り しんあいさん(小学6年生・富山県)からの質問に、「コンピューター・ロボット」の岡嶋裕史先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
岡嶋先生:岡嶋裕史先生(中央大学国際情報学部教授/学部長補佐)
しんあいさん:質問者
――お名前を教えてください。
しんあいさん:
しんあいです。
――どんな質問ですか?
しんあいさん:
いつか誕生するかもしれない、人工知能を持ったロボットについて教えてください。
――人工知能を持ったロボットのどんなことに興味があるんですか?
しんあいさん:
今ある「ChatGPT」を使ったことがあって、その機能がすごいなって思ったからです。
――どんどん新しいのが出ていますものね。岡嶋先生、お願いいたします。
岡嶋先生:
はい。よろしくお願いします。りさん、こんにちは。
しんあいさん:
よろしくお願いします。こんにちは。
岡嶋先生:
ロボットとか人工知能に興味を持っておられるんですね。
しんあいさん:
はい。
岡嶋先生:
ロボットって、どんなのを想像してらっしゃいます?
しんあいさん:
ロボットは機械だけどしゃべらないっていうイメージがあって、今回はAI、人工知能を持ったロボットだから、それにはどんなことがあるのかなぁって。
岡嶋先生:
なるほど、確かにそうですよね。最初ロボットを作ろうと思った人たちって、まず人型を考えたんですよ。
しんあいさん:
おー。
岡嶋先生:
でも人の形って、機械で作るとバランスが悪いんですよね。おっとっと……ってよろけちゃったりとか、歩くのが難しかったりとか。なので一時、人型にこだわらなくてもいいよねというので、人型じゃないものを作っていた時期もあったんですけれども、最近また人型がたくさん作られたりしています。
しんあいさん:
おぉ。
岡嶋先生:
人の形だと、結構いいことがあるんですよ。人間用に作られたエレベーターに乗れるとか、エスカレーターに乗って一緒に動けるとか、キャタピラーで動くようなロボットと比べると、やっぱり人型だと便利だなっていうことがあるので、今だいぶまた人型が作られるようになっています。すごく新しいロボットですと、本当によくできていますよ。動画とかニュースでやっているから、ご覧になったことがあるかもしれないですけど、「あの荷物、取って」とお願いすると、荷物を取って走ってくるとか。
しんあいさん:
あぁ、ありますね。
岡嶋先生:
ありますよね。渡れない道があると、棒を持ってきて平均台みたいに橋を架けてそこを走って渡ってきて、ポーンと荷物を投げて渡してくれたり、「こんなことまでできるようになったんだ、すごいなぁ」って思います。そのロボットに、さっき、ChatGPTって言ってくれましたけれども、対話型AIが搭載されてお話ができたら、友達みたいに使うこともできて楽しそうだなって、僕自身もすごくワクワクしています。そうしておしゃべりできるようなロボットができたときに、ロボットだったり対話型AIっていうのは作られたものなので、得意・不得意があります。だからその得意な分野で使ってあげる。不得意な分野ではあまり頼らないというのは、すごく大事なことなのかなと思います。
しんあいさん:
なるほど。
岡嶋先生:
でね、対話型のAIは、おしゃべりしてくれるじゃないですか。
しんあいさん:
うん。
岡嶋先生:
あのおしゃべりで、次はどんな言葉が出てくるのかっていうときに、何を重視して、大事に思って次の言葉が出てくるかっていうと、「尤度(ゆうど)」というのを使っているんです。「もっと(尤)もらしさの度合い」と書いて「尤度」というんですが、話すときに「もっともらしさ」を一番大事にしているの。
しんあいさん:
あっ、考えることができるって感じ?
岡嶋先生:
考えているというよりは、もとからの計算式に当てはめている感じなんですけど、「この言葉の次にどんな言葉がつながったら、一番もっともらしく聞こえるかな、みえるかな」というのを、すごく大事に計算しているんですよ。それで、「もっともらしいこと」と「正しいこと」は必ずしも同じではないから、そこは注意しながら使うといいと思う。
しんあいさん:
わかりました。
岡嶋先生:
例えばどういうことかと言うと、そうだな……これはね、人間の話もそうだから決して悪いことではないんです。対話型AIは人間の話をまねして作っているからさ。例えば、「きょうはいい天気ですね」って誰かに話しかけられたときに、「そうですね。風が気持ちいいですよね」とか答えると思うんですよ。もっともらしいですよね。「いい天気ですね」「うん、いいと思う」って言うのって、やりとりとして「もっともらしい」じゃないですか。対話型AIはそれをまねしている。
でも、それが正しいかどうかはわからない。人間の会話もそうです。「いい天気ですね」って言われて、「えー、そうですか? きょうは雲量5だから、本当にこれ、いい天気でいいんですか?」みたいに、正しさを追求するとケンカになると思うんですよ。なので対話型AIも、「正しい」というよりは、「もっともらしい」、ちゃんと会話がつながっていく、お話としてやりとりが気持ちいい、そういうことを考えて作られているんです。例えば、勉強を教えてくれるようなロボットを作って自分の家庭教師にしようとか思ったときに、本当に正しいことを言ってくれるかどうかはわからないから、そこは疑いの目を持ちながら使っていくのが大事かなと思います。
例えばこんなことがあったんです。今、問題になっているのが、大学生が対話型のAIを使ってレポートを書いてしまう。大学生の作文ですね。自分で書かなきゃいけないのに対話型AIに作ってもらう。楽して作っちゃうわけですよね。意外とそれを上手に作っちゃうから、「AIって頭いい!」って、結構みんな驚いたわけです。
しんあいさん:
うんうん。
岡嶋先生:
でも大学生が書くような作文だと、もっともらしい言葉が、もっともらしい順番で、もっともらしくつながっていると、「ふーん、すごいな。難しいこと書いてるぞ」って、思っちゃうわけですよ。
しんあいさん:
あっ、はい。
岡嶋先生:
だけど必ず正しいかというとそうでもない。それは、AIに子ども向けの、小学生とか幼稚園の子向けの知能検査……りさんは受けたこと、ありますか?
しんあいさん:
受けたことないと思います。
岡嶋先生:
なんかそういう検査があって、例えば、「Aさんがこんなことを言っている。Bさんがこんなことを言っている。Cさんがこんなことを言っている。1人だけうそをついています。誰がうそをついていますか?」みたいなテストなんです。幼稚園の子とか小学校の子が受けることがあるんですね。それを対話型AIに解かせてみると、大学生のレポートがあんなに上手に書けるんだから子ども向けのやつは解けるでしょうと思ってやると、意外と間違えるんですよ。あの人たちね、ボロボロ間違えるんです(笑)。
もっともらしい言葉をつないでいくのを大事にして作られているから、子ども向け、小学生さん向けの知能検査とかだと、ちゃんと「考える」ことと向き合わないと正解が出てこないようになっているので、そういうのは苦手にしています。「もっともらしさ」では、Aさん、Bさん、Cさんの誰がうそをついているかというのは正解が出てこないので、うまく当てられなかったりするんです。
だからそういう限界をよくわかったうえで、「AIはこれが得意だから、これに関してはこういう使い方をしよう。これは不得意だから、逆に自分がサポートしてあげるつもりで使ってみよう」とか、そんな使い方ができるといいんじゃないかなって思います。
しんあいさん:
なるほど!
――どうですか?
しんあいさん:
めっちゃわかりやすかったです。
岡嶋先生:
ほんとですか! ありがとうございます、うれしいー。ありがとう。
――岡嶋先生もちょっとニッコリしましたね。しんあいさん、またどうだろうと思うことがあったら、質問を送ってくださいね。
しんあいさん:
はい。
――ありがとうございました。
しんあいさん:
ありがとうございました。
岡嶋先生:
ありがとうございました。さよなら〜。
しんあいさん:
さよなら〜。
――さよなら〜。
【放送】
2023/06/04 「子ども科学電話相談」