11時台を聴く
21/03/07まで

石井アナ:石井かおるアナウンサー
大日向先生:大日向雅美先生(恵泉女学園大学学長)
かなさん:質問者


石井アナ: お名前を教えてください。
かなさん: かなです。
石井アナ: どんなことが聞きたいですか?
かなさん: なぜ人は大きなグループを作って、そのグループに入っていない人をいじめるんですか?
石井アナ: これは大日向先生に聞いてみましょうね。お願いします。
大日向先生: かなさん、こんにちは。
かなさん: こんにちは。
大日向先生: かなさんのご質問って人間心理の本質に関わる問題でね、そこからいろんな問題が出てくるんです。学校でのお友達の関係とか、大きくなってからの職場の関係、さらには政治だとか国際問題とか、人に関わる社会問題の闇を突くような、鋭いご質問だなと思ったのね。
どうしてかなさん、こういうことを思ったのかな? 私もときどきこういう場面を目撃したりするけど、かなさんも目撃したり、あるいは経験したりってこともあるのかしらね。
かなさん: はい。
大日向先生: そうね。難しい問題だけど、一緒に考えてくれますか?
かなさん: はい。
大日向先生: 途中で分かんないことあったら、いつでも聞いてね。
かなさん: はい。
大日向先生: 生き物って、集団に属しているものが多いわね。動物とか鳥とか魚とか、群れをなしてるじゃない? 総じて小さくて弱い動物が多いかな。人間も同じだと思うの。一人で生きていくことが難しかったり、生活していくうえでグループがあると便利だということで、群れをなすことがあるんだけどね。

さあ、ここから一緒に考えましょうね。例えば私たち、どういうふうに集団を選ぶのかなっていうことなんだけど、かなさんがもしお友達を選ぶとき、どういう基準で選ぶ?
かなさん: 自分の相談とか聞いてくれたり、話を聞いてくれる人。
大日向先生: うん、そうね。大事なことよね。聞いてくれる人って、かなさんの気持ちを分かってくれる人よね。ということは、1番目、とっても大事なことをかなさん、答えてくださったかなと思うの。私が困ったりなんかしたときに話を聞いてもらえる。そして「大丈夫だよ。合ってるよ。あなた間違ってないよ」って言ってもらうこと、多いかな。
かなさん: はい。
大日向先生: そうするとね、そういうお友達って、かなさんに似てる人を選んでるってこと、ないかしら?
かなさん: ああ……、そうかもしれない。
大日向先生: 考え方とか趣味、好きなアイドルとか、行動パターンが同じような人を選ぶの。そうすると、似ている人たちだからなにか相談しても否定しないでしょ? 「分かる、分かる」って言ってくれる。「あなたの考え、正しいよ」って言ってくれる。居心地がいいわね。だからグループを選ぶときの1番目のポイントは、似たものを選ぶ、ということなの。

2つ目は、大きいグループを選びがち。これは、かなさんのご質問にもありましたね。なぜかっていうと、入っているグループ、所属している集団が大きくなると、力を持つのよ。人数が多くなるから。クラスでもそんなこと、ない?
かなさん: はい、あります。
大日向先生: あるわよね。グループが大きいと、いろんなことを決定できるわけ。自分たちに都合のよいほうに決定できるの。「数の論理」っていうことばがあるんだけど、「派閥」って、聞いたこと、おありになりますか?
かなさん: ないです。
大日向先生: 例えば政治とか会社などで、派閥といってグループが大きくなればなるほど、そのグループが力を持ってくるの。だからどうしても、「大きい集団を選んだほうが得かな」ってなっちゃうの。これ、かなさんのご質問にあるわね。自分が、有利になる。守ってもらえる。

今まで2つ、お話ししたわね。似た者同士が集まる。そして大きな集団になって、数としての力を持っていく。
ここから先なのよ。ここから先ね、困ったことが出てきちゃうの。

いつもいつも一緒にいる人が、いつも似た人たち――。そうすると、異なる意見とか違う価値観を持ったり違う行動をする人が、見えなくなっちゃうの。そして、「自分たちが正しい。優れている」という、間違った優越感を持ってしまうこと、ありがちなのね。
そうすると、どうすると思う? 違った意見を持ったり少数の人たちに対して、大きな集団の人、なにするかな?
かなさん: 悪口言ったり……。
大日向先生: そうね、いじめよね。
いじめの前にね、「同調圧力をかける」って、心理学のことばで難しいけど、「私たちと同じになんなさいよ」って圧迫するの。そういう場面、見たことない?
かなさん: ああ……、たぶんあると思う。
大日向先生: 「どうしてあなた、私たちと違うの? どうしてそんなことするの? 私たちのほうに入ればいいのよ」っていう同調圧力をかけたり、それでこちらに来てくれないと、今、かなさんがおっしゃったみたいに、いやがらせしたり悪口言ったり、排斥、差別、いじめをするわけ。
だけどね、そういうことする人たちって、実は弱いの。
かなさん: ええっ?!
大日向先生: びっくりよね。
かなさん: はい。
大日向先生: それはね、今、自分たちが得ている権利だとかを守ることに必死になっちゃって、安心感を脅かされたくないと思っているのかもしれないのよ。あるいは、少数の人がいじめられたりするのを見ると怖いじゃない? 「あっち側に行きたくない」と思って本当はよくないと思っていても、なかなか数の大きいところから逃げ出せなくなっちゃうのね。

ここまでお話してくると、どうかしら。大きなグループにいてなにか力を持ってる人って、強そうだけど本当は……、どう思う?
かなさん: 本当は……、弱い?
大日向先生: そう。弱いの。不安におののいているの。
だからね、こういうこと、よく言うの。戦争とか犯罪とか残虐な行為って、本当は弱い人が、間違った権力に従うという服従から発生しちゃうんだ、って。「NO(それは違う)」が、言えない。自分で考えること、ストップしちゃうわけ。だってみんな周りも同じでしょ。それで力を持っていると、「自分がおかしい」ということを認識できなくなっちゃって、ラクチンしたくなっちゃうんだって。
かなさん: ふううん……。
大日向先生: こういうのって、やっぱり改めたいよね。いじめられてる人がいつまでもいじめにあったり、少数なままにとどまるなんて、いやよね。なんとかしたいよね。
かなさん: はい。
大日向先生: どうしたらいいだろう……。
こうしたことがいけないっていう動きは、随分前から世界的に起きてるの。例えばマイノリティー運動、少数派運動というのがあって、アメリカで1960年代に起きたんだけど、黒人の人を差別したり、女性差別もあったのよ。黒人差別いけないとか女性差別をやめようという、少数派の権利と人権を守ろうという運動が、60年代にワーッと起きたの。
今は性的少数派、LGBTの人たちの権利を守ろうということも起きているの。難しいことよ。簡単にできることではないんだけど、数の論理だけで世の中が動くなんて、やっぱり許せないじゃない?

かなさんは正義感があるから、もしかしたらつらい経験をなさったから、こういう質問をしてくださった。だったら、少数派の人も声をあげることのできる社会を作っていこう。そしてその声に耳を傾けなかったら、いつまでも数の論理で弱い人に集団圧力をかけるような社会を放置しちゃう。それはいけないなあ、ってね、かなさんのご質問は、人間の行動とか社会の問題の本質を突いて、闇を突く、すごい大事な問題だって、最初にお話ししましたね。

どうでしょう。もしかして自分の周りに起きていることだけど、目を開くと、世界を変えられるような、そこまでつなげていけるような、そんな勇気も私たち一人ひとり、持つことが大事だと考えられるような質問をしてくださったなと思ってお答えしたんだけど、分かっていただけたかしらねえ。
かなさん: はい。
石井アナ: どんなふうに思いましたか?
かなさん: 誰かがいじめられているところとかを見たら、たとえ友達じゃなくても助けようと思いました。
大日向先生: すごい! それが本当の人間の知性だし、力だよね。
石井アナ: みんながそうしてるから、多くの人がそういう行動をとってるからっていうことではなく、本当にそうすべきなのかなとか、自分はどうしたらいいのかなっていうことを、一生懸命考えてみてくださいね。
かなさん: はい。
石井アナ: きょうはどうもありがとうございました。さよなら~。
かなさん: ありがとうございました。さよなら~。

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