10時台を聴く
21/06/06まで

さとうゆうとくん(中学3年生・千葉県)からの質問に、「心と体」の篠原菊紀先生が答えます。(司会・石井かおるアナウンサー)

【出演者】
篠原先生:篠原菊紀先生(公立諏訪東京理科大学 教授)
ゆうとくん:質問者


――お名前を教えてください。

ゆうとくん: ゆうとです。

――どんなことを聞きたいですか?

ゆうとくん: 筋トレを最近始めたんですけど、筋トレをしていると背が伸びなくなってしまうということをよく耳にするので、それが本当なのか知りたくて電話しました。

――ゆうとくんは何かスポーツやってるんですか?

ゆうとくん: 卓球やってるんですけど、筋トレを始めた理由はまた別で、クラスで下のほうになってしまってちょっとヤバイなと思って始めました。

――では篠原先生に聞いてみましょう。どうなんでしょう。

篠原先生: ゆうとくん、こんにちは。
ゆうとくん: こんにちは。
篠原先生: まず、結論から言うね。筋トレをやると背が伸びなくなるっていう証拠はないと思います。
だいたい体操選手とかボディビルダーとか筋肉のすごい人って、わりと小さいじゃない? だから筋肉が骨かなんか引っ張って伸びなくなっちゃうのかなとか、おじさんも昔は、素朴に思っていました。ゆうとくん、「ゴールデンエイジ」っていうことば、聞いたことある?
ゆうとくん: ないです。
篠原先生: えっと、ゆうとくんは、もう声変わりしてるよね。
ゆうとくん: し始めてます。
篠原先生: そうだよね。だからもうあれだけど、スポーツのトレーニングをするにあたって、11歳~13歳ぐらいまでは、巧緻性とか調整性とかバランスとかいろんなことをたくさんやったほうがいいと言われるんです。筋トレはもうちょっとあとでいいという言い方をするから、早くから筋トレやるのはよくないみたいなイメージができやすくて、だから筋トレすると背が伸びないとかいうようなことを、僕もなんとなく信じてたんです。

だけどそういうのを調べている研究があって、それを見たら、ちょうどゆうとくんたち、ヤングアダルトっていうか思春期の時期にあたるんですけど、その人たちが筋トレをした場合としない場合で背の高さとか成長に影響があるかどうか、いろんな研究を全部まとめてもう1度評価し直すという報告がありました。それによると、「成長を阻害する・身長の伸びを止めるというような効果は認められない」と結論づけられていました。だから少なくとも全体的に見ると、筋トレしたからといって背が伸びなくなるということは、おそらくない。
ゆうとくん: おー、そうなんですか。
篠原先生: 普通に考えると、身長とか背の伸び方を決めているのは、「骨端軟骨」って、分かる?
ゆうとくん: 分からないです。
篠原先生: 背が伸びるって、結局骨が伸びるってことでしょ?
ゆうとくん: はい。
篠原先生: 骨の端っこには骨端軟骨があって、そこで骨を増殖させて伸びていくのが骨の成長なんです。骨端軟骨の「成長線」っていうんですけど、それがなくなってしまうと成長が止まるのね。だから例えば筋トレやってそこに圧力がかかったり、もしかしてものすごく負荷をかけすぎると成長が遅くなることがないとは言えないけど、逆に例えば筋トレやると血流がよくなったりしますよね。それからそもそも、体の細胞を成長させる成長ホルモンが増してくるので、むしろ増殖していく、伸びる要素もあると考えてもいいんじゃないかとは思います。
たださっきも言ったように全体的に見るとすごい伸びているというわけでもないので、そういう意味で言うと、まだ証拠がない、というのが正解だろうと思います。

それでね、今、実はトレーニングってものすごく研究が進み始めていて、遺伝子レベルの研究がたくさん行われているんです。筋トレやるとどういう遺伝子がONになってたんぱく質を作り始めるのかとか、何がOFFになって何が伸びなくなっているのかとか、高地トレーニングだとどんな遺伝子がONになるか、有酸素だとどうか、筋トレだとどうかとか、こと細かに調べられる時代が来ています。
ゆうとくん、「HIIT」って、分かる?
ゆうとくん: 分からないです。
篠原先生: 「高強度インターバルトレーニング」といって、ものすごく心拍を追い込んでやるとそれが結構有効だということが知られているんですけど、それだと何がスイッチONになるのかとか調べられてきていて、ONになったりOFFになったりする遺伝子が、ものすごくいっぱいあるんです。今後の研究によっては、成長のONにつながるものやOFFにつながるものも出てくると思うので、それがどんな条件だとONになりどんな条件だとOFFになるのか、今後分かってくるだろうと思います。
ゆうとくん: はい。
篠原先生: ゆうとくんは今、中3だったね。つい2~3日前に報告された研究があって、ぜひ筋トレとか運動を続けてくださいということでお話しするんですけど、体力と勉強の学力って関係あると思いますか?
ゆうとくん: 関係あるとは思います。
篠原先生: どういうふうに関係あると思いますか?
ゆうとくん: 体力がないと勉強がはかどらなくなっちゃうので。
篠原先生: あ~、すごいね。いい時代に生まれたねえ。おじさんは、「運動なんかすると脳が筋肉になってアタマ悪くなる」ぐらいに言われた時代を生きてきたんだけど(笑)。

――はははは。

篠原先生: 皆さん、学力テストとか体力テストってやってますよね。あれを調べると、学力テストと体力テストには相関関係があるんです。体力テストの成績がよくなると学力テストの成績がよくなるっていう関係があったりするんだけど、個別に見るといろいろ違ったりするもんだから一体何が関係するのか分かんなかったんだけど、今回の報告だと、どうも運動能力や体力が向上すると……、えっと、ゆうとくん、得意な科目って何?
ゆうとくん: 理科と数学ですね。
篠原先生: そうすると、理科と数学の成績にはあまり影響しないらしいね。苦手な科目は?
ゆうとくん: 英語です。
篠原先生: じゃあ、英語の能力が上がる可能性がある、っていう話なの。つまり、どうも自分が苦手な科目の成績が、体力が上がると上がるらしい。だから、体力テストの成績がちょっとよくなかったから筋トレ始めたっていうのは、それはそれでありなんだけど、それがもしかすると英語の力を伸ばすのに役立つかもしれないから、頑張ってみてください。
ゆうとくん: はい、頑張ります。
篠原先生: それから、この辺に興味があるんだったら、まさにこの辺の遺伝子解析がわりと簡単にでき始めているから、そういう大学や研究を目指して自分で調べるのもいいと思います。
ゆうとくん: 分かりました。安心して筋トレやります。
篠原先生: そうですね。でも、筋肉を大きくするっていうのは、筋肉に損傷を与えてもう一度回復するときに太くなるっていうのは知ってるよね?
ゆうとくん: はい、分かります。
篠原先生: っていうことだから、やり過ぎの損傷はただの肉離れになっちゃったり、むしろ成長を阻害することにもなるので、そこは十分気をつけてもらえればいいと思います。
ゆうとくん: 分かりました。

――自分で筋トレするときにはそのやり方で大丈夫かどうか、学校の先生ですとか専門家の方にちょっと見てもらったほうがいいかもしれませんね。

篠原先生: でも、やってるのは「自重筋トレ」、自分の体重を使っている程度だよね?
ゆうとくん: 腕立てとか腹筋とか空気いすとかスクワットとかです。
篠原先生: そういうのを自重筋トレといって、それだとそんなにひどいことは起きないから、気にしないで大丈夫だと思います。

――今、どのくらいのペースでやってるんですか?

ゆうとくん: 1日、腕立てと腹筋50回ずつ、空気いす1分、スクワット30回でやってます。
篠原先生: それ毎日やってんの?
ゆうとくん: はい。
篠原先生: 週3ぐらいにしなよ。休んだほうがいいよ。トレーニングの本を見れば出てるけど、毎日やればいいってもんでもないんです。寝ている間、休息している間に筋肉は復活して強くなっていくので、たんぱく質をとるとか休むとか寝ることが特に重要。筋トレしている最中に筋力が強くなっているわけじゃないですから。
ゆうとくん: 分かりました。
篠原先生: 腕立て伏せ50回ぐらいやってるって言ってたけど、それは10回ぐらいまですごい楽にできちゃってる?
ゆうとくん: 結構1回1回深く下げるので、1回1回がきついです。
篠原先生: ああ、いいね。トレーニングの本に出ていると思うけど、10本やるうちの7本目、8本目ぐらいできつくなるぐらいがいい。今言ってたみたいに時間かけてゆっくりやると、回数できないじゃん?
ゆうとくん: ああ……。
篠原先生: 筋トレやるとたくさんやりたくなるじゃない? 100やりましたとか、200やりましたとか。持久性トレーニングとしてはいいけれど、筋トレとしてはそんなにきかなくなっちゃう。だからどちらかっていうと1本1本の負荷が強くなるように。しかも自重でやるっていうとゆっくりやるしかないからさ。それは腕立てだけじゃなくて腹筋の場合もそうです。腹筋はどういうふうにやってるの?
ゆうとくん: 普通に、そのままやってます。
篠原先生: それもだから時間をかけてゆっくりやって、ひねりなんかも入れて負荷をかけてやってみればいいと思います。

――ゆうとくん、やってみてください。ありがとうございました。また質問してくださいね。さよなら~。

ゆうとくん: ありがとうございました。さよなら~。


【放送】
2021/04/11  子ども科学電話相談 「心と体」 篠原菊紀先生(公立諏訪東京理科大学 教授)

10時台を聴く
21/06/06まで