぼあいこさん(小学5年生・神奈川県)からの質問に、「天気・気象」の福田寛之先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
福田先生:福田寛之先生(気象予報士)
あいこさん:質問者
――お名前を教えてください。
あいこさん:
あいこです。
――どんな質問ですか?
あいこさん:
なぜ上空では偏西風が吹いているのに、違う方向から季節風が吹いてくるのですか?
――あいこさんは、どうしてこの質問が浮かんだんですか?
あいこさん:
塾で偏西風と季節風を習って、違う方向からどちらも吹いているのに、ぶつかったりとかどちらかが吹かなくなったりしないのかなと思ったからです。
――福田先生、お願いします。
福田先生:
はい。あいこさん、こんにちは。
あいこさん:
こんにちは。
福田先生:
気象予報士の福田です。よろしくお願いします。
あいこさん:
よろしくお願いします。
福田先生:
塾で偏西風とか季節風を習ったんですね。じゃあまず一緒に確認をしたいんですけど、偏西風はどんな風だと習いましたか?
あいこさん:
上空で西から東に吹く強い風です。
福田先生:
そのとおりです。偏西風は、漢字で「西に偏る風」と書くんですけど、1年中、地球の「中緯度」といって日本くらいのところが多いんですけど、そこを吹く風です。季節風も習ったということですが、こちらはどんな風というふうに習いましたか?
あいこさん:
季節で吹く方向が違って、例えば冬だったら北西から吹いてくる風で、夏だったら南東から吹いてくる風です。
福田先生:
すばらしいです。季節風、偏西風ともにそのとおりです。実は、あいこさんが答えてくれた言葉の中に、(質問の答えの)ヒントが隠されています。「上空」って、あいこさん言いましたよね。
あいこさん:
はい。
福田先生:
これが大きなポイントです。偏西風というのは、おっしゃるとおり西から東に向かって地球の周りをぐるぐる吹いている風で、どのくらいの上空かというと、季節によって変わるんですけど、だいたい1万メートルくらいの上空を吹いている風です。一方で季節風というのは、あいこさんが教えてくださったように、季節ごとに吹く代表的な風、この時期だったらだいたいこの方向から吹きやすいですよねという風で、地面、地上の近くを吹いています。ですから(偏西風と季節風の)大きな違いとして、吹いている高さが違うというのが1つあります。
あいこさん:
はい。
福田先生:
もう1つ、「スケール」というんですけど、吹いている規模が違います。季節風は大きなものでは日本からアジア地域ぐらいを吹くものもあるんですけど、偏西風は地球レベルの話なので、すごくスケールが違うということが重要です。ここまでは大丈夫ですか?
あいこさん:
はい。
福田先生:
ですから1つの答えとしては、偏西風はすごく高いところを吹いているので、下のほうにはあまり影響しないということがあるんです。
あいこさん:
へぇ〜。
福田先生:
だから高いところでは西風なんですけど低いところで逆方向の風が吹いていても、それは両方、別々の方向でも成り立つ。大丈夫、ということになります。上のほうの風と下のほうの風(の向き)が違うという話で言いますと、実は1万メートル(上空)までいかなくても、例えば数百メートルぐらいでも、風向きは変わるんですよ。
あいこさん:
そうなんですか……。
福田先生:
そうなんです。例えば、あいこさんが立っている地上で南風が吹いていても、千メートルぐらい上では東風になっていたりということは日々あります。風というのは、上のほうまで同じように吹いているのかなと感じるかもしれないんですけど、少し高さが違うだけで、ばらばらになったりするんです。すごく専門的な言葉なんですけど、気象用語ではそれを「シア」と言います。
あいこさん:
シア?
福田先生:
ちょっと難しいので忘れちゃっても全然大丈夫なんですけど、シアと言ったりします。そういうふうに、風が上と下で違うとどういうことが起こるかというと、例えば風と風がぶつかりやすくなったり――あいこさん、風と風がぶつかるとどうなるかって、わかりますか?
あいこさん:
上昇気流とかが起きて、積乱雲ができたりする。
福田先生:
そうそう、そうです、そのとおりです。 積乱雲ができるということは風と風がぶつからなきゃいけないんですけど、方向の違う風がぶつかって起こることもあります。
あいこさん:
えっ……。
福田先生:
あいこさんは神奈川県にお住まいですね。夏、神奈川だと、おっしゃったように南東から、太平洋、三浦半島を回って暖かい風が吹いてくるんですけど、それとは別に、例えば上空で東のほうから風が吹いたりすると、ぶつかってもくもくと雲が発達することがあります。これは、上のほうと下のほうの風向きが違うことで起こるということになります。
あいこさん:
はい。
福田先生:
偏西風の話はもう少ししたいなと思っているんですけど、まず偏西風は高いところで吹いていて、なぜ下のほうではいろんな方向の風が吹くんですかというのは、風というのは、そもそも少しの高さの違いでも方角が違って吹くことがあるというのがあります。それによって雲が起きたりしますよというのは、ちょっと追加のお答えということになります。ここまでが、高さによって違うということなんですけど、実は偏西風と季節風では、なぜ吹くのかという原因も違うんですよ。
あいこさん:
あぁ、へぇ。
福田先生:
原因までは、塾で習わなかった?
あいこさん:
うーん……確か偏西風は地球の自転かなんかで。
福田先生:
すごいですね、そのとおりです。偏西風というのは地球レベルの出来事で、地球の赤道付近と北半球でいうと北極付近の温度の差と、地球の自転によって変わってきます。ちょっと難しいけど、そのあたりを説明しても大丈夫ですか? 聞きたいですか?
あいこさん:
はい、聞きたいです。
福田先生:
ありがとうございます。まず、気圧はわかりますか?
あいこさん:
はい。
福田先生:
高気圧と低気圧があるのはわかりますよね。風は高気圧から低気圧に吹く、気圧の高いほうから低いほうに吹くということも、ご存じですか?
あいこさん:
はい、知ってます。
福田先生:
そこまで知っていれば何となくイメージできると思うんですけど、赤道に近い南のほうほど、地球(の北半球で)は暖かいですよね。暖かくなると空気は膨らみます。なので赤道に近いほうの空気のほうが、熱くなります。気圧が高くなります。北極に行くほど気温が低いので、空気は膨らまないので薄くなります。気圧が低くなります。平均してみると、赤道付近から、北半球でしたら北極に向かって風が吹くんですけど、それが地球の自転の力で曲げられます。これが偏西風ということになります。
一方で季節風がなぜ吹くかというと、陸と海の性質の違いから吹きます。これは聞いたこと、ありますか?
あいこさん:
はい、あります。
福田先生:
じゃあ、ちょっと確認しながらいきましょうね。陸と海、どちらがあたたまりやすいとか冷めにくいとかは知っていますか?
あいこさん:
陸のほうが、あたたまりやすくて冷めやすい。
福田先生:
そうです。海はそれに比べて?
あいこさん:
あたたまりにくく、冷めにくい。
福田先生:
ということになります。ということは、陸は夏と冬で気温が大きく変わっちゃうんですけど、海はあまり変わらないんですよね。日本を含めたアジアの地図を思い浮かべてほしいんですけど、夏は強い太陽の日ざしによって、中国とかロシアがあるユーラシア大陸があたためられます。太平洋よりも気温が高くなります。地面付近なので、暖かい空気は上にのぼります。そうすると太平洋の空気がユーラシアのほうに流れ込んでいくので、南から北へ風が吹きやすくなります。反対に冬になると、陸は冷めやすいので寒くなります。ユーラシア大陸のほうが冷たいので、冷たいほうから暖かいほうに向かって北西の風が吹くというのが、平均するとそのようになりますよということになります。
それにしてもあいこさん、本当にすばらしいですね。ありがとうございます。あまり僕が解説することもなかったんですけど、もしかしてあいこさん、天気とか気象とかに興味あったりします?
あいこさん:
はい、あります。
福田先生:
あぁ、いいですね。ぜひ将来は気象予報士といわず研究者とかになってくれたら、まだ梅雨とか季節風とかはわかっていない部分も多いので、そういったところの研究もやってもらえたら非常にうれしいなと思いました。
あいこさん:
はい。
――あいこさん、これまできちんとお勉強されているのがよくわかりましたね。
福田先生:
そうですね。
――頼もしいなと思いました。あいこさん、どうですか、わかりましたか?
あいこさん:
はい、よくわかりました。
――質問してくださってありがとうございました。
あいこさん:
ありがとうございました。
福田先生:
またわからないことがあったらなんでも質問してください。
あいこさん:
はい。
――ありがとうございました。さようなら。
あいこさん:
さよなら〜。
福田先生:
さよなら〜。
【放送】
2023/06/25 「子ども科学電話相談」