いなだはやとくん(小学3年生・北海道)からの質問に、「鉄道」の梅原淳先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
梅原先生:梅原淳先生(鉄道ジャーナリスト)
はやとくん:質問者
――お名前を教えてください。
はやとくん:
はやとです。
――どんな質問ですか?
はやとくん:
この前、列車に乗ったときに、枕木に数字やマークが書かれているのを見ました。なぜ書かれているのですか?
――はやとくんは、それを北海道で見たんですか?
はやとくん:
はい。
――梅原先生、お願いします。
梅原先生:
いなだはやとさん、こんにちは。
はやとくん:
こんにちは。
梅原先生:
こんにちは、梅原です。北海道で列車に乗ったら、枕木に数字やマークが書かれていたんですね。まず皆さんに、枕木の説明をしましょう。枕木というのは、鉄道で2本のレールがずっと伸びておりますけれども、一般的な枕木というのは、2本のレールに対して直角に、しかもその2本のレールを結ぶように、その下に敷かれています。「枕木」というくらいですから、昔は木の板だったんですけれども、今はコンクリートだったり鉄だったり、プラスチックというのもあるんですね。レールに対してずっと「面」で敷かれているのではなくて、板になっているので少し飛び飛びに置かれています。
なんのためにあるのかというと、2本のレールが広がっていったり狭くなったりしないように、レールを一生懸命おさえているのと、それからそのレールの上を重い車両が通りますから、レールだけで支えていると、下の地面がレールの部分だけへこんでしまうんですけれども、枕木を敷くことで、均等にバランスよく重みが地面に伝わっていくというものなんですね。ということで、まず枕木の説明をいたしました。
それで枕木に数字やマークが書かれていたというんですけど、どんなマークや数字だったか覚えていますか?
はやとくん:
20とか30とか、○とか×とか書いてありました。
梅原先生:
はい、わかりました。鉄道会社によってもちょっとずつ違うんですけれども、私が昔、鉄道会社の人に聞いたことを言いますと、なぜ書かれているのかというと、線路の点検ですとか修理・補修をする人がいるんですけれども、この人たちのために書かれているものなんだそうです。
はやとくん:
へぇ〜。
梅原先生:
数字は何を表しているのかというと、多くの場合はレールの番号らしいんですね。例えば、どこそこのレールに傷がついたので取り替えようというときに、「あの辺のレール、替えて」と言われても「あの辺ってどこ?」ってなりますよね。ところがレールに番号をつけておくと、例えばレールには、25メートルとか最近は150メートルとかいろいろありますけれども継ぎ目があるので、駅から始まって何番目なのかレールに印をつける、レールに数字を書けばいいんですが、車輪が通って削れていったり見えなかったりして、わからなくなることがあるんですね。それで、継ぎ目のある枕木のところに数字を書いておけばいいということで、書いているらしいんです。
はやとくん:
へぇ〜。
梅原先生:
10とか20というのは、本当は1とか2番目なんだけれども10倍の数にしているという会社もあるらしいんですけれども、そのまま1とか2というふうにしているところもあって、その辺は鉄道会社ごとにあるらしいです。
はやとくん:
はい。
梅原先生:
それからもう1つ、○とか×も、線路をメンテナンスする人たち向けなんですけれども、枕木の下に砂利があるのは知ってますよね。
はやとくん:
はい。
梅原先生:
だいたいの場合、線路には砂利が敷いてあるんですけれども、レールと枕木というのは砂利の上に単に載っているだけなので、砂利がどんどん崩れてしまうと、線路も傾いていってしまう。これを直していくんですけれども、それはどうするかというと、砂利を積み直すんですね。昔はツルハシというものを使ってつき固めていったんですけれども、今は機械でやります。どうするかというと、車両がやってきて、枕木と枕木の間に、大きなカニのツメみたいなものを上から下へ砂利に向かって刺して、線路ごと持ち上げるんです。そうして砂利をまたうまく積み直すんですけれども、それがどこでもできるかというとそうではなくて、例えば線路の下に電線があったり、枕木と枕木の間隔が少し狭くてそのツメが入らないとか、そういうところには×をつけて、ここは機械を入れてはダメですよというような印にすることが多いそうです。それをわからないで機械でやってしまうと、線路を壊しちゃいました、なんてことになるからなんだそうですね。
はやとくん:
へぇ〜。
梅原先生:
あともう1つ、たまに英語が書いてあることもあるんですよ。見たことありますか?
はやとくん:
ありません。
梅原先生:
よく見るのが、BTCとかBCCと書いてあるんですけど、BTCというのは、「Beginning of Transition Curve」といって、これは「緩和曲線」、直線からカーブにかかるときにゆるやかに徐々にカーブがついていく部分があって、そこが始まりますよという印なんですね。BCCというのは、「Beginning of Circular Curve」、要するに「円曲線」、本式のカーブが始まりますよというところなんです。
カーブがここから始まるとか、そんなの当たり前じゃないかと、思うじゃないですか。ところがですね、砂利の上に単に(レールと枕木が)載っている鉄道というのは、車両が走ってくると、線路が動くのでカーブがどこから始まるかがわからなくなることがたまにあるんです。測量すればわかるんですけど、でも目で見ただけではわからなかったりするので、突然、カーブするところが直線になっちゃって、そのかわりどこかが引っ張られて突然急カーブができちゃって車両が脱線したなんてことが、本当に昔あったんです。実は今でもたまにあったりするんですけど、そういうことがないように、ここがカーブですよと、線路をメンテナンスする人にちゃんと教えているらしいんです。
はやとくん:
はい。
梅原先生:
枕木にはいろいろな情報が書ける、ということなんですね。どうでしょう。
はやとくん:
わかりました。
――補修などのために、わかりやすくするために書かれているんですね。
梅原先生:
そうですね。たぶんこれから先はQRコードみたいなものをつけてやるようになるのかもしれないんですけれども、そうすると今度は人間が見ただけではわからなかったりするので、読み取り機を持たないといけなくなるとか、やっぱり一番簡単な、ペンキで数字を書いたりするほうが確実なのかもしれないですね。
――それにしても、はやとくん、よく見つけましたねぇ。
はやとくん:
はい。
――これからもよく観察して、また何か不思議なことがあったら質問を送ってください。
はやとくん:
はい。
――質問くれてありがとうございました。
はやとくん:
ありがとうございました。
梅原先生:
ありがとうございます。
――さようなら。
はやとくん:
さよなら〜。
梅原先生:
さよなら〜。
【放送】
2023/06/11 「子ども科学電話相談」