おおくぼさとるくん(小学2年生・神奈川県)からの質問に、「水中の生物」の林公義先生が答えます。(司会・柘植恵水アナウンサー)
【出演者】
林先生:林公義先生(北里大学海洋生命科学部 講師)
さとるくん:質問者
――お名前を教えてください。
さとるくん:
さとるです。
――どんな質問ですか?
さとるくん:
メンダコは食べられるんですか、という質問です。
――さとるくんは、メンダコのことを何かで見たり読んだりしたんですか?
さとるくん:
漫画のような図鑑で読んで、「けっこう、マズイ」って書いてあったから、じゃあ、食べられるのかなぁって思って質問しました。
――そうなんですねぇ。では教えていただきましょう。林先生、お願いします。
林先生:
はい。さとるくん、こんにちは。
さとるくん:
こんにちはー。
林先生:
メンダコは、普通のミズダコのようにたくさんとれるタコではなくて、すんでいるところが深海だということですから珍しいタコの仲間なんですけれども、さとるくんは、メンダコそのものは見たりしたことはありますか?
さとるくん:
絵で見たことがあるし、折り紙でも折ったことがある。
林先生:
おっ、そうなんだ。へぇ~、折り紙で折れるんだ。
さとるくん:
そう。簡単。
林先生:
おじさん、知らなかった。簡単なのか、そうか、今度教えてもらいたいな。えっとね、実はおじさん、メンダコは知っているし、水族館で見たこともあるんだけど、残念ながら食べたことがないんですよ。もし食べさせてくれるところがあっても、なんとなく敬遠したくなっちゃいそうなタコなので、食べたことがないんだけれども、いろいろ水族館の人とかに聞いてみたんですよね。その内容も、少し話したいと思います。ところで、さとるくんはメンダコのことは何か知ってる?
さとるくん:
墨を吐かないとか、速く動くことができないとか。他にもあるけど……。
林先生:
今、この番組を聞いているお友達で、メンダコという名前は知っていても、どんなタコなんだろうっていうことがわかんない人もいると思うから、ちょっとメンダコそのものの説明もしてみたいんだけど、いいかな?
さとるくん:
はい。
林先生:
メンダコは、だいたい水深200~1000メートルくらいのところにすんでいるというのが、今、わかっているみたいです。それで、足が8本、タコだから。ところが足、「腕」って言うんだけど、それを全部伸ばすと、腕と腕の間に膜があるんだよね。その膜が、普通のタコだと根元のほうにしかないんだけれども、メンダコは足(腕)の先端のほうまであるんだよね。だからびろ~んと広げると、ちょっと傘みたいになる。それは知ってるかな?
さとるくん:
知らなかったです。
林先生:
それでね、タコって吸盤があるじゃない?
さとるくん:
はい。
林先生:
メンダコにも吸盤があるんだよね。普通のタコには、1つの腕に吸盤が何列あると思う?
さとるくん:
2列ぐらいじゃないですか。
林先生:
ところがメンダコは1列しかないんだって。
さとるくん:
1列だけ!?
林先生:
うん。ちょっと変わってるよね。それから、タコは墨を吐くでしょう?
さとるくん:
うん。でもメンダコは吐かない。
林先生:
そう。なんでだろう?
さとるくん:
深海だから、黒い墨だと見えないから。
林先生:
そのとおり。正解です。深海だと黒い墨はあんまり役に立たないよね。
さとるくん:
そう、暗いから。
林先生:
深海にすむ生物は、墨みたいなものを吐くとしても、その中に“発光液”っていうものが混じってたり、ばっと吐くと光るんだね。それでもって相手が驚いて逃げてしまうということがあるんだけど、メンダコは墨を吐かないという特徴があります。そんなところが、僕たちが知っている普通のタコとちょっと違うところだよね。全体的な形は、すごくかわいいじゃない?
さとるくん:
かわいい。
林先生:
ねぇ。だからメンダコをマスコットみたいにしてキーホルダーとかぬいぐるみにして、水族館のショップで売ってたりするよね。その胴の部分っていうか「頭」ってみんな言うんだけど、あそこに左右にちっちゃい丸い耳みたいなものがあるでしょう?
さとるくん:
あれは、ヒレ。
林先生:
そうそう、よく知ってるなぁ。今のさとるくんと僕の話で、聞いているお友達もだいたいメンダコの形を想像できたと思います。さて、さとるくんの最大の疑問、「食べられますか」ということなんだけど、えっとね……食べられることは食べられます。
さとるくん:
食べられる!
林先生:
うん。だけど人によって、味のこととか食感、食べたときの感じ方とかが少し違ってるんだよね。いろんな食べ方をした例があるので、ちょっと話してみるね。みりん干しって、知ってる?
さとるくん:
みりん干し?
林先生:
うん。イワシだとかイカだとかタコも……
さとるくん:
干物みたいな?
林先生:
そうそう。あれにして食べた人がいるんだって。
さとるくん:
えー。
林先生:
ところが食べてみたら……
さとるくん:
マズイ?
林先生:
肉が硬くなっちゃって、歯でかみきれないくらい硬くなっちゃったんだって。
さとるくん:
へぇ、ホホジロザメぐらいかな。
林先生:
それでね、チーズがくさったようなにおいがするんだって(笑)。ちょっと遠慮しちゃうね。それで、ビーフジャーキーって知ってる? 牛の肉を乾燥させたやつ。みりん干しの場合はあんな感じだったって。タコは、生でも食べるじゃないですか。
さとるくん:
食べる。
林先生:
わさびつけておしょうゆつけて食べるとおいしいよね。それで生食した人がいて、かみきるのがすごく難しかったって。あまりにも肉に水けが多くてぐにゃぐにゃして質感がとっても悪くて、気持ち悪くなったって。歯応えも悪い。
さとるくん:
へぇ~。
林先生:
それから、タコは活発に動くし、腕を使っていろいろな生き物をつかまえたりするので筋肉がたくさんついているでしょう? ところがメンダコは深海で生活しているから、深海の生物はだいたいそうなんだけど、筋肉の発達は非常に悪いんだよね。筋肉の中に水分がすごく多いから、そういう意味では、どうもダメみたい。それで加熱して食べた人は、縮んで小さくなっちゃったって。
さとるくん:
えっ、体が?
林先生:
そうそう。メンダコに熱湯をかけてゆでて食べようかと思ったんだけれども、やってみたらすごく体が縮んじゃって、硬くなって食べられなくなっちゃったって。
さとるくん:
うーん、まずいとそうなりそう。柔らかくなってもおかしくないのにね。
林先生:
それからね、最高に面白いやつ。たこ焼きってあるでしょう?
さとるくん:
うまい!
林先生:
うん。メンダコでたこ焼きに挑戦した人がいるらしいんだよ(笑)。
さとるくん:
えっ。
林先生:
そしたらね、たこ焼きって独特な食感があるよね。かむと柔らかい中にタコがこりっとあるような、あの感じが全くないって。
さとるくん:
ふーん。
林先生:
だから全くたこ焼きには通用しないと思いますって、あるアンケートの答えに書いてあったなぁ。それでね、多くの人がいろいろなことを言ってるんだけど、要するに、おいしくはないんだけれども、食べられなくはない。食べられなくはないんだけれども、食べたくないっていう(笑)、どうもそれが結論みたいです。どうですか、さとるくん、チャレンジしてみたい?
さとるくん:
そうですね……マダコぐらいなら食べたいですよね。
林先生:
普通のタコを食べてたほうがいいと思うな。でもね、メンダコそのものは、静岡県の沼津の港の近くに深海水族館っていうのがあるんだけど、知ってる?
さとるくん:
沼津港深海水族館。静岡だから相当近いけど、行ったことはないです。
林先生:
もし機会があったら訪ねるといいです。ホームページに、「今、メンダコ展示中」とか書いてある時期があるから、そういうときに行くとメンダコに対面できると思いますよ。
さとるくん:
はい。
――さとるくん、面白い質問をくれてありがとうございました。
林先生:
ほんとに。楽しかった。
さとるくん:
ありがとうございました。
――さよなら~。
さとるくん:
さよなら~。
林先生:
さよなら~。
【放送】
2023/05/28 「子ども科学電話相談」