ももだまひろくん(小学2年生・福岡県)からの質問に、「鳥」の川上和人先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
川上先生:川上和人先生(森林総合研究所 野生動物研究領域 鳥獣生態研究室長)
まひろくん:質問者
――お名前を教えてください。
まひろくん:
まひろです。
――どんな質問ですか?
まひろくん:
ハチドリは「蜜を吸わないと死ぬ」と書いてありました。朝も夜も蜜を吸うんですか? また、天敵が来たときや寝るときはどうするのですか?
――それは図鑑か何かに書いてあったんですか?
まひろくん:
はい。
――川上先生にお答えいただきましょう。お願いいたします。
川上先生:
どうもこんにちは、川上でーす。
まひろくん:
こんにちはー。
川上先生:
僕たちね、今、こうやって答えているけれども、11時くらいになるとおなかが空いてきてね。おやつを食べながら、さっきもおせんべい食べながら休憩したんです。まひろくんも、この時間、何かおやつを食べたりしてますか?
まひろくん:
食べてないです。
川上先生:
おやつを食べるときは、何が好きですか?
まひろくん:
グミとか。
川上先生:
グミ、いいねぇ。おいしいよね、甘くてね。僕も大好きです。質問は、おやつではなくて蜜ですね。花の蜜を食べるハチドリの話ですけれども、蜜を吸っていないと死んじゃうんだと、書いてあったんですね。
まひろくん:
はい。
川上先生:
ハチドリってどんな鳥なのか、知っていますか?
まひろくん:
ちょっと小さい鳥です。
川上先生:
そのとおりです。鳥の中で一番小さい鳥は、ハチドリの仲間だといわれています。
まひろくん:
一番ちっちゃいハチドリが6センチぐらい?
川上先生:
あっ、そうだね、すごく小さいんだよね。よく知ってますねぇ。体重もとても軽くて、2グラムとか3グラムしかないといわれています。
まひろくん:
へぇ〜。
川上先生:
他にも特徴があるのは知っていますか?
まひろくん:
くちばしが長かったり、あとそれ以外は……。
川上先生:
そう、くちばしが長いんだよね。花の蜜を吸うためにそうなっているんだというのは、聞いたこと、あります?
まひろくん:
ないです。
川上先生:
花の蜜が大好きで、花の中にくちばしを入れて吸いやすいように、くちばしが細長くなっているんだといわれています。
まひろくん:
ふぅ〜ん。
川上先生:
ハチドリは蜜を吸わないと死んじゃうんだ、たくさん吸わなきゃいけないといわれているけれども、どのぐらい食べるかというのを考えてみたいんだけれども、体重で考えたときに、自分の体重の何割ぐらいの食べ物を、1日に食べなきゃいけないと思いますか?
まひろくん:
うーん、わからない。
川上先生:
じゃあ、自分で考えてみようか。1日の自分の食べ物って、自分の体重と比べてどのくらいかな?
まひろくん:
うーん……。
川上先生:
自分の体重と同じくらい食べちゃう?
まひろくん:
そんなに食べきれない。
川上先生:
そんなに食べないよね。でもハチドリはね、なんと自分の体重の3倍以上の蜜を1日に食べるそうです。
まひろくん:
えーっ?
川上先生:
とんでもないよね。でも体が軽いから、あんまり体を重くしちゃうと飛べなくなっちゃうんです。
まひろくん:
あぁ。
川上先生:
だからあまり太ることができないんです。太ったら、例えば脂肪がついて……「脂肪」ってわかるかな?
まひろくん:
わからないです。
川上先生:
脂肪というのは、体の中に食べたものを蓄えておくことができるんですね。太っている人とかっていうのも、いるでしょう?
まひろくん:
うん。
川上先生:
太るとね、体に栄養分をためておくことができるんです。でもハチドリは体が小さすぎて、体にたくさん栄養分をためちゃうと重くて飛べなくなっちゃうんだって。
まひろくん:
えっ……。
川上先生:
全然飛べなくなるわけじゃないんだけれども、飛ぶのが大変になっちゃうんだって。だからあんまり太ることができないんです。なので毎日毎日、いっぱい食べ続けなければいけないということになります。ためておけないから、たくさん食べないと死んじゃうんだというふうにいわれているんですね。
まひろくん:
へぇ〜。
川上先生:
大変な生活だよね。でも、食べられないときってあるわけだよね。
まひろくん:
うん。
川上先生:
例えば夜はどうするのかというと、夜はもちろん食べることができないと思います。じゃあ、食べられないときっていうのはどうするのがいいと思いますか?
まひろくん:
食べないほうがいいと思う。
川上先生:
そう、食べないほうがいい。でも例えば、おやつを食べるときっていうのはどういうときかな?
まひろくん:
うーん、時間になったら?
川上先生:
時間になったら食べたくなるときもあると思うけど、例えばね、おなかが空いたら、食べたりするよね?
まひろくん:
うん。
川上先生:
だったら、おなかが空かないようにしないといけないよね。おなかが空かないようにすれば、たくさん食べずに済むということになるんだけれども、どうすれば、おなかが空かないと思う?
まひろくん:
うーん、いっぱい食べとけばいい。
川上先生:
いいね! いっぱい食べておくというのが1つの方法です。実はさっき、あんまりたくさん太れないんだという話をしたんだけれども……
まひろくん:
じゃあ、ちょうどいいくらい食べればいいのかな。
川上先生:
そうだね、ちょうどいいくらい食べられたらいいんだけれども、実はね、たくさん食べて太るときがあるんです。それはいつかというと、種類によるんだけれどもハチドリは渡り鳥なので、長い距離をたくさん飛んで渡らないといけないときがあります。そのあいだは海の上とかを飛ぶから、蜜を食べられないんだよね。
まひろくん:
あぁ、海には葉っぱとかが生えないから?
川上先生:
そうそう。海には花がないからね。
まひろくん:
海草ぐらいしか。
川上先生:
海草にはなかなか花の蜜はなさそうだしね。
まひろくん:
花が咲かない。
川上先生:
うん。花がないと困っちゃうから、そういう長距離を渡るときには太ることがあります。だから、「たくさん食べておく」というのは、正解! それともう1つ、方法があるんだよね。実はハチドリは飛ぶときにすごく翼を羽ばたかせるんです。羽ばたきの回数がすごく多いって、聞いたことある?
まひろくん:
ないない。
川上先生:
普通でも1秒間に50回ぐらい、翼を羽ばたかせるんだって。
まひろくん:
えっ、1秒に50回ってこと?
川上先生:
そう。自分でやろうと思ってもできないよね。「手を50回振ってみろ」って言われてもねぇ。そんなすごいスピードで振ってるんだよね。
まひろくん:
じゃあ、見えないかもしれない。
川上先生:
うん、もう見えない。どうやって羽ばたいているかなんて見えないくらいのスピードで羽ばたきます。それだけ羽ばたくから疲れちゃうんだけれども、じゃあ、運動しなければいいんだということになります。だから夜は、飛ばないで木に止まって休んでいるから大丈夫。もう1つ、大切なポイントがあるんだけれども、実はハチドリって体温が結構高くて、40℃くらいあったりするんだよね。
まひろくん:
40℃!
川上先生:
結構、あったかいでしょう? 体をあっためるためにも、実はエネルギーがいるんです。でもそのエネルギーが足りないときには、どうすればいいと思う?
まひろくん:
やっぱり食べないといけないのかなぁ。
川上先生:
でも夜だから、「食べられない」となっちゃった。ふだんは体温が40℃ある。じゃあ、夜はどうすればいいかな?
まひろくん:
うーん、花の近くに巣を作ればいいのかなぁ。
川上先生:
そういう方法もあるかもしれないね。でも、違うんだな。あのさ、動物で、「冬眠」って聞いたことある?
まひろくん:
冬眠! 聞いたことある。クマとか。
川上先生:
冬眠をする動物たち、例えばクマはね、体温をすごく下げちゃうんです。
まひろくん:
あ〜。
川上先生:
体を冷やすんだって。実はハチドリも体を冷やすことが知られていて、夜の間はまるで冬眠しているように、体温がどんどん下がっていきます。何度くらいまで下がると思う?
まひろくん:
うーん……。
川上先生:
想像できないかな?
まひろくん:
想像できない。
川上先生:
うん。一番寒いところにすんでいるハチドリは、とても寒い日だと夜になると体温が3℃になっちゃうんだって。3℃ってもう、凍りそうだよね。死んじゃうんじゃないかっていうくらい低くなります。
まひろくん:
人間だったら大丈夫そうだけど、ハチドリはちっちゃいし、大丈夫なのかなぁ。
川上先生:
心配になっちゃうよね。でもそれくらいまで体温を落として、エネルギーを使わないようにする。というので、花の蜜を吸えない時間も頑張れるんだって。すごいよね。なので、さっきの質問にあった、「蜜を吸わないと死んじゃうのか。夜はどうするのか」というのは、夜には体温を落として頑張る。そして、食べることができない渡りのときなんかは、ちょっと頑張って太って、食べられない時期を過ごすんだというふうに覚えてください。
まひろくん:
はーい。
川上先生:
だいたいわかった?
まひろくん:
だいたいわかった。
川上先生:
よかったです。
――先生、ハチドリ以外にも、そうやって体温を変えたりする鳥はいるんですか?
川上先生:
います。有名なのは、ヨタカという鳥も寒くなると体温を落とします。まひろくん、ヨタカって聞いたことある?
まひろくん:
聞いたことないです。あと、質問のときにさ、「天敵が来たときにはどうするのか」って言ったはずだけど。
川上先生:
あっ、そうだね。ゴメン! そのことについて答えるね。天敵が来たときっていうのは、ずっといるわけじゃなくて時々襲われるだけだし、(ハチドリは)昼間、ずっと飛び続けて食べ続けているわけじゃないんだよね。花の蜜を体重の3倍ぐらい食べなきゃいけないと言ったけれども、それはずっとずっと食べているわけじゃなくて……
まひろくん:
じゃあ、天敵が来たら1回逃げて、それでもう1回食べる?
川上先生:
そうそうそう。ハチドリがいるところなんかに行くと、電線に止まって休憩してたり、枝に止まって休憩してたりする姿がよく見られるんだよね。なので、短い時間だったら全然大丈夫なんだっていうふうに思ってください。「蜜を吸わないと死ぬ」と本に書いてあったというのは、ちょっとおおげさに書きすぎちゃっているかもしれないです。
――まひろくん、どうですか?
まひろくん:
結構わかった。
――よかったです! 川上先生が丁寧に説明してくださいましたね。またぜひ質問を送ってください。
まひろくん:
はーい。
――ありがとうございました。
まひろくん:
ありがとうございました。
――さよなら〜。
川上先生:
さよなら〜。
まひろくん:
さよなら〜。
【放送】
2023/05/28 「子ども科学電話相談」